この秋、実力派声優陣が参加するライブイベント「声優口演」が開催される。それを記念して、このイベントの総合プロデューサーであり、また出演者の1人でもある日本声優界の大御所・羽佐間道夫氏に「声優口演」、ならびに声優の仕事についてうかがった。

羽佐間道夫氏

なお、「声優口演2007」の日程等は、以下のとおりである。

日程 10月21日(日) 10月28日(日) 11月3日(土)
開場 18:00 14:00 17:00 18:00
開演 18:30 14:30 17:30 18:30
場所 Bunkamura オーチャードホール 東京ミュージック&メディアアーツ尚美 バリオホール 四谷区民ホール
演目 懐かしの映画音楽 バスター・キートン『探偵学入門』 バスター・キートン『探偵学入門』
出演 ・演奏: 山下洋輔ニューカルテット
・ヴォーカルセッション: 戸田恵子&山寺宏一
・ナビゲーター: 羽佐間道夫
・口演: 堀内賢雄&井上喜久子 ・口演: 堀内賢雄&池田昌子
演目 バスター・キートン『探偵学入門』 『のらくろ二等兵』 『のらくろ二等兵』
出演 ・口演: 羽佐間道夫&戸田恵子
・演奏: 山下洋輔ニューカルテット
・口演: 福山潤 ・口演: 皆川純子
演目 チャールズ・チャップリン『犬の生活』 『弥次喜多道中 岡崎の猫騒動』 『弥次喜多道中 岡崎の猫騒動』
出演 ・口演: 山寺宏一 ・口演: 近石真介 ・口演: 近石真介
演目 - 声優トークショー 懐かしの映画音楽
出演 - ・トーク: 声優陣
・ナビゲーター: 羽佐間道夫
・演奏: 山下洋輔ニューカルテット
・ナビゲーター: 羽佐間道夫

「声優口演」のポスター

――「声優口演」は、昨年の外画動画吹き替え50周年記念事業の一環として行われたのが、最初だそうですね。この催しが行われることになった、経緯をうかがえますか。

「最初はね、『50年経ったんだから、なんか声優のイベントやろうよ』と言う意見が仲間から出て。だったら最初は銀座の映画館で、例えば昔懐かしい『ローマの休日』をその場でライブ吹き替えしてみようじゃないか、と言う企画が出て、それもできるだけベテランにやって頂いたほうがいいだろう!』って、そんなアイデアが途中まで進んでいたんです。けれど、なかなか映画フィルムの使用権利が取れなかったりしたんですね。だったら『もう、著作権がすでに切れているものを我々で演じてみたらどうだろう』と言うことになった。ところが著作権が切れてるものを探したら、実は切れてないんだよねぇ」

――昔の映画でもですか?

「例えばチャップリンなんかしっかり財団作ってね、『まだオレのものだ』って言ってるのがいたりね。バスター・キートンのも『これは、オレが持ってるフィルムだから』って言ってね。なかなかすんなり行かないことがあったんですけども、今回はいろんな方のご協力で……チャップリンの映画は角川映画さん。キートンの映画はマツダ映画社さんが協力してくださって、これでコンテンツは整った。そこで『まったく無声の世界に、私たちが声を付けていって、さらに音楽界で紫綬褒章を取ってる山下洋輔氏がピアノの音を付けたらどうなるんだろう。もしこれが実現したら、"新しい語りの文化"というのが生まれるかな』と(笑)」

――かなり大掛かりになっていったんですね。

「活弁じゃなく、登場人物のリップシンクロをさせちゃうと言うね。今までこの世界には、活弁士で有名な方もいらっしゃるんですよ。澤登翠さんとか、いろんな方が世界を舞台に活躍していらっしゃるんですよ。『伝統芸能』としてね。私たちは『伝統芸能』じゃなくて、『今芸能』として(笑)。これから次の人たちに向けて、瞬間消えてしまうもの、録音しないものもあっていいんじゃないかと。というわけで、今回トライすることになりました」

――活弁で、と言いますと、1956年に放送された日本のテレビ史上初の吹き替えTVドラマ『カウボーイGメン』も、滝口順平さんが生で演じられ活弁に近いものがあったんじゃないでしょうか。

「ええ、その当時は生で放送していたようでした。50年前、1956年の『カウボーイGメン』ていうのは、今、僕らがやろうとしている『声優口演』と同じで、全登場人物を1人でおやりになったんですね。滝口順平さんが、男性も女性も全部おやりになった。活弁士のように演じられたというのが、最初なんですよ」

――アテレコっていうよりは、そもそも活弁だったのですね。

「画面の解説、台詞を合わせる活弁っていうかね。そんなようなつもりで、最初おやりになったようですね」

――羽佐間さんご自身は、この番組には関わっておられたんですか。

「僕はその場にいなかったんですけど」

――その後ぐらいですか、ご自身が声のお仕事を始められたのは。

「そうですね、ちょっと後ですね」