ここで、富野監督ならではのユニークな発想が披露された。

「本当に目指すべき"システム工学"というものがあるとすれば、"循環工学"なんだよね。永久機関論なんていうのはナンセンスなのも承知です。その上で、"それをやってみせろよ"というところにいかなくちゃいけないというときに、政治・経済論も含めて循環させるというところにどういくか、というふうに考えていくべきだと思う。そのとき、単純に工学の問題では済まない部分もあるんだから、工学者がいつまでも、"私たちは宣伝がヘタですから"っていうような、こういう先生を野放しにしておくようなことではいけない(場内爆笑)。でも、この先生に関しては偉いって言わなくちゃいけないんだよ。だって、こういうことを言う人をそばに置いて笑ってられるんだもん。だから、そういうことから考えたら、先生は偉い!(場内笑)」

これを踏まえ、中須賀教授からは、今回の議論の締めとなる発言がなされた。

「これは、僕らだけじゃなくて、工学者一同、いや、世界の人たちみんなで受け止めていかなきゃいけない話だと。1つのキーワードとしては、"ローカルに見ないこと"だと思います。それをやることによってどういう影響を及ぼすか、ということを広範囲に広げて考えていくことが必要だと。それがおそらく、さっき(富野監督が)おっしゃった、いわゆる文科系的な議論にもつながっていく。政治のあり方とか社会のあり方、いろんなものにつながっていくだろうと思います」

一方、下山教授からの締めの発言。

「エネルギーにしてもCO2にしても、やっぱり、正しい考え方とか正しい知識が必要だと思うんですね。そういったことを我々は、ちゃんと発信していくと。先ほどから、発信とか表現力の話をしていますが、やっぱりこれは非常に重要な話だと思っていて、私は『アトム』世代なんですが、海外からもいろいろ優秀な人が来ています。その人は、『ガンダム』を観て日本に来たと。とても、優秀です。そういった意味で、日本からそういった文化なり考え方なりが発信できているというのは、非常にいいことだと思っています」

そしてこの後、さらに、突然の提案が……。

「科学とか技術をビジュアルあるいはいろんなメディアを通して発信できるというのは非常に重要です。で、ここで話をしたら"ノー"とは言われないかもしれませんが(笑)、富野監督と東大工学部でコラボレーションでですね、将来の地球はどうなるとか、それをいろんなメディアを駆使して発信していくようなコラボ・プロジェクトを作らせていただければ、我々の実力もつくし、いいんじゃないかなと思ってますが……」

意外な提案に、富野監督は以下のように締めた。

「本当に身に余るご提案で、びっくりしています。僕にそれに対応できる能力があるとは思えないけれども。でも、"こんな僕でもよろしければ"………っていうのは、これは外交辞令で言う謙遜語ではありません。お手伝いさせていただければ、うれしく思います」