幌を空けて気持ちよい季節になった。目の前に広がる素晴らしい景色や心地よい風を感じながらのドライブがオープンカーの最大の魅力だろう。そこで『日本百名道』『絶景を走る 日本百名道』の著者で、日本の道の知り尽くしている須藤英一氏にお願いし、オープンカーにお勧めの道を10本選んでいただいた。晴れた日に、ぜひドライブに行ってみよう。[写真・文:須藤英一]

道道106号線 サロベツライン(北海道)

天塩町の天塩川の河口から稚内へ向かう道道106号線(サロベツライン・オロロンラインとも呼ぶ)は、日本最北の原野を走るシーサイドライン。美しい花が咲き乱れるサロベツ原野と利尻礼文が浮かぶ日本海にはさまれた平原を、真っ青な地平線に向かって走る快感はいかにも北海道らしい最果て気分を満足させてくれる。電柱もガードレールも何もない道で、横にはただ日本海が広がるだけ。飛ばすもいいし、ゆっくり走っても楽しい。

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八幡平アスピーテライン(秋田県/岩手県)

岩手県と秋田県にまたがる八幡平を横断する山岳道路(県道23号)。全線にわたって展望がよく、快適でダイナミックな走りが楽しめる。東北でもトップクラスのワインディングロードだ。岩手側は岩手山の眺めがよく、秋田側は夕陽が美しい。また秋田側は日本でも有数の温泉地帯になっている。(冬季封鎖:11月上旬~4月下旬)

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霧降高原道路(栃木県)

日光表連山の東側に広がる高原地帯が霧降高原だ。四季を通じていろいろな自然と親しむことができる。色とりどりのツツジが咲く春のつつじガ丘、ニッコウキスゲが一面に咲き乱れる初夏のキスゲ平、秋の紅葉も美しい。この高原を南北に走るのが霧降高原道路(2006年9月から通行無料)。北側は牧草地帯で白い柵に囲まれたなだらかな丘陵に白樺の木が立ち、牛があちこちでのんびりと草を食んでいる。(冬季封鎖:雪通行止め有り)

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九十九里有料道路(千葉県)

千葉県房総半島東岸の太平洋に面している約60キロの海岸が九十九里浜だ。この砂浜と太平洋を眺めながら走るのが全長17kmの九十九里有料道路。通称「波乗り道路」も呼ばれ、潮の香りを受けながらオープンカーで走るのは最高の気分。途中のパーキングに車を止めて砂浜に降りることもできる。

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ビーナスライン(長野県)

白樺湖から美ヶ原まで、信州を代表するビーナスラインはかなり長い観光道路だ。そのためそれぞれの場所で変化に富んだ眺めが楽しめる。展望が最もいいのは白樺湖から霧ヶ峰間。緑一面の草原の中腹を走り抜ける道は適度に曲がりくねって走っても楽しい。そして南側の展望が良く、途中の富士見台からは八ヶ岳、富士山、南アルプス、御岳、北アルプスと中部地方の主だった山が全て見渡せる。(冬季封鎖:11月上旬~4月下旬)

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なぎさドライブウェイ(石川県)

全長8kmにも及ぶ千里浜の波打ち際を走る道が「なぎさドライブウェイ」だ。世界的にも珍しい硬質の砂浜は、海水を含むため舗装道路のように固くなっていて、普通の車でも十分走ることができる。観光バスやタクシーも平気で走っている。舗装路でもない雪道でもない、潮風を受けながらまるで滑るような感覚で車を走らせるのは本当に気持ちがいい。

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高野龍神スカイライン(和歌山県/奈良県)

霊峰高野山から和歌山県の最高峰護摩壇山を経て、美人の湯とうたわれる龍神温泉にいたる、42kmの山岳道路(国道371号)。一年を通して走ることができるのは気候が温暖な紀伊半島にあるからだろう。山岳道路といっても荒々しさはなく、和歌山県と奈良県の県境の森林を走るため展望がいいわけではない。しかし適度なアップダウンとコーナーで紀州木の国の原生林の山中をたっぷりと快走できる。

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角島大橋(山口県)

山口県の北西に位置する豊北町角島。ここに架かる橋が今新たな観光名所となっている。この角島大橋は長さが1,780mしかないが、その美しさは日本中のどの橋にも負けない景観となっている。吊り橋と違ってロープがないので視界が広く、高さも低いので青い海原の上を走っている気分が味わえる。

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足摺サニーロード(高知県)

日本で最初に黒潮が訪れる土佐清水は遠洋漁業の基地としても有名。ここから海岸沿いを西へ向かう国道321号線は、足摺サニーロードと名付けられた快適なシーサイドラインだ。雄大な黒潮を眺めながら海の美しさを満喫する道で、日本でも最も早く春を感じるところではないだろうか。途中、叶崎には小さなかわいい灯台があるので休むといい。太平洋の荒波うち寄せる断崖の上で、気分も爽快になる。

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阿蘇登山道路(熊本県)

阿蘇山は熊本県と大分県にまたがった活火山で世界最大級のカルデラ。その中央火口付近まで北西南と3方向から上る道が阿蘇登山道(県道111号と県道298号)だ。阿蘇の南側、白水村から上るのが吉田線で眼下に白水村の美しい田園風景が広がる。田植えの頃の光る水田もいいが、秋の黄金色の田んぼも美しい。周囲は牧場となっていて緑の草原が広がる。阿蘇の中では観光客が少なくのんびりと静かに阿蘇ドライブが楽しめる道だ。

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プロフィール

須藤英一 1956年生まれ。東京写真専門学校卒。アバコ撮影スタジオを経て'81年独立。'86年から雑誌『アウトライダー』にて、ツーリング写真の撮影を開始。1994年、写真集『touring scene』を発売。主な著書に『日本百名道』『絶景を走る 新版 日本百名道』(共に大泉書店)がある。日本舞台写真家協会会員。
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