加速する"総額表示"への動き
このままでは旅行業界へ対する消費者の不信感を招き、旅行需要が減退しかねない――。燃油サーチャージの請求がなくならない中、旅行者にとってわかりやすく、納得がいく表示、または請求はできないものか……。事態を深刻に受け止めた日本旅行業協会(JATA)は、対策チームを立ち上げ検討を重ねた結果、燃油サーチャージを含めた旅行代金の総額表示導入を前提に、2008年5月、航空各社に対し、燃油サーチャージの本体運賃への一本化や、サーチャージ額の6カ月間固定などを盛り込んだ要望書を提出した(過去記事参照)。この要望書に関して、航空会社サイドは6カ月ごとの改定では、原油価格の急速な値上がりに対応できないとの見方が強く、両者の主張は平行線のまま事態の解決には至っていない。
だが、ここにきて新たな動きが出てきた。国土交通省が6月半ば、現行制度には限界がきているとし、旅行取引における燃油サーチャージの取り扱いに関する通達を改定することを明らかにしたのだ。同省は今後、企画旅行商品の取り引きにおいては、旅行代金に燃油サーチャージ額を含めて表示(総額表示)するよう、6月下旬にも旅行会社に通達する意向を示している。広告表示においては、「燃油サーチャージが含まれている旨」を表示し、旅行契約成立後に航空会社が定める燃油サーチャージ額が増減しても原則として差額徴収・返金は行わない方針で、消費者にわかりやすい形での燃油サーチャージの取り扱い整備に動き出した格好だ。
ただし、当分の間は従来の別途徴収の方法も容認する方向で、「燃油サーチャージが別途必要になる旨」の記載に代えて、「燃油サーチャージ額」を見やすい大きさで旅行代金に近接して記載することとする。また「合計額についても可能な限り記載することが望ましい」としているが、燃油サーチャージの徴収後に燃油サーチャージが増額された場合は、あらかじめ差額徴収がありうる旨を取引条件説明書面、契約書面に記載して説明しているときは、差額徴収・返金を行うことができる。旅行各社ではすでに広告作成済みのケースも多いことから、08年9月30日までは経過措置としており、同年10月からの旅行商品で本格的に導入されることになりそうだ。
燃油サーチャージ込みの旅行商品として、エイチ・アイ・エスは2月に展開した「明朗会計シリーズ」が好評だったことから、燃油サーチャージ額を含めた旅行代金表示を積極的に導入。7月時点で7~8割に及ぶという。
夏場の旅行商品選びでは、まだ燃油サーチャージの具体的な金額をパンフレットに表記しているケースは少ないので、燃油サーチャージの存在を十分念頭に入れたうえでの商品選びが欠かせないが、今後、旅行代金表示の紛らわしさは、大幅に改善されそうだ。