快適な舵取りを見せてくれた浜本船長と、軽妙なガイドを聞かせてくれた古館さんに別れを告げて、大型のオリエンタル号に乗り換える。こちらは50人乗りの本格的な遊覧船。船内では、今度は地元のNPO法人「本所深川」のメンバーがハッピ姿でガイドをしてくれる。今回目についたのは、こうした地元の皆さんの活発な参加ぶり。とくにリタイアしたシニアの方々の生き生きとした姿が印象的だった。

高橋から越中島までの連絡船は、乗船モニターに外れた方でも自由に乗れるとあって、どの便も満員。家族連れ、友人連れ、一人でと、思い思いに船旅を楽しんでいる。高橋船着場を出たオリエンタル号は、萬年橋先で隅田川に入った。川幅が大きく広がる。

こどもからシニアまで、多彩な参加者が船旅を楽しんだ

50人乗りの大型船「オリエンタル号」で越中島を目指す

行く手には清洲橋。関東大震災復興のシンボルとして、ドイツのケルン市にあった大吊橋をモデルに造られた。さらにその先には、アーチが美しい永代橋。こちらはドイツ・ライン川に架かる鉄橋をモデルにした。いずれも水上からの美しい眺めが、ヨーロッパの都市にいる気分にさせてくれる。

美しい清洲橋を通過。まるでヨーロッパにいる気分?

水辺から見る東京はまるで別の都市を見るかのようだ。永代橋で

水辺の風景はどんどん変わっていく。下流へ進むほどビルが高くなり、やがて前方に佃島のタワー群が見えてくる。まるでマンハッタンかと思うほどの風景だ。地上からはビルが接近して広々とした眺望は開けないが、水上からは実に雄大な東京が広がっている。岸辺で花見をする家族から声がかかる。すれ違う水上バスの乗客からも手が振られる。水辺にいると、人は心がオープンになるようだ。約20分の船旅で、オリエンタル号はあっという間に越中島船着場に着岸した。

すれ違う船の乗客同士、なぜか自然と手を振り合ってしまう

船の舳先は特等席。スリリングな体験に子どもたちは大喜び!

カメラポイントがいっぱい! みんな盛んにシャッターを切る

約20分で隅田川下流にある越中島船着場に到着!

ウォーキングを楽しみながら「さくらまつり」会場へ

船を下りると、ここでもボランティアのガイドツアーが待ち受けていた。ちょうど開催中の「お江戸深川さくらまつり」の会場まで、今度は徒歩で水辺の観光スポットを案内してくれるという。さっそく参加することに。ガイドはNPO法人「江東の水辺に親しむ会」の秦さんと石飛さん。ゆっくりとウォーキングを楽しみながら、風景を楽しみ、歴史を辿ろうという趣向だ。

さくらまつりの会場までは、直行すれば徒歩でもほんの数分。それを横道に回って、2時間ほどかけてぐるっと見て歩こうというツアー。越中島公園を出発して、東京海洋大学のキャンパス内に保存されている重要文化財の明治丸、古石場親水公園、牡丹園、於三稲荷、鶴屋南北の住居跡でもある黒船稲荷をまわって、黒船橋までたどり着く。ふだんは見過ごしてしまいそうな見どころが、秦さんの名調子で紹介されると、こんな所もあったのかと再発見できて実に楽しい。

明治丸では、旧商船大OBが解説してくれる

個人宅に祀られた於三稲荷にもお参りした

最終目的地である門前仲町の黒船橋・石島橋周辺は、満開のサクラの中で「第四回 お江戸深川さくらまつり」の真っ最中。屋台や大道芸などのライブはもちろんだが、水辺ならではの花見風景がくりひろげられていた。手漕ぎの和船で水辺からお花見を楽しむ「花見船」(無料)、22人乗りの大型船でお茶とお菓子をいただきながらサクラを楽しむ「お花見周遊船」(1,000円)、夜桜見物の「夜桜周遊船」(1,000円)などだ。川面では、手漕ぎの和船で新内流しがゆっくりと行き来する。なんとも"水の都"らしい粋な「さくらまつり」だった。

お江戸深川さくらまつりの会場では、和船からのお花見も!

深川ならではのお花見風景がくりひろげられた

水上から水辺から、東京を再発見できた一日。中でも船から見る東京は、新鮮で実に楽しい。下町らしい人情や絆も心に残った。お薦めの散策コースだ。ご紹介した小名木川では、これからも月に一度東大島文化センター主催で「小名木川リバーツアー」が開催され、大人1,000円(10月を覗く)で高橋・番所橋間のクルーズを楽しめる。他にも、「都心の水辺探訪クラブ」が毎月第3土曜日に行なう人力クルージングや、江東区が毎週水曜日に横十間川で実施している和船ツアー、NPO法人あそんで学ぶ環境と科学倶楽部主催のエコボートによるエコツアーなど、船での水辺体験は意外に多い。官民あげての"水の都"再生への取組みを、ぜひ一度水上からご覧になってみてはいかがだろう。