第21回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された『ブタがいた教室』が25日、東京・渋谷シアターコクーンで初上映され、同会場で舞台挨拶が行われた。主演の妻夫木聡らが出席し、トータス松本がシークレットライブを行ったり、松山ケンイチが観客になりすまして客席から質問するなど、サプライズづくしなイベントとなった。

『ブタがいた教室』の舞台挨拶に登場した妻夫木聡

『ブタがいた教室』は、1990年から3年間、大阪の豊能町立東能勢小学校の新任教師だった原案者の黒田恭史氏が担当クラスでブタを飼い、飼育を通して命を考える900日の実践教育を行った『豚のPちゃんと32人の小学校』(ミネルヴァ書房刊)が原案。新任教師の星(妻夫木)が、生徒たちと一緒に、卒業までの1年間「食べる約束」で子ブタの飼育を始めるが、卒業式に近づくにつれ、星と生徒たちは豚を食べるのか食べないかの選択に迫られていく。

妻夫木は「ディベートのシーンが一番大事なシーンでした。子供たちが気落ちして僕が何か言わなければいけない気持ちになったり、教師と生徒という関係性が映し出されるんじゃないかと思いましたね」と語り、「豚を食べるのか食べないのかというディベートを一回忘れ、食べるっていうことは何か? 生きるっていうことは何か? 命って何だろう? そういう僕自身が考えている教育というものを10分ぐらい子供たちに投げかけると、子供たちの心の言葉が出てきたりするんです。本気でぶつかれば子供たちもぶつかってくる。本当に貴重な体験でした」と初の教師役に充足感を得ているようだった。

写真左から、トータス松本、妻夫木、前田哲監督、黒田恭史氏

舞台挨拶では、観客から質問を受け付けるコーナーが設けられ、前田監督が「そこの手を上げている方」と男性を指名。男性が「松山です」と小声で答えた瞬間に「マツケンか?」と問いかけた妻夫木の言葉に、観客は騒然。本物の松山ケンイチが客席から「動物と子供には勝てないって言うじゃないですか? そういうことを子供たちに感じてたんですか?」と妻夫木に厳しい質問を問い掛けると「後輩に駄目出しされるとは思いませんでした(笑)」と苦笑い。

もし生徒だったら「食べる? 食べない?」どちらにする? という観客の質問に「『頂きます』という言葉がある通り、命を頂くという有り難味を忘れないためにも食べるということが人間の責任。食べる側になると思いますよ」と答えた妻夫木

周囲の一般客から気づかれることもなく、平然と着席していた松山。鋭い質問を浴びせ、妻夫木もタジタジだった

また、同作で主題歌『花のように 星のように』を歌ったトータス松本がサプライズで、シークレットライブを行った。「僕の十八番が『バンザイ(~好きでよかった~)』ですので、それに代わる曲が出来たと思い、これから歌わせてもらいます」と妻夫木は感動しきりだった。

ギター片手に主題歌『花のように 星のように』を熱唱したトータス松本。「妻夫木さん演じる星先生の気持ちを歌の中に上手く入れられたらな~と思いながら書きました」

「映画を観ていて、妻夫木さんは良き役者としてではなく良き教師として子供たちの前に立たれたと思います。前田監督も見事に演出されました」と原案者の黒田恭史氏

『ブタがいた教室』は、11月1日より全国ロードショー。