2005年からスタートした世界選手権で日本初開催

FIA世界ツーリングカー選手権(WTCC)は、欧州ツーリングカー選手権(ETCC)を発展させ、FIAが2005年から開催している世界選手権シリーズ。F1、WRCと並ぶ3大世界選手権のひとつだ。F1日本GPは20年以上の開催の歴史があり、WRCのラリージャパンも定着しつつあるところ。残る世界選手権のWTCCだけが日本未開催だったが、今年遂に実現。またWTCC自体も、今年はメキシコと日本が加わり、従来から行われているブラジルとマカオと合わせ、ヨーロッパ圏外が増えて寄り世界戦らしくなったというわけだ。

レースのルール的な特徴は、1大会に2レースが開催されること。今回の日本ラウンド「Race of JAPAN」は、第21および第22戦が開催された形だ。ルールとして、第1レースと第2レースは得点上は独立しているが、レース結果は反映される。第1レースの結果が第2レースのスターティンググリッドとなるのだが、特徴的なのは1~8位がリバースグリッドになること。要するに、第1レース1位の選手は第2レースでは8番手グリッドに、2位の選手は7番手グリッドに、そして8位フィニッシュの選手はポールからスタートできるというわけだ。今年、フォーミュラ・ニッポンの一部のレースでも採用された2レース制&リバースグリッド方式だが、こちらが先である。得点は、第1・第2レースともF1と同じ優勝10点で、2位8点、3位6点、4位5点以下は1点ずつ刻みとなり、8位1点という具合だ。ポールポジション、ファステストラップなどでの加点はない。ドライバーズランキングは、全ドライバーが対象のチャンピオンシップと、インディペンント(プライベート)チームのドライバーのみが対象の「ヨコハマ・インディペンデンツ・トロフィー」の2種類がある。さらに、SUPER GT(以下、S GT)のウェイトハンデと同様の、サクセスバラスト・システムも特徴。獲得ドライバーズポイント1点に対して1kgを積み、さらに各ラウンド(2レース)の合計ポイント数に従って、次の大会ではさらにバラストを追加搭載する。最大搭載量は70kgだ。

ついに格闘ツーリングカーレースのWTCCが日本上陸

ファンサービスなども盛況。セアトブース

もちろん、華やかさも。日本のレースとは雰囲気がちょっと異なる

BMW、シボレー、セアト、ホンダ、ラーダの5マニファクチャラーズ

ベース車両に関してだが、参戦可能なのは、FIAが定めた「SUPER 2000」規格のマシン。年間2500台以上を生産した車種で、FIAの認定を受けていること、4座席を有することが条件だ。エンジンは2000cc未満で、ガソリンエンジンの場合は自然吸気のみで、4~6気筒まで。気筒数に応じてエンジン回転数の上限が設定される。一方、ディーゼルエンジンについては4気筒のみだが、1器のターボチャージャー(およびインタークーラー)を装備可能。このディーゼルターボの「セアト レオン TDI」が、今年は猛威を振るっている形だ。前輪駆動と後輪駆動のどちらでもOKで、駆動輪やエンジン形式などによって細かく最低重量が定められ、極力イコールコンディションになるようになっている。

参加マニファクチャラーズは、BMW、シボレー、セアト、ホンダ、そして途中参加のラーダ(ロシア)となっている(ただし、実際にはホンダもラーダと同じ第3戦から参加)。日本ラウンド時点での29台参加の車種の内訳は、「BMW 320si」が13台、「BMW 320i」が1台、「シボレー ラセッティ」が4台、「セアト レオン TDI」が5台、「セアト レオン」が2台、「ホンダ アコード ユーロ R」が2台、「ラーダ 110 2.0」が2台となっている。チーム数では、12チームだ。なお、全チームを対象にしたランキングはなく、マニファクチャラーズランキングと、インディペンデントのみが対象の「ヨコハマ・チームズ・トロフィー」が設けられている。

ドツキ合いが当たり前のハコ車によるレース

レース内用に関しては、S GTやスーパー耐久シリーズ(S耐)と同様にハコ車によるレースなので、接触が多いのが特徴。接触というよりは、ドツキ合いといった方がよさそうで、そのファイトっぷりはアメリカで空前の人気を誇るNASCARに近い。国内のレースやF1などでは、競り合いでかすってしまった程度ならまだしも、故意にぶつけたりしたら即ペナルティーだが、WTCCは故意に当ててもある程度まではオフィシャルが見て見ぬふりという具合。さすがにあまり酷いとペナルティーで次のレースの予選順位降格などがあるが、そうした部分が走る格闘技などといわれる理由だったりする。

また、昔からF1を熱心に見ている人には懐かしい、80~90年代前半ぐらいまでの元F1ドライバーが参戦しているのもポイント。今年は、ガブリエル・タルクィーニ(伊)、ニコラ・ラリーニ(伊)、アレッサンドロ・ザナルディ(伊)などだ。そのほかは通好みのハコ乗りスペシャリストたちが名を連ねている。

チャンピオンシップは、ワークスのSEAT Sport所属で、「セアト レオン TDI」に乗るイヴァン・ミューラー(仏)が95点でトップ。2位はミューラーのチームメイトのタルクィーニで86点。3位は「シボレー」ワークス所属のロブ・ハフ(英)で、64点だ。ヨコハマ・インディペンデンツ・トロフィーは、「Proteam Motorsport」から「BMW 320si」で参戦するセルジオ・ヘルナンデスが、148点で頭ひとつ抜けている感だ。→次ページへ

オープンホイール系ではあり得ない超接近戦バトルが展開

どついている瞬間。ステファノ・ディアステの26号車がヨルグ・ミューラーの2号車をプッシュ

どついた証拠その2、トム・コロネルの20号車の塗装のはげたFバンパー。青木も彼に押されたという