スキー、スノーボードといえばウインタースポーツの代表格。しかし、最近ではちょいと複雑な事情があるようだ。なんでもスノーボード人口が近年、減少傾向にあるのだという。その理由として、「スキーと違って、まず立ち上がるのが困難」「転ぶと痛い」「曲がれない」といった"スノボード=ハードルが高い"といったイメージがあるからではないだろうか。

確かによく考えてみると、板をつけているとはいえスキーは両足をバラバラに動かすことができる。しかしスノーボードは1枚の板に両足を固定させるので、片足ずつ別々の動きをとることができない。スノーボードを体験したことがなく、もうそれほど若くもない私(ここだけの話、1970年代生まれ)にとっては、既にこの時点で「そんな危険なこと、この年齢ではチャレンジできないわ。きっと一生スノボはやらないだろうな~」となってしまう。

そんな私のもとに、BURTONの初心者向けレッスンプログラムの取材依頼が舞い込んできた。BURTONといえばスノーボードの一流ブランドである。そのBURTONが、スノーボーダーの底辺拡大を狙って開発したレッスンプログラムが今回紹介する「LTR(LEARN TO RIDE)」である。さらには「BURTON SNOWBOARDING BUS」なるものまで運行されていて、「スノボはじめるならこのチャンス!!」なのだとか。ちなみにBURTON SNOWBOARDING BUSとは、2008年3月中旬までの隔週金曜深夜に、東京・神宮前と大阪・心斎橋にある「BURTON STORE」を出発してゲレンデに向かうバスのことで、送迎無料となっているのだ。各回先着40名で受け付けており、参加者はLTRプログラムも無料で受講できるという。

ウェアもボードもレンタル可能、しかも送迎付き。こんなに準備が整っているというのに、私ってはまだ"スノーボード=怖い"という先入観が頭にこびりついており、「滑らなくてもいいんだよ、取材だけすればいいんだし」と自分に言い聞かせつつ、同じくスノーボード未経験者の編集Tと共にBURTON SNOWBOARDING BUSに乗車。長野にある「タングラム斑尾」へと向かった。

長野県上水内郡にある「タングラム斑尾」。到着したのは朝5時頃だった

到着した私たちを温かく迎えてくれたのは、同ゲレンデにてLTRインストラクターを務めている村松純氏。「今日は滑らないんです、取材に来たんです」と必死に予防線を張りつつ、まずは村松氏にLTRの特徴を伺った。

"雪と遊ぶ"感覚で習得

――LTRがスタートした経緯を教えてください

「スノーボード初心者が持っている負のイメージ、例えば転ぶと痛い、思い通りに方向転換できないといったものを払拭できるようなプログラムを、ということでBURTONのプロライダーがメソッドを立ち上げました。型にはまったようなレッスンではなく、まずは"雪と遊ぶ"感覚でスノーボードに慣れ親しんでもらうといった新感覚の内容となっています」

――LTRプログラムを受講すると、どこまでできるようになりますか?

「レッスンは90分構成です。この短時間でリフトに乗り、下まで滑って下りてきてもらうのです。かなりの強行スケジュールのように思われるかもしれませんが、レッスンが終わってもリフトに乗れなければ、結局1人で滑ることはできません。『LTRレッスンを受ければ、とりあえずは1人でスノーボードを楽しめるよ』といった段階まで行ってもらうのが目的です」

LTRインストラクターの村松純氏

――具体的なプログラム内容は?

「まずは準備体操をし、転び方を教えます。その後、片足だけバインディング(ボードとブーツを固定する締め具)に装着。スケーティング(バインディングに固定していない足で雪面を蹴りながら滑る方法)でリフト乗り場に移動し、リフトに乗ってもらいます。初心者にとって、リフトへのアプローチが最初の課題となりますから、まずはここをクリアしてもらいます。その後は立つ練習、サイドスリップ(横滑り)、左右のターンへとレベルアップしていきます」

――90分でターンまで!?

「生徒さんによって達成度は様々ですが、大抵の方はできるようになりますよ。その秘密の1つとして、試行錯誤を繰り返して完成したLTR専用ボードが挙げられます。雪の上でボードを滑らせてみるとよくわかるのですが、通常のボードより滑りやすくなっています。また、ライダーの目線に敏感に反応するのも特徴です」

LTR専用に開発されたボードと村松氏

――目線に反応?

「右に行きたければ右を見る。そうすると自然とボードが反応し、右へ曲がっていく、といった具合です。初心者の方は恐怖心から足下を見がちですが、前方に目を向けることが上達の1つのコツでもあるんですよ」

――日本国内でLTRプログラムを扱っているゲレンデの数は?

「5年ほど前からプログラムを導入し、現在では約20カ所となっています。スノーボーダーの底辺拡大ということで、特にリゾート地を中心に導入しています」

――ありがとうございました。これから実際にLTRの取材をさせていただくのですが、私はスノーボード未経験者なので、本日は参加せず、取材のみとさせていただきます

「いえいえ、そういう方にこそ、ぜひLTRを体験していただきたいのです。土方さんもぜひ参加してください。すぐにターンもできるようになりますよ」

にこやかにLTR参加を勧めてくれる村松氏。ここで「いえ! 私は参加しません!!」と言い張るのは、かなりの"KY(=空気読めない)"である。私も編集Tも共に覚悟を決め、参加してみることにした。