日興アセットマネジメントは7日、プレス向けセミナー「すべての人に『資産運用』は必要?」をミッドタウン・タワー内の日興AMファンドアカデミーにて開催した。日興AMファンドアカデミー学長の小島厚子氏が、「将来どれぐらいのお金が必要なのか」「どうして資産形成が大切なのか」についてわかりやすく解説した。

日興AMファンドアカデミーは、より投資信託を知ってもらうことを目的に、2008年2月よりスタートした。

日興AMファンドアカデミー学長の小島厚子氏

小島氏は「7日の東京株式市場では4年10カ月ぶりに日経平均株価が1万円を切りました。金融不安が高まる中、リスクをとってまで資産運用は必要か、と考える方も多いと思います。これから資産運用を考える人はなおさらでしょう。今回のセミナーがこうしたことを考えるきっかけになれば」と挨拶にかえた。

資産運用は老後の生活や、インフレでお金の価値が目減りすることを不安視して、始める人が多いと小島氏は説明。「今いくらあるから、いくら増やさないとならないという明確な目標がないことが多い」とした上で、定年退職後どれぐらいのお金が必要になるのかシミュレーションした。

定年退職後、余生を過ごすには5,000万円は必要!?

シミュレーションによると、夫婦2人で定年退職後の余生を過ごす (年金が当てにならないと考えた場合)と仮定した際、60歳時点での元本が2,500万円で、そこから毎月生活費として35万円を切り崩すと、6年しかお金が持たないという計算になる。「日本人男性の平均余命を考え、定年退職後の人生が20~30年続くとすれば、これでは全然足りないということが分かります。また、毎月の生活費が25万円としても8.3年しか持ちません」(小島氏)。

一般的に定年退職後の余生を過ごすには、2人夫婦世帯で5,000万円程度必要と言われている。「25万円だと16.7年持つ計算となります。男性の平均余命ギリギリか少し少ないぐらい。これが20万円だと20年ぐらいお金が持つという計算になる」(小島氏)。

なお、これは"たんす貯金"をした場合であり、運用をすると使えるお金が少しだけ増えることになる。たとえば5,000万円を5%の利回りで運用すると、毎月30万円使って23.8年は生活できる。逆に、2,000万円を20年間かけて使うと毎月10万円しか使えないが、5,000万円を30年間で切り崩すとなれば、毎月13.9万円引き出せる。さらに5%で運用すると毎月26万円も生活費に充てることができる。

年利1%で運用しながら切り崩すシミュレーション

定年退職までの年数を考えることも、目標達成の近道となる。たとえば、60歳までにあと12年だと仮定する。手持ちのお金は500万円。これに1%の利回りで運用すると12年で563万円、5%であれば898万円となる。ただ、先ほど話したように2人夫婦世帯で必要になるのは5,000万円、これでは目標達成するには程遠い。それでは、1,500万円ではどうかと考えると、12年間で5%運用すると、2,694万円まで大きくすることができる。

元本・期間・利回り別の資産増加額のシミュレーション

「食べる分さえあればいい」はくせもの!?

それでは今手元に2,000万円あると仮定し、3,000万円をこれから12年間かけて作ろうとすると、毎月20万円積み立てる必要がある。それだと、生活に影響が出るかもしれないので、2,000万円を積み立てるとなると約14万円で済む。一方、運用しながらの積み立てであれば、利回り5%だと毎月の積立額は10万円程度となり、負担が軽くなる。「お金を作る。取り崩すことはもちろんのこと、運用の利回り・期間がとても大事なことが分かります」(小島氏)。さらに、積立期間を30年、2,000万円を5%で運用すると、毎月2万4,000円積み立てればよいことになる。「今あるお金を増やすための努力と、将来それでも足りない部分を今から積み立てる。この2つの側面から資産運用を考えると将来の目標達成ができるかもしれません。また、お金があって資産運用が必要ではないと考える人もいるかもしれませんが、少子高齢化が進み、景気も低迷する中、将来この国の年金制度があてになるのかどうか、ということを頭の隅においておくと、お金を作る自助努力というものが必要であることが分かると思います」(小島氏)。また食べていけるだけでいいという考え方も"くせもの"と小島氏は指摘する。「たとえば1日1食500円で計算した場合、それが25年続くと1368万7,500円もかかる。それが2人とすれば約2,800万円にもなります」

3つのリスクに気をつけて

なお、預貯金よりも有利な結果を求めようとする場合、3つのリスクに気をつける必要があるという。それが(1)為替変動リスク(2) 信用リスク(3) 価格変動リスク-だ。為替変動リスクについては「たとえば今日本の国債。10年もので1.5%ぐらいの金利ですが、アメリカ・ヨーロッパの債券であれば4%前後がたくさんあります。またブラジルやロシアなどの新興国であれば、もう少し高い金利が期待できるかもしれません。こうした場合、円から外貨へ変更しなければならないのですが、そうすると必ず為替変動のリスクが関わってきます」(小島氏)。

信用リスクは、投資先の信用力が低い場合、投資したお金が返ってこないリスクがあるということを指している。また価格変動リスクは「定期預金であれば元本+利息ですが、投資しているときは投資対象が上がったり下がったりすることがあるということです。預貯金以上の利回りを求めるとこのようなリスクがかかってきます」(小島氏)。

そうしたリスクを踏まえた上で、どの金融商品を買うのがいいのか。たとえば、定期預金で1年間、メガバンクに預けた場合利率は大体0.35%、それがネット銀行になると、少し金利が上乗せされる。「ですが、前述のとおり1年間の金利運用で、1%ぐらいでは足りないということがお分かりになったはずです」(小島氏)。最近人気の個人向け国債も「固定と変動で条件が異なるものの、ネット銀行程度の金利」とのこと。

一方、海外に投資するとした際、たとえば10%の利回りがつくとしても、為替が大きく変動して資産が大きく目減りするというリスク(=為替リスク)が発生する危険もある。この場合、国の情勢などを勘案しながら運用する必要が出てくるだろう。最後に小島氏は「皆さんにとって、必要な金額に許容期間内に増やしてくれる商品が自分にとって必要な商品です。投資信託でなくてもよいですし、どれが最も納得できるのか、考えて選らんでみてください。また、あえてこれをひとつ、と集中して投資をするのではなく、いろいろな商品を組み合わせて目的を達成したほうがいいでしょう」と話した。