この半導体ニュースのまとめ
・InfineonがNORフラッシュおよびFRAM事業をWinbondへ11億2000万ドルで売却
・対象事業は車載、産業、インフラ市場向けで、2027年下期の取引完了を予定
・SRAM、HYPERRAM、nvSRAM、耐放射線メモリなどの特殊メモリ事業は継続
Infineon Technologiesは9月16日、同社のNORフラッシュおよびFRAM事業を、台湾の半導体メモリメーカーであるWinbond Electronicsへ売却する最終契約を締結したことを発表した。
取引額は現金11億2000万ドルで、現金および有利子負債を除いた企業価値を基準とする。必要な規制当局の承認などを経て、2027年下期の取引完了を予定している。
旧Cypressのメモリ事業を売却
売却対象は、Infineonが車載、産業、インフラ市場向けに展開するNORフラッシュおよびFRAM事業となる。これらの事業はもともとInfineonが2020年に買収を完了させたサイプレス(Cypress Semiconductor)の事業(さらに遡れば、NORはFASL/Spansion、FRAMはExcelonを買収して事業を拡大してきた)。2020年の買収完了当時、当該メモリ事業については、Infineon Technologies AGの子会社Infineon Technologies, LLCとして分離されており、今回の売却は、その子会社取り扱い分となる。それ以外のSRAM、HYPERRAM、nvSRAM、SONOS技術を用いた耐放射線メモリなどの特殊メモリ製品は本社で取り扱ってきたこともあり引き続きInfineonとして展開する予定としている。
NORフラッシュは、電源を切ってもデータを保持できる不揮発性メモリの一種で、プログラムを保存したメモリに対してバイト単位で直接アクセスできる点を特徴とする。NANDに比べて容量は少ないものの読み出し速度が速いことから、主にNANDほど容量を必要としない車載制御システムや産業機器、通信インフラ機器などのデータ格納用途などで利用されてきた。
一方のFRAMは、強誘電体を利用した不揮発性メモリで、高速な書き込みや高い書き換え耐性、低消費電力を特徴としており、稼働履歴や計測データを頻繁に記録する車載・産業機器、スマートメーターなどに向けて提供されてきた。
Infineonは今回の売却を通じ、事業ポートフォリオと資本配分を中核的な成長領域へ集中させる考えである。
Spansionブランドを復活させるWinbond
Winbondは、NORフラッシュやDRAMなどのメモリ製品を展開してきた老舗メモリメーカー。Infineonから取得するNORフラッシュとFRAMを自社の製品群へ加えることで、車載、産業、インフラ市場における製品ポートフォリオと顧客基盤を拡大することを狙うが、取得する事業は、米国シリコンバレー(サンノゼ)に本社を置く独立した事業体として運営する計画で、Spansionブランドを復活させるという。
車載機器や産業機器では、製品の開発から量産、保守までの期間が長く、搭載する半導体にも長期供給と高い信頼性が求められる。WinbondはInfineonの製品群と顧客基盤を引き継ぎ、既存製品の供給を継続しながら事業拡大を図るという。
Infineonは中核的な成長領域へ経営資源を集中
Infineonは、今回の事業売却によって得られる資金を活用し、中核的な成長分野への投資を進める方針としている。現在の同社はパワー半導体を軸に、マイコンやセンサ、セキュリティ、無線などを組み合わせて、AIデータセンター、自動車、再生可能エネルギー、産業機器、IoTなどの市場での成長を目指している。
中でもAIデータセンターや車載関連は高い成長性が期待される一方、NORの市場規模は米国の市場調査会社LP Informationによると、2025年で33.29億ドル、2026年は34.96億ドルの予測で、2032年に47.66億ドルへと成長することが見込まれているものの、Infineonの注力事業と比べて成長率が低いこともあり、研究開発や設備投資などの経営資源の集中ということを鑑み、今回の売却に至ったものと思われる。
2027年下期の取引完了を予定
売却の完了には、各国・地域の規制当局による承認などが必要となる。両社は必要な条件を満たしたうえで、2027年下期に取引を完了する予定である。
Winbond自身も以前よりNORを手掛けてきており、トップクラスのシェアを有している。近年は中国勢の追い上げがあるものの、AI需要の拡大でプログラム格納用途を中心に需要が拡大しており、今回の事業買収で、製品ポートフォリオの拡充とグローバルでの事業展開の拡大につなげ、さらなる事業拡大を狙うこととなる。また、Winbondはグループとして傘下にNuvotonも有しており、そこにSpansionというブランドが加わることとなることから、各社のシナジー創出なども期待され、それによる新規用途の開拓などがこれまで以上に進むことが期待されることとなる。
