パペットアニメや漫画などで独自の表現活動を行っているアーティスト・村田朋泰氏の大規模な展覧会、『村田朋泰展 夢がしゃがんでいる』が平塚市美術館において、4月12日より開催されている。会期は5月25日まで。村田氏の幻想世界である"三ノ函半島(みのはこはんとう)"への旅がテーマになっており、首都圏郊外に位置する平塚への小さな旅とともに、幻想と現実がないまぜになった不思議な旅を体験できるだろう。この不思議な幻想世界はどのような背景があって生み出されたのか、その謎を村田氏にうかがった。

日本の映像界はこれまでにも増してアニメーション全盛の時代ではあるが、その多くはデジタルアニメやデジタル3Dによるアニメなどだ。そうした流れとは別に、このところ「ピンチクリフ・グランプリ」や「チェブラーシカ」のように欧米の過去作品の中から人形などの立体を使った、いわゆるパペットアニメと言われるものに注目が集まっている。しかし、手描きアニメ同様に、パペットアニメを表現の手段としている映像作家は決して多いとは言えない。国内では国宝級と言える人形作家・川本喜八郎氏や親しみやすいところではCMやテレビアニメも制作している伊藤有壱氏のように優れた作家はいるが、ごく少数だ。

そうした中、村田朋泰氏はパペットアニメという表現手段を取りつつ、ノスタルジックでロマンチシズム溢れ、その中にひとつの時代や風景に対して感じる喪失感が漂う、独自の世界観を形成しており、他の誰とも違う異彩を放っている。パペットアニメを通じて「夢」や「記憶」を表現してきた村田氏だが、本展覧会では、その矮小な世界を拡大し、等身大の幻想の世界に私たちを招いてくれた。パペットアニメや漫画、実写映像、立体造形とさまざまな手法に広がる村田ワールドにそのまま迷い込み、その表現世界をたっぷり楽しむ事ができる。

会場は平塚市美術館。ポスターはエキゾチックな海辺のイメージだ

東京からおよそ1時間。平塚はちょっとした小旅行気分で行けるのも楽しい