東京国立近代美術館は3月29日より「生誕100年 東山魁夷展」を開催する。今回は、これに先駆けて開かれたプレス向けの記者会見会をもとに、同展の注目ポイントを紹介していく。

記者会見の様子

記者会見では、同展を「東山魁夷の代表作を多数鑑賞できる回顧展と位置づけ、"東山芸術"の歩みを迫るものです」と発表した。出品総数は、本制作101点とスケッチ・習作53点を合わせて計154点と、生誕100年にふさわしいものとなっている。

展示構成は、東山魁夷の作画展開や作風傾向によって分けた7章から成る。「模索の時代」「東山芸術の確立」「ヨーロッパの風景」「日本の風景」「街・建物」「モノクロームと墨」「おわりなき旅」と名付けられた章ごとに、代表的モチーフである自然を始め、街や日本の美など、多方面に"東山芸術"を堪能することができるだろう。

同展の注目作品は、1947年の日展で特選となった「残照」や東山魁夷の名前を世間に広めた「道」、最も人気がある作品といわれる「花明り」など。「残照」は、夕日の美しい照り映えが印象的。その後の作品である「道」では、より平面で単純化した作風へと変化しているのが読み取れる。「花明り」は、円山公園の枝垂れ桜と満月が出会った一瞬を描いたもの。これは、東山魁夷の感受性と日本の美が融合したといえる作品である。

《残照》 1947年 東京国立近代美術館

主催者は、「代表作品がこれだけ一堂に会するのはめったにないことです。さらに「残照」や「花明り」などの重要作品が、全会期を通して展示することも本展の大きな特徴といえます」と話す。

《花明り》 1968年 個人蔵

《道》 1950年 東京国立近代美術館

また、作品完成に11年の年月を費やした、唐招提寺御影堂の障壁画も見どころの1つだ。今回は、1975年完成の「濤声」の一部と1980年完成の「揚州薫風」を紹介する。「濤声」は大和絵の世界を表現し、「揚州薫風」は中国の風景を題材としている。この他、白馬のシリーズなど特集展示などを設置する予定。全展示作品を通して、東山魁夷の深い精神性や自然観照の心を感じ取ることができる、東山作品の世界観を味わい尽くせる展示会となっている。

同展の会期は、5月18日までとなる。観覧料は一般が1,300円、大学生が900円、高校生が400円、中学生以下は無料。開催時間は10時~17時まで、木・金・土曜日のみ10時~20時までで、休館日は4月7日/14日/21日/5月12日となる。なお、会期中は前期3月29日~4月20日、後期4月22日~5月18日に分けて、展示替えを予定している。