なんか夏なんで、映画DVDも観ちゃいました

ちょっと変わったDVDを紹介するコラム「こんなDVDありますけど」を担当させていただいている熊方雄二と言います。最近、仕事で何度か映画『トランスフォーマー』を観させていただきました。『トランスフォーマー』凄い映画です! でもこの作品を観ていてどうしても解らなかったのが、オートボットたちの変型プロセス。超真剣に最前列で凝視したのですが、どうしてもわかりません。Zガンダムとかより、ずっと複雑です。映画版の変型TOYもちゃんとチェックしたのですが、明らかに劇中とは何かが違います。

複雑すぎて理解できない変型プロセスに違和感が残りますが、ひとつだけはっきりしている事があります。それは、とりあえず男の子なら、「ああ、俺もトランスフォームしたいなあ」などと劇場を出た瞬間、思うに違いないという事。東銀座の路上、照りつける太陽の真下で、僕も確かにそう感じました。地味なライターからイケメンに! 貧乏人からセレブに! 何でもいいから、とにかくトランスフォームしたいっ! 男の夢は無限に広がります。そこで、「自分を変える」という願いを無理やり込めて、いつもは変なDVDばかり観ていますが、今回は夏にリリースされる映画DVDを何本か紹介することにしました。

最初のきっかけの時点から、すでに間違えちゃってる感がありますが、気楽にお付き合いしていただけたら嬉しいです。ああ、好きな異性には絶対に言えないような挨拶になってしまいました。

顔が見えなくても超ノリノリなニコラス・ケイジはやっぱり凄い

アメコミが原作の『ゴーストライダー』を観ました。アメコミ原作の映画に必ずつきまとう話題と言えば原作とのギャップ。「あれイメージ違うよね」、「あの敵はあんなキャラじゃないって」などなど。『スーパーマン』、『バットマン』、『SPAWN』、『スパイダーマン』、『ハルク』、『X-MEN』、『ヘルボーイ』など、様々なアメコミ映画の実写化の時に囁かれてきた苦言ですが、僕は知っています。そういう発言をする人の大部分が、実は原作をまったく読んでいないという事を!

そもそもアメコミキャラに統一のイメージなどないのです。余程のマニアでない限り、なんとなく「●●ってこんなだろう」と思ってる程度だと思います。そういう意味で、『バットマン』よりさらに日本人に馴染みのない『ゴーストライダー』ですから、皆さん何の先入観もなしに楽しめると思います。申し訳ないのですが、僕も原作をまったく知らなかったので、素直に観ることができました。

主演のニコラス・ケイジはゴーストライダーに変身すると、まったく顔が見えません。CGで描かれた燃え盛るドクロがゴーストライダーの顔なんで、ニコラス好きとしてはかなり微妙です。アカデミー賞最優秀主演男優賞の受賞歴もあるニコラス・ケイジですが、「顔が見えない? だから?」って感じで、気楽にゴーストライダーやってます。ヒーローになる理由も、戦う理由も、愛する女との再会も、ゴーストライダーの武器さえも(拾った鎖ですし……)、すべて成り行きで、あまり緊張感がありません。ただ、その状況の中心に自然体でニコラス・ケイジがいるという事実が逆に凄いです。

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オスカー俳優なのに、永遠に大御所にはならないであろうニコラス・ケイジの姿勢が好きです。従兄妹のソフィア・コッポラとは真逆の人生です。

ゴースト・ライダー デラックス・コレクターズ・エディションエクステンデッド版(2枚組)
ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント
8月22日発売 4,179円

もう自由に殺人させたくなっちゃいます

頭脳明晰な連続殺人鬼ハンニバル・レクター博士シリーズの最新作『ハンニバル・ライジング』を観ました。最近、流行のシリーズ1作目の前日譚を描くというエピソード0モノです。これまでの3作では、その頭の良さと残忍さばかりが描かれてきたレクター博士ですが、本作では毎晩、悪夢にうなされたり、苦悩して涙を流すレクターの姿が拝めます。この悪夢のエピソードを知ってから、改めて『羊たちの沈黙』、『ハンニバル』を観ると、まったく作品の印象が変わってきます。クラリスの一番の理解者はレクターであるという、強引に思えた図式が意外としっくりくるのです。

また、あまりにもレクターの餌食になる被害者たちが最低の悪党ばかりなので、レクターがまったく悪い人に見えません。完全に扱いはアクション映画のヒーローでした。殺し方と調理法は、相変わらず残忍ですけど。

あと、ハリウッドお決まりの変な日本人描写は、まだまだ健在みたいです。本作には、レクターに影響を与える広島出身でフランス在住の日本人女性レディ・ムラサキが登場します。凄い名前です。彼女は剣道の達人で、バイクにまたがり疾走して、仏壇の変わりに鎧と刀を拝んでいるというタランティーの映画に出てきそうなパワフルな日本人でした。

ハンニバル・ライジング プレミアム・エディション
発売:東宝東和 / 販売:ジェネオンエンタテインメント
8月24日発売 4,179円(スタンダード・エディション2,980円)

いつも痛そうなベン・スティラーに敬礼!

夏っぽいお祭り映画を観ました。『ナイト・ミュージアム』です。ニューヨーク自然史博物館の展示物たちが、夜になると動き出すというのです。そんなとんでもない博物館の夜警を勤める人物と言えばこの男しかいません。そう、ベン・スティラーです! 名作『メリーに首ったけ』で、特殊メイク使用とは言え、ハリウッド史上初めて、チャックにアレを挟んでしまった男の姿を実写で見せてくれたベン・スティラー。やはり今作でもとんでもない目に遭います。生きた展示物たちに殴られ、追いかけまわされ、倒されまくります。コメディー映画なのに、毎回どんなアクションスターよりも痛そうな体当たり演技を披露してくれる彼は、なんで日本でこんなに評価が低いのでしょうか。動き出す展示物の特撮も凄いのですが、ベンの大げさで、痛そうで、でもちょっと優しくて良いヤツというキャラが一番目立っていました。

ナイト ミュージアム 2枚組 特別編
20世紀フォックス ホーム エンタテインメント
発売中 3,990円(通常版2,990円)

最後はアルバトロス作品で締めます

最後はハリウッド以外の作品を紹介します。全国のダムをひたすら映す『ザ・ダム』や『パイレーツ・オブ・バルト』という、明らかにあの大作のパク……、いや、オマージュ作品など、かなり僕好みの変り種タイトルを数多くリリースしているアルバトロスから『善き人のためのソナタ』です。アルバトロスだけに無茶な映画なのかと思いましたが、かなり硬派な作品でした。アカデミー外国語映画賞を受賞したドイツ映画です。

ベルリンの壁崩壊5年前の東ドイツ。反社会主義的人物を監視する国家保安局に勤める男は、ある芸術家カップルを監視しているうちに彼らの愛する文化や思想に触れ、彼らを救いたいと思うようになってしまい……。作品以上にこの主人公の役柄にはもの凄いリアリティがあります。主演のウルリッヒ・ミューエは、本当に東ドイツ出身の俳優で、東西ドイツ統合前は、自分に妻の密告により政府の監視下にあったという人物なのです。

ほんの20年前に、世界がこのような自由のない状況にあったという事実の前で、呑気に「この夏はトランスフォームしたい」などと妄想している自分が恥ずかしくなって、シュンとしてしまいました。この作品はハリウッドリメイクも決定しているとの事なので、きちんと正座しながら待ちたいと思います。

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション
アルバトロス
発売中 5,040円

今回、いつもと趣きを変えて映画DVDを紹介してみましたが、変な汗をかきました。慣れない事をしたせいでしょうか、エアコンがないせいでしょうか。どちらにしても、違う事をしても、なかなか人って簡単には変われないんですね。いつものように、各作品の変な部分ばかり楽しんでいたような気もします。これで良かったのかと疑念まみれの夏が過ぎてゆきます。

今度は、バラエティDVDコラムで会いましょう。