この富野監督の発言を受けて、次に、東京大学工学部航空宇宙工学科の中須賀真一教授が発言した。以下は中須賀のコメント。

中須賀真一教授

「今おっしゃったのは非常に正しくて、さすがよく勉強されてるなあと思うんですけれども、やはり一番大変なのは、鉛で覆わなければいけない。つまり、放射線をいかに防御するか、というところだと思います。そのために結局、回転すべきところの重量が非常に重くなって、その重量がさっきおっしゃった1Gを作り出すために回転するのに耐えられなきゃいけないということ。もっと大変なのは、それだけの大量の物資を地球あるいは月から持って来なきゃいけない、というこの技術ですね」

「多分、スペースコロニーができるっていうは、宇宙に地上から物を持って行くことがもっともっと簡単にできるようになってからだと思います。ただ必ず将来、人間は宇宙に出て行く、ということは感じます。人間のもっている宇宙に出て行きたいという本能的な欲求がどっかにあるんですよ。ただ、それはフェーズの問題で、どの段階で何をやるべきかということを考えなきゃいけなくて、富野監督がおっしゃったように、今はおそらくスペースコロニーを作るというフェーズではない。まずは宇宙に非常に容易に行ける道を考えること。あるいは将来、人間が宇宙に行った時にどうなるかということの勉強のために小さな衛星を作ること。これは我田引水ですけどね(笑)」

「こういうのをやることによって、ある意味、人間が将来宇宙に行くためのシミュレーションをやってる段階じゃないかなと、そんな気がします。どのフェーズで何をやるかっていうことを考えていかなきゃいけない。これが大事なことだと思います」

さらに、もうおひとりの出席者であられる情報理工学系研究科長の下山勲教授からの発言へと続いた。以下は下山氏のコメント。

下山勲教授

「今日、スペースコロニーのお話から始まるということでですね、私は大学の仕事もそっちのけで、劇場版『ガンダム』3作品を観てきました(場内笑)。その中でスペースコロニーの表現があってですね、3,000メートルのエレベータで中心から外側に降りていくと。"いや、これ非常に理にかなった構造だよね"と思いました。で、今日、ここに来る時に3,000メートルで1G出すには、どのくらいの回転かなあと思ってざっくり計算したので間違ってるかもしれませんが、大体100秒に1回ぐらい回転するぐらいのスピードだから、ちょうど時計の秒針が回るぐらいの回転で1G。これはまあ可能かなあと思いました」

「私が思うに例えばですね、今の科学では物理的に不可能だと証明されている永久機関のようにスペースコロニーが不可能だという証明がなく、スペースコロニーが必要だという社会的な要請が出てくればですね、それはできてくるだろうと。それが必ずしも3,000メートルの半径じゃないかもしれないけれど、そういったスペースコロニーができてくるだろうと思っています。なんで監督が否定して、私が賛成しなくちゃいけないのかよく分からないんですが。普通、逆ですよね(場内笑)」