日本の使用状況を考えてデチューン

FZ1フェーザーの諸元などは以前の記事やヤマハのサイトを見ていただくとして、気になるのは輸出モデルとの違いだろう。フレームやスタイルはまったく同じ。違いは日本の厳しい騒音規制に対応させた点と、先にも述べた出力特性の違いだ。

たとえば輸出用フェーザーの乾燥重量が199kg(2005年発表時、欧州仕様)なのに対し、日本向けは205kgと、6kg重くなっている。これは主に騒音規制に対応させるためだという。前後荷重比も若干変化した。輸出用では前輪荷重が51%だが、日本向けでは50.2%に下がっている。これは後輪側に重量物が増えたためだろう(マフラーの重量増?)。

最高出力は150ps/11,000rpmから94ps/9,000rpmへダウンしているが、これは発生回転数を下げて実用域を重視するため。もちろん騒音規制も関係しているはずだ。諸元表を見ると圧縮比が11.5:1から10.5:1に下げられているが、これは使用するガソリンの違いも関係している(国内向けはレギュラーガソリン指定)。コンピュータなども当然違っているだろう。触媒の搭載や、YZF-R1に比べて慣性マスを40%増加させたクランクなどは輸出モデルと同様だ。

評価したいのはシート高を下げなかったこと。シート高815mmはYZF-R1の835mmよりも低いとはいえ、日本人にとってかなり高めの設定。もちろん他のネイキッドなどよりはるかに高い。日本で販売するにあたり、シートを薄くするなどして足付き性を良くすることも当然できたはずだ。しかしシート高をはじめ、ポジションはバイクをコントロールするのにとても重要な要素。それをオリジナルのまま日本に提供したのはよいことだと思う。

また、フェーザーだけでなく、カウルも持たないFZ1も同時に登場したが、今回はほとんど考慮しなかった。高速道路を走る際には小型といえどもカウルは非常にありがたいし、なによりフェーザーは頑丈なグラブバーを装備している。積載した荷物の安定性がずいぶん違うはずだ。カウルがハンドルマウントであれば何か考えただろうが、フェーザーはフレームマウント。ハンドリングへの影響は少ないはず。むしろヘッドライトを支えないぶん有利だろう。やはり「フェーザーコンセプト」はフェーザーで実現されているのだ。

そして、楽しみにしていたFZ1フェーザーがやってきた。

国内向けFZ1フェーザー。※レッド

同時に発売されたFZ1。※ホワイト

フェーザーのサイドビュー。※ブラック

フェーザーとYZF-R1、TDM900の比較。比率はほぼ正しくなるように合わせた

スピードメーターがデジタル、タコメーターがアナログ表示

YZF-R1から継承されたエンジン。クランクの慣性マスを40%増加

もちろんインジェクションを使用するが、サブスロットルバルブを併用

フェーザーのフロントを特徴づける、大きな2眼ヘッドライト※イメージカット