東京ビッグサイトでこのほど開催された「第36回HOTERES JAPAN 2008」の企画展示「AQUA&SPA 2008~温泉・温浴・スパ業界のための展示会~」。業界関係者が一心に聞き入っていたのは、エステ・ジャーナリストの惣流マリコ氏とビーチライターの古閑千恵子氏によるビジネスセミナー「女はこんなスパに行きたい! ~スパフリークが語る国内外の最新スパ事業~」だ。都会の女性を中心にスパブームが騒がれる中、本当に女性が行きたいスパはどういったものなのか。本記事では同セミナーをレポートする。

惣流氏は雑誌『25ans』の元編集者で、ウェブサイト「All About」にてガイドとして執筆も手がけるエステ・スパジャーナリスト。一方、古閑氏はスパ取材を多く手がけ、月に1、2回は海外のスパを回るというビーチライター。『地球の歩き方Gem Stone スパへようこそ』の著者でもある。両氏ともに、自他とも認める"スパフリーク"だ。

エステ・ジャーナリストの惣流マリコ氏

ビーチライターの古閑千恵子氏

そんな両氏が「女はこんなスパに行きたい!」と思うポイントは3つだと主張する。それは下記だ。

  1. 借景
  2. こだわり
  3. ホスピタリティあふれる人材

(1)に関して、「ただ景色がよい、だけではダメ。トリートメント中も、五感に自然の素晴らしさを訴えかけ、享受できるようなスパを利用したい」とし、具体例として、モルディブ・フヴァフェンフシの「ライムスパ」やバリの「マヤ・ウブド・リゾート&スパ」、マレーシアのビーチリゾート、ランカウイ島のザ・ダタイランカウイ「The SPA」など、海外のSPAを列挙した。いずれも、開放的であったり、海風を肌で感じることができたりと自然を体感できる施設だ。狭い日本において、そんな開放的な施設はないのでは……という疑問が浮かんだが、日本にも開放的なスパはあると両氏は述べ、沖縄・喜瀬別邸HOTEL&SPA「スパやうら」、飛騨高山のホテルアソシア高山リゾート「スパ フィトン」を紹介。前者は人通りに面せず、森に面した作りを特徴として挙げ、後者はトリートメントプログラムに瞑想を取り入れるなどの点で、自然を体感できると賞賛した。

セミナーでは両氏によるオススメのスパについて、パワーポイントで丁寧に説明が行われた

(2)については、スパとエステの違いを「トリートメント」だとし、「こだわりのメニュー、エステにはないプロダクト(製品)選びをしているスパ」の良さを語った。また、「1回で利用者を満足させる、各スパオリジナルのトリートメント『シグネチャートリートメント』の質が良ければ素晴らしいスパだと言える」と断言。例としては、果物のいちごを使用したトリートメントを施す「スパヴィレッジ」(マレーシア・キャメロンハイランドリゾート)、ココナツ、バニラ、ティアレなどを使用して、自然との調和が特徴のトリートメントの「ヘレナスパ」(タヒチ・インターコンチネンタル スパ モーレア)が挙げられた。日本のスパでは、湯河原(神奈川県)の「懐石 海石榴」でのスパを取り上げ、利用者層を考えた製品選びをしているとした特徴を紹介した。

キャメロンハイランドリゾート「スパヴィレッジ」

インターコンチネンタル スパ モーレア「ヘレナスパ」

(3)に至っては、「トリートメントよりも『癒し空間』を重視したい」、「セラピストの人柄や気遣いからリラックスを得るもの」、「旅行先では1回の施術がそのスパ全体の評価を決める」とし、いかにセラピストの人材育成が重要かを力説。中でも「仕事では気が強い女だと思われていても、スパの施術中に『空調を調整してくれませんか』というのはなかなか勇気がいるもの。そういった意を汲んでくれるセラピストなら最高」(惣流氏)という発言は、スパを利用する女性の声を代弁しているようだった。

セミナーの終わりには、これからの望む理想のスパとして「デスティネーションスパ」「ホンモノの和スパ」「もっと気軽に通えるスパ」を提案。「デスティネーションスパ」とは、個々人の目的(デスティネーション)にあったスパのこと。両氏が勧める施設として、施術後のライフスタイルの指導やヘルシーな料理が特徴のタイ・バンコクの「ザ ファーム アットサンベニート」や太っている人も痩せすぎの人も、バランスのいい体形になれるよう指導するという静岡県・伊東にある「ヒポクラティック・サナトリウム『石原断食道場』」等が紹介された。これらから、スパを利用して「キレイになる」「気持ちがいい」というだけではなく、そこからライフスタイル提案をしてもらえる施設というのがこれからのスパに求められる課題だということがわかった。

ザ ファーム アットサンベニート

ヒポクラティック・サナトリウム「石原断食道場」

「もっと気軽通えるスパ」に関しては「旅行で訪れるスパではなく、月3、4回通いたいと思うと、低価格を提唱したいです。先ほど私たちが紹介した『行きたいと思うスパ』の条件を兼ね備えつつ、リーズナブルな価格提供をぜひ業界の皆様には検討していただきたいです」と惣流氏。まさに「女の本音」を前に、会場にいた業界関係者は苦笑い。スパの最新事情だけでなく、ユーザーの視点も知ることのできた実りあるセミナーは幕を閉じた。