07年暮れ、世界初の「3Dインターネット・オークション」が開催!

90年代以降、普及してきたインターネット・オークション。いまやとても敷居の低い、誰もが参加できるオークションとして多くの人たちが利用するサービスとなった。手軽に参加できるネットオークションではあるが、そのライブ感、臨場感を得るといった点では、実際のオークションのようにはいかない。これが、インターネット上の3D仮想空間で行われたとしたらどうだろう。

多彩な試みで話題の多いセカンドライフでも、リアルタイムオークションは初の開催となる

あの音声合成ソフト「初音ミク」も出店された

昨年の暮れ(2007年12月21日)、3D仮想空間「セカンドライフ」内で、世界初となる3Dインターネット・オークションが開催された。アバターたちが会場で繰り広げる初めての仮想空間オークションでは、リアル商品とアバターたちに人気のバーチャル商品の計22点が出展され、総売り上げは、仮想マネーリンデンドルで、267,250L$だった。米ドルで1ドル=270リンデンドル程度。日本円(※)では、1円=2.36リンデンドルとして、11万2,000円程度の換算になる。今回のオークション運営の元締めであるCyber Maximaは、この第一回開催を記念したオークションを「チャリティーオークション」として位置づけ、11万円強の全売り上げを、同社から国際慈善団体へ寄付する(今回に限り出展商品は、各出展者からの寄付となっている)。

※2007年12月25日時点、1ドル= 114.26円で計算

3Dオークション事業の立ち上げ経緯

3Dオークション主催元、Cyber Maxima代表取締役社長 ソン・コンエ氏

Cyber Maxima代表取締役社長、ソン・コンエ氏が3Dオークションの構想を描き、その実現に向けて動き出したのは2007年の春のことだ。以前から、ヴァーチャルリアルティ(以下、VR)の世界に興味を持っていたというソン氏は、「WEBでできることは、すべてVRで行なうようになっていくだろう」と話す。ソン氏は、ヴァーチャルワールドにおけるオークションやコマースを中心にした事業を行うために同社を立ち上げた。設立は2007年11月だ。同氏は、3Dオークションの元となるシステム案を煮詰め、特許申請を終えると、セカンドライフ支援を行うマグスルと提携し、システムの開発を進めた。「ヴァーチャルワールドにおいて行なうリアルタイムのオークションの利点は、現実のオークションのような臨場感や高揚感があること。そして、同時にWEB上で行なわれる手軽さ、参加しやすさを兼ね備えていることです」とソン・コンエ氏は語る。

システムを手がけたKatsuzo Boa氏。手に持っているのは、オークション時にアバターが手にするパドル

システム開発を手がけたのは、マグスル取締役 平野勝三氏だ。平野氏は、アバター名Katsuzo Boaとして、日本SIM初の遊園地SIM「Katsuzo Land」の制作や、海外からも人気のセカンドライフ内の打ち上げ花火システムなどを開発、販売(花火屋勝三)などで有名な人物。リアルでは、マグスル取締役のほか、自身が経営するオモスロウにて、システムコンサルタントおよびコンテンツ制作プロデューサーを務めている。平野氏は、3Dオークションシステム開発について「世界で初めてのことなので、いろいろと大変ですが、すごくやりがいがあります」と話す。システムの詳細は企業秘密だが、セカンドライフ内のシステムだけでなく、外部システムとも繋がっているとのこと。「大きく分けると、オークション運営システム、参加者用システム、外部システムと分かれています。細かな仕様は、特許などの関係もありますので、お答えできない部分です」。

「優雅な気持ちに」なれる高級感のある会場デザイン

また、こだわりの部分では、建物の概観や参加者が座るソファなどのオフジェクトにも高級感を持たせた。ソファには、アバターが座る動作のアニメーションが仕掛けられているが、ポーズがいくとおりも用意されている。制作クリエーターであるGsha Gray:(アバター名)さんは「"来ていただいたお客さまにできるだけ優雅な気持ちになっていただく"ことを制作コンセプトとして持っています。あとは、このオークションを盛り上げるために、建築様式の融合を図っています」。

建物や家具などの制作担当となったGsha氏((バーチャルワールドクリエーターたちはシャイな人が多く、顔出しなどを好まない)

マグスル代表取締役 新谷卓也氏。企業のセカンドライフ参入支援を行うマグスルは、ネット上の共通ポイント「ネットマイル」から仮想通貨リンデンドルへの交換サービスや、NTTカードソリューションの電子マネー「NET CASH」で貨幣通貨が購入できるサービスなども展開している

開催、運営の協力を行うマグスル代表取締役 新谷卓也(アバター名:Neko link)氏は、今回のオークションでオークショニアも勤めている。「最近、よくブログなどで同期型、非同期型という話題がありますが、ヴァーチャルワールドの同期型であることを生かしたコンテンツとして、このオークションはとても良いと思っています。この世界にコマースへの期待を持っている人も多いのですが、そのための一歩としてもオークションは有効だと思います」と語る。