週刊文春ミステリーベストテン第1位など、数々の賞に輝く雫井脩介のベストセラー小説『犯人に告ぐ』が映画化。その初日舞台挨拶が東京の新宿シネマスクエアとうきょうにて行われた。主人公の豊川悦司演じる巻島刑事の捜査の足取りにならい、川崎から新宿へと連続して行うという独特な舞台挨拶となった。

舞台挨拶に登場した主要キャストたち。左から小澤征悦、石橋凌、豊川悦司、松田美由紀、笹野高史、瀧本智行監督

かつてメディアに追い詰められ失脚した巻島刑事は、数年後、メディアを利用して連続児童殺害犯"バットマン"を追い詰める
(C)2007「犯人に告ぐ」製作委員会

川崎で起きた連続児童殺害事件の犯人を、豊川悦司演じる刑事がテレビというメディアを使い追い詰めていくという「劇場型殺人」ならぬ「劇場型捜査」を描いた本作。最近の邦画作品にしては珍しく、若手をほとんど起用しないベテラン中心の地味なキャストも話題となっている。舞台挨拶も豊川悦司を中心に味のあるベテラン俳優・女優ばかりが壇上に揃うある意味、新鮮な物となった。

巻島史彦(豊川悦司)は特別捜査官としてニュース番組に出演し、犯人を挑発する
(C)2007「犯人に告ぐ」製作委員会

シネマスクエアとうきょうの観客席のチケットは、前日の時点で既に完売。場内の9割以上を若い女性が占めていた。これには主演の豊川悦司も驚いた様子で、「今日は公開される新作が沢山あるのに、こんな一番地味な映画を観に来てくださってありがとうございます」と喜びを語った。「どんな作品ですか?」と訪ねる司会者にも「本当に地味で……、でもゴージャスな作品です」とギャグ混じりで答えた。

ハリウッド映画への出演経験もある石橋凌は「久しぶりに大人が楽しめる映画です。個人的には最近善人の役が少なくて、今回は久しぶりに善人の役がやれると思いました」と語った。今回の主要キャストで唯一の若手とも言える小澤征悦は「こんなに嫌な奴の役は初めてです。昔からの知り合いに「小澤君は本当はああいう人なの?」と言われてしまいました」と苦笑しながら語った。

県警本部長である曽根(石橋凌)は、「劇場型捜査」という大胆な捜査を巻島刑事に指示する
(C)2007「犯人に告ぐ」製作委員会

小澤征悦演じる植草警視。巻島刑事直属の上司で、抜け目ない若きキャリアだ
(C)2007「犯人に告ぐ」製作委員会

松田美由紀は「とにかく楽しい現場でした。でも豊川さんは、女の私を受け付けない感じで……。あ、男なら受け付けるって意味じゃないです」と冗談を飛ばし笑いを誘う。笹野高史も「豊川さんと親しくなろうと、現場でバカな事ばかりしたが壁がありました。でも飲んだらヘラヘラ笑う人で、親しくなれました」と語る。ベテラン勢の愛のあるトヨエツいじりに笑いっぱなしの豊川は「この舞台挨拶が上映後で良かったです。上映前じゃイメージ壊れますから」と語った。

松田美由紀は巻島刑事の妻を演じる。メディアにつぶされた夫が、再びメディアと関わる事を恐れる
(C)2007「犯人に告ぐ」製作委員会

笹野高史は巻島刑事の信頼できる部下、津田刑事役。もろに"ベテラン刑事"という風情
(C)2007「犯人に告ぐ」製作委員会

瀧本智行監督は「若い頃は色々なしがらみを背負う大人がかっこ悪いと思っていた。でも最近は中間管理職みたいな、しがらみを背負う中年のかっこよさを感じている。それをこの映画では描きたかった」と熱く真剣に締めた。

キャストたちは「地味な作品」と謙遜するが、取材マスコミが入りきれないほど盛況だった今回の舞台挨拶。「地味」だけでない作品の魅力は十分に伝わった。『犯人に告ぐ』は現在全国ロードショー中。