この半導体ニュースのまとめ

・富士フイルムがインドに半導体材料工場を新設、約80億ルピーを段階的に投資
・タタ・エレクトロニクスの前工程工場近隣で半導体材料を生産し、安定供給を実現
・現地化学メーカーへの技術支援を通じ、原材料調達から生産までの現地化を推進

富士フイルムと印Tata Electronics(タタ・エレクトロニクス)は9月17日、インドにおける半導体材料の生産体制およびサプライチェーンの構築に向け、提携を強化する基本合意書(MOU)を締結したと発表した。

富士フイルムは、タタ・エレクトロニクスが半導体前工程工場を建設しているインド・グジャラート州のドレラ特別投資地域に、同社としてインド初となる半導体材料工場を新設する。投資額は約80億ルピー(約130億円)で、段階的に現地生産体制を整備する。

  • 富士フイルムとタタ・エレクトロニクスの提携強化に関する基本合意書の締結式の様子

    富士フイルムとタタ・エレクトロニクスの提携強化に関する基本合意書の締結式の様子 (出所:富士フイルム)

2025年5月の提携を踏まえ、現地工場の設立へ

両社は2025年5月、インドにおける半導体材料の生産体制とサプライチェーンの構築に向けたMOUを締結していた

富士フイルムは、タタ・エレクトロニクスのニーズに合わせた半導体材料を開発・提供し、同社が進める半導体製造工場の立ち上げを支援してきたとするほか、インドでの半導体材料工場の設立や、原材料の現地調達に向けた検討も進めてきたという。

今回のMOUでは提携をさらに強化し、検討段階だった半導体材料工場の設立を具体化する。前工程工場の近隣で材料を生産することで、輸送距離と納期を短縮し、タタ・エレクトロニクスの需要に応じた安定供給につなげる。

富士フイルムは、顧客の近くで材料を生産する「地産・地消」に加え、開発、生産、品質管理でも近傍から顧客を支援する「地援」を推進する方針である。

原材料調達から生産までをインドで現地化

具体的には、富士フイルムは、インドの現地化学メーカーに技術支援を行い、半導体向けに求められる高品質な原材料の調達から生産までをインドで行う半導体材料サプライチェーンの構築を目指すとしている。

完成した半導体材料を日本などから輸入するだけでなく、原材料を含めて現地化することで、地政学的なリスクや物流の混乱に対する供給網の強靱化にもつなげるといった狙いが見える。

前工程から後工程まで幅広い材料を展開

富士フイルムは、半導体製造の前工程から後工程までをカバーする材料を展開している。

前工程向けにはフォトレジスト、フォトリソグラフィ周辺材料、CMPスラリー、ポストCMPクリーナー、薄膜形成材料、高純度プロセスケミカルなどを提供する。後工程向けには、ポリイミドをはじめとする感光性絶縁膜材料「ZEMATES(ゼマテス)」などを展開。イメージセンサ向けには、カラーフィルター材料などの「Wave Control Mosaic」製品群も提供している。

今回設立される新工場での生産品目や生産能力、稼働時期は公表されていないが、タタ・エレクトロニクスの前工程工場の立ち上げを支援するという観点から、同工場に適した材料を手掛けるものと思われる。

タタは約1兆5000億円を投じて300mm工場を建設

タタ・エレクトロニクスが進めるインド初の半導体前工程工場は300mm(12インチ)ウェハに対応し、28nm~110nmプロセスノードを用いて、自動車やモバイル機器からAIまで、幅広い用途に向けた半導体を製造する予定となっている。投資額は約9100億ルピー(約1兆5000億円)としている。

インド国内には自動車、スマートフォン、電子機器、通信などの市場が存在する一方、半導体の多くを輸入に依存してきた。インド政府は、前工程工場や後工程拠点の誘致に加え、設計、製造装置、材料、研究開発、人材育成を含む国内エコシステムの構築を進めている。

半導体工場を国内に建設しても、製造に必要な材料や装置を継続的に確保できなければ、工場を安定して稼働させることは難しい。材料メーカーが製造拠点の近隣に進出し、原材料調達や技術支援まで現地化することは、インドが半導体生産拠点として自立性を高めるうえで重要となる。

インドを半導体材料事業の重要市場に位置付け

富士フイルムは半導体材料事業を、全社の成長をけん引する主要事業の1つに位置付けている。

これまで日本、米国、欧州、アジアに製造拠点を整備し、顧客の半導体工場に近い場所から材料を供給する体制を拡大してきた。研究開発力と幅広い製品群を組み合わせ、先端プロセスから成熟プロセス、前工程から後工程までを支援するワンストップソリューションを展開している。

インドでは現在、半導体の前工程工場と後工程工場の両方の建設が急ピッチで進められており、近い将来、現地で消費される半導体材料の需要拡大が見込まれている。富士フイルムもインドを、半導体材料事業のさらなる拡大のための重要市場と位置付けている。

今回、具体的な現地での半導体材料生産に向け、原材料調達から製造、品質管理、顧客支援までをインド国内で結び付けていく姿勢を打ち出したことについて同社では、自社の成長のみならず、インドにおける半導体材料エコシステムの発展にもつながるものであることを強調している。