この半導体ニュースのまとめ

・TSMCの魏哲家 会長兼CEOが2026年第2四半期決算説明会でAI需要の長期成長に強い自信を示した
・エージェンティックAIの台頭でCPU需要も拡大し、x86、Arm、RISC-Vの各顧客を抱えるTSMCに追い風
・N3の台湾・日本・アリゾナ展開、A14/A13/A12ロードマップ、先端パッケージング増強でAI需要に対応

TSMCは7月16日、2026年第2四半期決算説明会を開催し、同四半期の好調な売上高や利益を示した。その後、同社の魏哲家(C.C.Wei)会長兼CEOが機関投資家からの質疑応答を行い、これからのAI需要に対する自信の強さを見せた。同氏の発言から、TSMCがこれからどういった方向に向かおうとしているのか読み解いていく。

TSMC 2026年第2四半期決算説明会で今後の戦略について説明する魏哲家(C.C. Wei)  会長兼CEO(中央) (出所:TSMC決算説明会ビデオから著者がスクリーンショット)

今後複数年にわたるAIメガトレンドを確信

魏会長は今後のAI需要に関して、「AI関連の需要は引き続き極めて堅調である。AIというメガトレンドは、ますます多くの演算能力へのニーズを牽引し続けており、これが最先端シリコンに対する堅調な需要を支えている。当社の顧客、およびその顧客であるクラウドサービスプロバイダー(CSP)からは、引き続き強いシグナルと前向きな見通しが示されている。したがって、当社は複数年にわたるAIのメガトレンドに対する確信を依然として強く持っている」と述べた。

世界中のAI半導体サプライヤを顧客として抱える同社は、そうした半導体ベンダならびに、その先の顧客であるCSPと常に情報交換を行ってきた結果として、AI需要は今後も当分続くとの確信を持ち、増産に向けた投資計画を実行に移している。魏会長は質疑応答の中、何度も繰り返してAI需要の今後の成長を強調している。

TSMCに有利に働くエージェンティックAIの台頭

またエージェンティックAIの台頭については、「AI市場は依然として非常にダイナミックな動きを見せている。エージェンティックAIの台頭により、AIデータセンターにおけるCPUの役割が再評価されており、AIアクセラレータに加え、シリコン需要のさらなる拡大につながっている。x86、Arm、RISC-VのいずれのCPUアプローチが採用されようとも、そのほぼすべてがTSMCの顧客であるため、これはTSMCにとってプラスになると考えている。当社はすでにCPU顧客と緊密に連携し、彼らがエージェンティックAI市場の機会を捉えられるよう、最先端の技術と必要な生産能力で支援に取り組んでいる」と述べた。

厳格な生産能力拡大計画により設備投資を増額

さらに自社の生産能力の拡大戦略については、「長期的な半導体市場全体の需要が構造的に増加している状況に対応するため、TSMCは顧客および顧客の顧客と緊密に連携し、生産能力の計画を立てている。最先端技術の根本的な複雑さや、それに伴う設計導入期間およびリードタイムを考慮すると、当社は顧客の複数年にわたる製品ロードマップや生産計画についても、非常に明確に把握している。これは、技術や製品の開発、生産能力の準備、そして量産体制への移行には5年以上を要することを考えれば重要な点である。TSMCでは社内で、トップダウンおよびボトムアップの両方のアプローチから市場需要を評価するための厳格な生産能力計画システムを採用している。これに基づき、顧客の将来の成長を支えるため、生産能力を拡大するべく設備投資を強化している」と述べている。

台湾に13の最先端工場を建設へ

既報の通り、同社はアリゾナ拠点に対して1000億ドルの追加投資を発表しているが、「同時に、今後数年間で台湾に13の最先端プロセスおよび先端パッケージング工場を建設する予定であり、台湾への投資をさらに継続する。したがってTSMCの(台湾域内での)半導体技術と製造は、顧客のイノベーションを促進しつつ、世界の半導体産業を支える上で引き続き極めて重要な役割を果たしていくことになる」と述べ、台湾が最重要地域であることを強調している。台湾では、TSMCが台湾を見捨てて米国へ行ってしまうのではないかと心配する向きがあるが、台湾政府の指導もあり、先端研究開発と先端品の最初の製造を台湾で行うことにしていることを改めて明確にした形で、台湾の人々を安心させることを狙った発言と思われる。

N3は台湾、日本、アリゾナの3か所で量産を計画

プロセス関連については、現在進行中のN3(いわゆる3nm)プロセスの生産能力拡大として、「3nmプロセスは複数年にわたって堅調な需要が見込まれていることを踏まえ、台湾に1カ所、アリゾナに1カ所、日本に1カ所の計3つの工場を追加するというグローバル計画を順調に実行している。これらの新規工場に加え、台湾では3mの生産能力確保に向けて、5nm(N5)向け設備の転換も継続している。また、これまでに蓄積した製造ノウハウを活かし、すべての拠点のファブ全体で生産性のさらなる向上を進めているほか、N7(7nm)、N5、N3の各プロセスノード間で柔軟な生産能力の調整を行うなど、ノード横断的な生産能力の最適化にも注力している」と述べ、今後、7nmおよび5nmの売り上げが減少し、代わりに伸びていくことが期待される3nmへの転換を含めて注力していくとするほか、2026年第2四半期より売り上げに寄与し始めた2nm(N2)についても、長期的には大きく成長するとの期待を示している。

A14のリスク生産は2027年に開始、量産は2028年を予定

N2の次となるA14(いわゆる1.4nmプロセス)の進捗状況については、「最先端技術の複雑さは増し続けている。A14のような新技術を開発し、生産能力を構築し、量産体制を確立するまでのリードタイムは、現在では5年から7年を要する。決して近道はない。当社のA14技術は、ナノシートトランジスタの第2世代に相当し、 N2からさらに1技術プロセスノード分の進歩を実現している。これにより、高性能かつエネルギー効率の高いコンピューティングに対する切実なニーズに応える、性能と電力効率の向上がもたらされる。A14は、N2比で同等の電力消費で10~15%の速度向上、あるいは同等の速度で25~30%の電力効率向上を実現し、チップ密度も20%近く向上している。A14技術の開発は予定通り順調に進捗しており、社内の製品レベルの評価用チップでは、デバイス性能が90%近く、256MビットSRAMの歩留まりも90%近くに達した。スマートフォンおよび HPC/AIアプリケーションの両方において、顧客からの強い関心と関与が見られ、顧客による新たなテープアウトも予定より早く進行中である。リスク生産は2027年に開始され、量産は2028年に予定している」と、順調に開発が進んでいることを強調していた。

A13やA12も2029年には生産導入へ

さらに、「機能強化という戦略としては、A14ファミリーの拡張としてA13およびA12の導入も決定している。A13はA14をさらに進化させたもので、6%以上のダイ面積削減を実現している。設計と技術の継続的な共同最適化により、性能と電力効率のさらなる向上も実現しつつ、設計ルールはA14と互換性を有し、スムーズなIP移行を保証している」とするほか、その先のA12についても、「革新的な『スーパーパワーレール』技術を導入し、優れた性能、消費電力、および面積の利点をもたらす」ものとなると説明。A13とA12のいずれも、2029年に量産開始を予定しており、技術的リーダーシップをさらに拡大していくものとなるとの自信を見せている。

競合であるIntelやSamsung Electronics(サムスン)がプロセスの微細化で苦戦するなか、TSMCはA12に至る明確なロードマップを実行に移していくことで、存在感をこれまで以上に増すことを確信しているようである。

IntelのEMIB-TはTSMCの競合になりうるのか?

機関投資家からの「競合の1社であるIntelの先端パッケージング技術『EMIB-T』が注目を集めているようだが、TSMCはこの需要にどのように対抗するつもりか?」との質問に同氏は、「現在のTSMCのパッケージング生産能力は非常に逼迫しており、顧客の成長を制限してしまっている状況である。したがって、市場にさらなる柔軟性が生まれることは歓迎すべきことであり、TSMCの事業の大部分を占めるフロントエンドのウェハ事業の成長にも寄与するだろう。報道によると、Intelのその技術は有望に見える。彼らが成功し、TSMCの負荷の一部を分担してくれることを期待している」と回答をした。

現状でTSMCで前工程を行ったウェハを(TSMCの先端パッケージングラインが満杯のため)、Intelでパッケージングするケースが増えている。それでもTSMCでは、自社の前工程の売り上げが伸びることから、そうした対応も歓迎するとしている。TSMCは、先端パッケージング工場の増設を進めているが、それでも供給が需給に対して間に合っておらず、同社にとっての現在の最大の課題となっている。

このほか、大口顧客による注文が集中することに対するリスクについて魏会長は、「それは懸念事項ではない。一部の顧客はますます注文の規模を拡大しているが、当社はそれを大変喜ばしく思っている。ほかの顧客も極めて急速に成長している。大口顧客だけがますます大きくなっているという状況ではなく、AI業界には多くの新規参入企業が存在して底辺を広げているということ認識」と回答するなど、AI分野の拡大がTSMCの成長につながっていることを強調していた。TSMCの今回の決算は予想を上回るレベルの業績を達成し、今後の見通しも市場予測を上回るなど、魏会長の自信に満ちた発言は、そうした手ごたえの手堅さがあるものと思われる。