テレビのCMではないけれど、腹囲測定でついおなかを引っ込めてしまう40歳前後&オーバーの世代にとって、いまいちばんコワイ言葉は「メタボ」かもしれない。そんな、メタボリックシンドロームに戦々恐々としている人々にとってココロ惹かれる体験プログラムが、このほど開かれた。題して「男磨き・女磨き メタボ対策ツアー」。期間は12月5、6日の1泊2日で、ところは福島県二本松市の岳温泉。政府の"地方の元気再生事業"認定を受けた「岳温泉日本一の健康保養温泉地創造事業」の一環として、JTBヘルスツーリズム研究所と岳温泉旅館協同組合(鈴木安一理事長)が共同研究のために取り組んだモニターツアーである。今回は、同ツアーに参加し、メタボ対策ツアーの様子をレポートする。

ウォーキングにヘルシー料理に温泉三昧

最初のオリエンテーションを前にあいさつに立った、岳温泉観光協会会長の佐藤俊夫さん。岳温泉の活性化へ向けた想いを熱く語った

メタボ改善がテーマのツアーゆえ、どんな体型の人々が集うのだろうと半ばブルブル想像していたが、(ごく一部を除けば)意外にも"けっこう普通の"シェイプをした参加者ばかり。考えてみれば、そうか。メタボは特殊なものじゃない。オジサン前後世代の誰もが向き合う問題なのである。ちなみにモニター参加者は30代から50代までの13人。ご夫婦で参加された方が1組いらしたが、女性はその1人のみで、あとの12人はすべて男性だった。

参加者は5日午前11時、岳温泉の櫟平ホテルに集合。佐藤俊夫・岳温泉観光協会会長らのあいさつの後、さっそくメタボ改善プログラムが始まる。まずは体重・体脂肪の測定を行い、メタボやダイエットの基礎知識を学んだ。

まずは体重と体脂肪測定。ひとりひとり測り終えるたび「エッ! 」「こんなに……」と、苦笑とともにオドロキやため息が聞こえてきた

今回は、1日目の昼食と夕食、2日目の朝食と昼食がプログラムに含まれている。メタボ改善ということは、当然、カロリーコントロールをした食事となる。郡山女子大学の三瓶タミ子准教授が考えた、1日3食換算で計1,800kcal相当の健康メニューをいただいていく。 ツアー最初の食事となる昼食の席に着いた参加者たちは、そばが盛られた小さな器を目撃した。そう、最初の昼食は386kcalのニシンそばと、44kcalのミニサラダのみ。しかし棒ニシンは会津名産だし、そば粉も野菜もすべて地物ばかり。いわゆる地産地消だ。ゆっくりと噛み締めて食べると、これで案外おなかが満たされた。普段もっと食べているのはよく噛んでいないからだろうか。

最初の昼食はニシンそば。量はパッと見あまり多くないように感じたけれど、ゆっくりとよく噛んで食べたらけっこうおなかが満たされた。味もグー

昼食後、参加者たちは心拍計を身につけ、屋外へ。次なるプログラムは「パワーウォーキング」である。これは健康を重視しつつカロリーや体脂肪を効果的に消費させる歩き方で、モスクワ五輪50km競歩金メダリストで心臓移植手術を受けた経験もあるハートヴィッヒ・ガウダー氏が提唱するものだ。インストラクター、影山政敏さんの指導で、まずは歩き方を身につける。

問題はポツポツと落ちてきた雨。歩き始める頃にはかなり強くなってきた。所は標高600m近い高原。雨は冷たい。おまけに風も強い。体温と体力がどんどんと奪われる中、最初に1km弱のテスティング歩行をした後、5.5kmのコースに挑んだ。

雨はさらに強まり、風も激しくなる悪環境へ突入。あるいは牧草地の脇を、あるいは森の中を抜けていくが、この天候では影山さんの「晴れていれば向こうに安達太良山がきれいに見えるんですけどね」の言葉もむなしく響く。天気ばかりはどうしようもないけれど、なんだか少々苦行のようでもあった。

心拍計をつけ屋外へ出て、ウォーキングの前に準備体操。この時点で「疲れた」とのたまうオジサマも数名いらしたが……

テストウォーキングを始めたころから雨は本降りに。このあと風光明媚な(はずの)ウォーキングコースに出たものの、もちろん景色は何も見えず、ただひたすら寒くてびしょ濡れ

1時間強の雨中行軍を終え、櫟平ホテルに戻った参加者たち。雨具を着ていたとはいえ全員びしょびしょ、寒さでガクガクである。しかしこのメタボツアー、温泉地で行われているということは、カラダを温めるアレが待っている! そう、全身冷え切った参加者たちは、みなあったかい温泉に迎えられた。岳温泉は全国でも珍しい酸性泉で、その泉質は草津に近く、神経痛や関節痛、慢性皮膚病、切り傷、火傷、そして冷え性などに効くという。また美肌効果もあるので、女性にとってもありがたい湯といえそう。シュワシュワする湯で、こごえたカラダもすぐさまあったまった。

湯から上がり、温泉講座と洗顔法講座、リラクゼーション学習があって、初日のプログラムは終了。宿泊する光雲閣にチェックインし、夕食までの間またゆったりと湯につかった。

さて、夕食。昼のニシンそばを思い浮かべ、夜もきっと少ないのだろうと参加者一同覚悟していたが、これが意外や意外。料理長が工夫を重ね、腕を振るった料理は、見た目も品数もかなり豪華。もちろんカロリーはセーブしてある。いわゆるよくある温泉料理に引けをとらないどころか、むしろありきたりの温泉料理よりもヘルシーでおいしく食べられた。しかもかなりの満腹に。しっかり二本松の地酒もいただき……おっとこれではメタボ改善もどこへやら、とまあソレはソレ(笑)。

全13品の夕食は一見ローカロリー食とは思えないような面々。ちゃんと刺身も天ぷらもある(天ぷらはさすがに野菜)。鍋の牛は地元の酵母牛。ほかにも茶碗蒸しや、福島名産凍み豆腐入りお吸い物、さらにマツタケご飯まで登場。ただし、ローカロリーといっても温泉宿の夕食。主催者側としては700~800kcal程度の食事を希望したそうだが、今回はモニターツアーということもあって多少甘く、料理長の判断により1,300kcal程度の食事になった。それでも料理長いわく「通常の宴の夕食より1,000kcalくらいは少ない」らしい

二本松自慢の地酒でまず乾杯、もちろんビールでも乾杯。このときはきっと誰もがメタボ改善ツアー中であることを忘れていたにちがいない