鉄道総研の敷地内には、実験用のレールが敷かれている。ひと昔前の地図を開くと、ぐるっと一周できるループ状のレールが敷かれていたことを確認できるが、現在はその約1/4しか残っていない。残っているレールの一部でハイ! トラムの往復試乗と急速充電シーンが体験できると聞き、早速乗り込む。

ただ今ハイ! トラム、充電中。車内の乗客は、「充電中」と知らされなければ誰も気付かなほど静か。停車、パンタ上げ、充電、パンタ下げ、発車とテンポよく作業が進む

起動すると、東京都交通局の都電8500形と同様にVVVFインバータ特有の起動音が床下から静かに響き出す。加減速の感触は、「一般の通勤電車と同じぐらい」と解説スタッフ。途中の停車時にはパンタグラフを上昇、1500V急速充電を車内から見学もした。パンタグラフが架線と接触する音も感じないぐらい静かに作業は行なわれ、車内のエネルギー表示モニタの電池量がぐんぐん上がっていくのを確認。「約15秒程度で、充電を終了させて、再び発進します」という解説スタッフの声とともに、ハイ! トラムは乗降仮設ホームまで戻った。およそ5~6分の体験だった。

ハイ! トラムは、バッテリー電流1000Aで60秒充電し、空調などを稼動しない場合、距離にして約8kmの走行が可能だという。駅での乗客乗降時に充電し、架線のないレールを走って、また次の駅で充電して……、というローカル線で活躍するハイ! トラムの姿が想像できる。早く実用化にこぎつけて、ローカル地方の鉄道で軽快にクールにクリーンに活躍してもらいたいものだ。

ドアの手前にドア?

さらに、興味深い研究テーマがもうひとつ。「車載式自動改札機」だ。その名のとおり、駅にある「ピッ」とやる自動改札機を、車内のドア付近に搭載して乗務員のいない出入り口でも自動清算を可能にさせるという優れもの。読み取り機だけが設置されているバスや一部の車両とは大きく異なる。"自動改札機"が車両のドアに付いているのだ。おわかりいただけるだろうか、この大きな違いを!! この導入により、人件費の削減や乗降時間の短縮が期待でき、こちらもローカル線の車両などでの活躍がイメージできる。残念ながら撮影の許可がおりず、無骨ながらも機敏に動く"ドア添え付け改札ゲート"をお見せすることができないのだが、どんな姿かは登場までのお楽しみということで許していただきたい。

写真がNGならイラストで! 足跡がついているのが車内。改札ゲートの先に車両のドアがあるのだ

ちなみにこちらも撮影不可であったが、イベントでは鉄道総合技術研究所の所員食堂や喫茶店なども開放されていて、"所食"ならではのリーズナブルな値段で、"研究者たちの日常食"を楽しむことができた。ちなみに、ドリンク付きハンバーグ定食は約600円!

さて、このようにちょっと難しい話題の多い鉄道総研の技術フォーラムだが、鉄道の未来と、すぐそこまで来ている画期的な技術の一端をのぞける意外と貴重なイベントだ。研究所員たちの圧倒されるほどの熱のこもった"生解説"も魅力的だった。来年の開催時には、足を運んでみてはいかがだろうか。

鉄道総研の玄関口に着くと、2両のリニア実験モデルが来場者を迎えてくれる。写真左の赤いラインの入った車両が総研のリニアモーターカー第一号実験車「ML100」、右の青いラインが入った車両は「山梨実験線車体(Mc3)」