この半導体ニュースのまとめ

・ロームのSiC MOSFETがBMWの次世代EVコンセプト「Neue Klasse」に採用
・BMWの第6世代電動パワートレインの高効率化、高性能化、高信頼化に貢献
・電力変換損失を抑え、EVの航続距離や充電性能、エネルギー効率の向上を支援

ロームは9月17日、同社のSiCパワー半導体が、BMWの次世代電気自動車(EV)コンセプト「Neue Klasse」の電動パワートレインに採用されたことを発表した。

採用されたSiC MOSFETは、BMWが開発した第6世代の電動パワートレイン技術に用いられ、厳しい車載環境で高いエネルギー効率と安定した動作を実現する。電動パワートレインの高効率化、高性能化、高信頼化を通じ、航続距離や充電性能、車両全体のエネルギー効率の向上に貢献するとしている。

今回の発表では、採用されたSiC MOSFETの型番や世代、搭載する具体的な機器、供給数量などは明らかにされていない。

  • ロームのSiC MOSFETを採用したBMWの次世代EVコンセプトNeue Klasse

    BMWの次世代EVコンセプト「Neue Klasse」。ロームのSiC MOSFETが第6世代の電動パワートレイン技術に採用され、高効率化、高性能化、高信頼化に貢献する (出所:ローム、(C)BMW AG)

800V化を進めるBMWの第6世代eDrive

Neue Klasseは、BMWが次世代EVに向けて開発した新たな車両コンセプトで、第6世代の電動パワートレイン技術「BMW eDrive」を採用する。

BMWは第6世代eDriveで800Vの高電圧システムを導入するほか、従来の角形電池から円筒形電池へ移行する。新たな高電圧バッテリーと電動パワートレインを組み合わせ、充電速度と航続距離をそれぞれ従来比で30%高めることを目指している。

EVの高電圧バッテリーに蓄えられた直流電力は、インバータによって交流へ変換され、駆動用モーターへ供給される。電力変換時に生じる損失を抑えられれば、同じバッテリー容量でも走行に利用できる電力を増やし、航続距離の延長につなげることができる。

充電時にも、バッテリーへ大きな電力を効率良く供給する必要がある。800V化によって同じ電力をより小さな電流で扱えるようになる一方、電力変換を担うパワー半導体には、高耐圧、低損失、高速スイッチング、高温動作への対応が求められる。

SiC MOSFETで電力変換損失を低減

SiCは、シリコンと比べて絶縁破壊電界や熱伝導率に優れる化合物半導体材料である。SiC MOSFETをEVのインバータなどへ用いることで、電力変換時に発生する導通損失とスイッチング損失を抑えられる。発熱を減らすことで冷却システムを小型化できる可能性もあり、車両の軽量化や搭載スペースの確保にもつながる。

ロームは、SiCウェハ、SiCパワー半導体そしてパワーモジュールまでをグループ内で手掛ける垂直統合型の供給体制を構築し、車載・産業機器向けにSiC製品を展開している。

今回の採用では、SiC MOSFETがBMWの電動パワートレインにおける主要なパワーエレクトロニクス機能を支え、車載環境でのエネルギー効率と動作安定性を確保する役割を担っている。

欧州自動車メーカーへのSiC展開を強化

EVの航続距離や急速充電性能を高めるため、自動車メーカーでは400Vから800Vクラスの高電圧システムへ移行する動きが進んでいる。

高電圧化に伴い、駆動用インバータや車載充電器、DC-DCコンバータなどでSiCパワーデバイスを採用する機会も増えている。ただし、車載半導体には長期間の供給に加え、温度変化や振動などの厳しい環境で安定して動作する品質と信頼性が求められる。

ロームは今回のBMWへの採用を、車載パワーエレクトロニクス分野におけるSiC技術と品質、信頼性が評価された成果と説明しており、今後も自動車メーカーやTier1サプライヤーとの連携を進め、SiCパワーデバイスを通じて電動パワートレインの電力変換効率を高めていくことで、EVの航続距離や充電性能の向上を支援し、モビリティの電動化と脱炭素化につなげていくとしている。