エアバスUSスペース&ディフェンスが2025年10月に、米陸軍協会の年次会合で、米海兵隊のALC(Aerial Logistics Connector)計画向けに開発を進めている無人輸送ヘリコプター・MQ-72Cラコタ・コネクタに関する展示を実施した。前回に取り上げた、シコルスキーのU-Hawkと、似たところもあり、似ていないところもあり。では、MQ-72Cはどんな機体なのか。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照

  • エアバスが2025年10月に構想を明らかにした、MQ-72Cラコタ・コネクタ 撮影:井上孝司

    エアバスが2025年10月に構想を明らかにした、MQ-72Cラコタ・コネクタ 撮影:井上孝司

H145ベースだからできる「前後から積み下ろし」

MQ-72Cは、エアバス・ヘリコプターズ製H145をベースとする機体。だから「U145」という別名もあるようだ。

H145は、すでに軍民の双方で多くのカスタマーを抱えている機体だから、導入コストだけでなく、運用コストも抑えられると期待できる。アメリカの場合、H145から派生したUH-72ラコタを州兵などで多数導入しているから、そちらとの共通性もある。

  • 米陸軍で運用しているUH-72ラコタ。外部塗装をオリーブドラブに改めたH145という風体 Photo : US Army

    米陸軍で運用しているUH-72ラコタ。外部塗装をオリーブドラブに改めたH145という風体 Photo : US Army

そのH145を無人貨物輸送ヘリに仕立てる際に、もともと備えている後部の両開きクラムシェル型ドアに加えて、コックピットを撤去した機首にも両開きの扉を設置するとしている。コックピットを貨物室に転用するとともに前面に扉を設けるところは、前回に取り上げたシコルスキーのU-Hawkと同じだ。

H145は、もともと胴体後部にクラムシェル型のドアを備えていることから、担架のような長尺モノを搭載・卸下するのに具合が良い。側面のスライドドアを開いて担架を出し入れするよりも、後方からまっすぐ出し入れする方が作業しやすいのは容易に理解できる。

H145や、ひとまわり小型のH135がドクターヘリとして多用される理由のひとつに、それがあると考えられる。ただし、テイルローターに接触しないように注意しなければならないが。

さらに、無人化に際してOPA(Optionally Piloted Aircraft、つまり有人・無人兼用)の選択肢を切り捨てることで、コックピットを撤去できる。すると、コックピットの跡地に両開きの扉を設置できる。すると、キャビンの前後に扉があり、機内を通り抜ける形で貨物の積み下ろしができることになる。左右の側面にスライドドアを備えているだけで、キャビンの後方にドアを持たないH-60一族とは違う、H145ベースならではの特徴といえる。

MQ-72CとU-Hawk、大きさは2倍以上違う

U-HawkのベースになっているH-60シリーズは、軍用ヘリコプターの中ではどちらかというと“高級”な機体だから、導入に際しての敷居は相応に高い。価格が高いだけでなく、機体規模もけっこう大きい。

すると、アメリカの陸海空軍みたいに、すでに大量のH-60を運用している場合はともかく、H-60の導入実績がないところで新たに入れるには敷居が高いと感じられるかも知れない。では、MQ-72Cはどうか。

エアバス・ヘリコプターズが公表しているデータによると、MQ-72Cは全長44.42ft(13.54m)、全高13.04ft(3.97m)、最大離陸重量8,378lb(3,803kg)。そのMQ-72CのベースモデルであるH145の空虚重量は1,895kg、最大離陸重量は3,800kgだから、差分は1,905kg。これを燃料と積荷で分け合うことになる。ただ、無人化すれば操縦士は乗らないから、正副操縦士2名分の体重に相当する分だけ、搭載量を増やせるかも知れない。

また、H145のキャビン容積は、6.03立方メートルとなっている。人員輸送に充てる場合、キャビンは8人乗り仕様と10人乗り仕様がある。キャビンの前後端に向かい合わせで3人分ずつのシートがあり、8人乗りだとその中間に前方向きと後方向きを1脚ずつ、10人乗りだと中間の左右に向かい合わせで2人掛けを1脚ずつ、というレイアウト。

一方、U-HawkのベースになるUH-60Mは、全長がローター込みで64ft10in(19.76m)、全高が16ft10in (5.13m)、最大離陸重量が22,000lb(9,979kg)。最大離陸重量を基準にして比較すると、機体規模が2倍以上違うことになる。

こうしてみると、MQ-72CはU-Hawkより小型な分だけ搭載量も少ない一方で、運用に関わるフットプリントが小さい利点もあるといえる。そして、前述したように民間型のインストールベースが大きいし、アメリカでは陸軍が大量に導入している。すると、それを活かして安価に運用できるとの期待が持てる。

同じ「無人輸送ヘリ」でも狙いは違う

つまり、U-HawkとMQ-72Cは、同じ「無人輸送ヘリ」でもカテゴリーが違う機体であり、直接的には競合しないのではないか。より小型でお手軽に、ローコストで取得・運用できて、しかも無人で飛ぶから人命を危険にさらさなくても済む。そんなニーズにハマる機体といえるかも知れない。

無人の貨物輸送手段というと、イギリス海軍が空母の艦上で実際に試している、マロイ・エアロノーティクス製T-150みたいなマルチコプターの事例もある(これについては後の回で取り上げる)。それと比べると、MQ-72Cの方が高くつくが、搭載量も大きい。

近距離で少量の貨物を迅速に運びたいというならT-150は好都合な機体だが、もっとたくさん、もっと遠くに運びたいということになれば、MQ-72Cの方が好都合。だからこそ、米海兵隊はALC計画を立ち上げたわけであろう。敵勢力圏内の島嶼を渡り歩く「スタンドイン・フォース」に対して迅速に物資を送り届けるなら、これぐらいの機体は要る。

ちなみに、ノースロップ・グラマンが2005年頃に、MQ-8Cファイアスカウトで貨物輸送を行う構想を明らかにしたことがあったが、これは実現せずに終わった。この構想では、機体の左右に容量250lbのポッドを1基ずつ、さらに機首にも300lbの貨物を搭載可能にして、合計800lbの搭載量をもたせるとしていた。800lbをキログラム単位に直すと363kgだから、機体規模の割にたいした分量ではない。

比較対象をひとつ出すと、ロッキード・マーティンとカマンが米海軍に提案したK-Maxベースの貨物輸送用無人ヘリでは、搭載量は1,500lbとなっていた。ただしこの機体は吊下空輸しかできない。K-Maxがそういう機体だからだ。