突然ですが、チャリンコのスピード違反で捕まったことある? オイラはある。といっても、検問の脇に連れて行かれてこっぴどく怒られただけなんだけどね。高校からの帰り道、クルマ1台通らないのどかな県道ですよ! 普通そんな田舎でスピード検問するか? しかも、いたいけな少年に縄をかけるのかと小一時間…あ、失礼、興奮しすぎた。あれから○○年、そのときのデジャヴかと思うような光景を映画館で目にするとは思わなかった。『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』は、そんなシーンから始まる。

ママチャリ(市原隼人)と駐在さん(佐々木蔵之介)の戦いの幕が切って落とされる!

オイラの場合、警官のお説教にすごすごと引き下がり、そのまま飼い慣らされたつまらない人生を送っているわけだが(笑)、この映画の主人公たちは違う。自分たちを捕まえた駐在さんに一矢報いようと、あの手この手でちょっかいを出し始める。駐在さんもこれにどこまでも対抗し、両者の対立は次第にエスカレートしていくのだった……というのが大まかなストーリーだ。原作は、あるブログの中で現在も続いている1970年代の実話を元にした同名のネット小説。ネット上で大きな話題となり、書籍化もされているのでご存じの方も多いだろう。

主人公の高校生:通称「ママチャリ」を演じるのは市原隼人。一応グループの参謀兼リーダー格で、仲間の悪ガキたち(最近の学園ドラマでよく見かける面々が演じている)とつるんでに駐在さんに挑戦していく。このママチャリたちの作戦のくだらなさと、対する駐在さんの大人げなさがストーリーのポイント。脚本が『ココリコミラクルタイプ』の台本を書いてた人だそうで、言われてみるとたしかにバラエティ番組のコントコーナーみたいなシーンの連続だ。

マスクをかぶって交番に突撃

一方、「敵」の駐在さん役は佐々木蔵之介。高校生軍団とバトルする警察官にしては線が細い気がしたけど、実際見てみると案外違和感なかった。この人の持つ爬虫類みたいな雰囲気がうまく出ていたというべきか。普通は物語が進むにつれて「実はいい人」っぽいオーラを出すものだが、この駐在さんは最後まで何を考えてるかわからない不気味さを漂わせていた。そして、悪ガキたちもあこがれる駐在さんの妻役には麻生久美子。元レディース(暴走族)という設定なので出演を決めたそうだが、この人も『時効警察』以来、何か吹っ切れたね。このほか竹中直人など、チョイ役でゲスト出演者が多数いるので、これを探すのもお楽しみ。オイラは竹中直人よりも、同じシーンに掟ポルシェが出ていたのに驚いた。

主人公ママチャリの仲間が全員が恋(?)してしまう加奈子さん(麻生久美子)

とまあ、これだけだと何てこともない映画なのだが、場面を印象づけているのがバックに流れる当時の流行歌や70年代風物の数々。これがなかなかいい味を出している。円広志を皮切りに、お色気シーンに流れる「魅せられて」by ジュディ・オング 等々、引き込まれる人も多いのでは? オイラも『三丁目の夕日』は古すぎて実感できないけど、この時代ならまあまあ共感できる。しかしさすがに桑江知子や「焼きそばBAGOOON」は通じる人少ないと思うぞ(笑)。

そう考えると、時代設定が1979年というのはなかなか上手い。ピンクレディーや「高三トリオ」(苦笑)が失速して、アイドル不遇の時代と言われたころ。これが80年代になっちゃうとアイドル全盛になって、同じように流行歌を流してもオタク臭が漂うもんね。

そしてこの時代を引っ張ったアイドルと言えば、やっぱり石野真子でしょう! 主人公ママチャリの母親役が石野真子なのは、もちろんそれを十分意識してのことじゃないかな。この母親がよけいなちょっかいを出して、ママチャリが微妙な関係にある彼女と気まずい空気になるシーンがある。そこで流れるのが「狼なんか怖くない」! オイラ的には一番このシーンが盛り上がったよ。

"ぼくたち"と駐在さんの死闘の結末やいかに!

(c) 2008『ぼくちゅう』PARTNERS

『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』

出演:市原隼人 / 佐々木蔵之介 / 麻生久美子 / 石田卓也ほか
監督:塚本連平(『着信アリ2』、『時効警察』)

4月5日(土)、渋谷シネマGAGA! 、池袋シネマサンシャイン他にて全国ロードショー