半導体市場動向調査会社の米IC Insightsは、2019年の半導体業界が行ったM&A(合併および買収)の総額が、前年比22%増の317億ドルに達したとの調査結果を発表した。

この金額は合意あるいは最終交渉段階のものを含んでおり、最終的に各国の規制当局による許可を得て買収手続きを完了してはいないものであるが、同社によると半導体産業の歴史の中で、2015年、2016年に続く3番目の規模になるという。

同社は2019年に30件を超すM&Aの契約合意を確認しているが、その中でも10億ドルを超す案件は7件あり、いずれも業界M&A案件の契約額としてはトップ50に入ってくるものだという。

  1. 歴代9位:独Infineon Technologiesよる米Cypress Semiconductorの買収(94億ドル)
  2. 歴代12位:米NVIDIAによる米Mellanox Technologies の買収(69億ドル)
  3. 歴代18位:オーストリアamsによる独OSRAMの買収(51億ドル、保留中)
  4. 歴代36位:米IntelによるイスラエルのAIチップ開発ベンチャーHabana Labsの買収(20億ドル)
  5. 歴代38位:蘭NXP Semiconductorsによる米MarvellのWi-Fiコネクティビティビジネスの買収(18億ドル)
  6. 歴代45位:米ON SemiconductorによるWi-Fiソリューションのサプライヤー米Quantenna Communicationsの買収(11億ドル)
  7. 歴代46位:米Appleによる米Intelのスマートフォンモデム事業の買収(10億ドル)

この5年間で急激に再編が進む半導体業界

2010~2014年の5年間の年平均M&A額は126億ドルだったが、2015~2019年の5年間の平均額は588億ドルと4.5倍以上に急増している。ただし、2016年に合意がなされた米Qualcommによる蘭NXP Semiconductorに対するM&A案件などは規制当局の承認が得られず後日破談となっているので、これらの成立しなかった案件を差し引くと2015~2019年の年平均額は506億ドルにまで減るが、それでも2010~2014年の平均額の4倍で増加している。

この5年間で目立つM&Aの案件は、機械学習や人工知能(AI)、自動運転車、人物推定、コンピュータービジョン、仮想/拡張現実、IoTへの高速ワイヤレス接続技術などの、成長が期待できそうな分野に対する大企業によるポートフォリオの拡充といったもので、幅広いポートフォリオを擁さねば、複雑化したシステムを手掛けるカスタマニーズに対応できないといった背景を踏まえた技術ベースでの業界再編が急速に進んでいるといえる。

なお、IC InsightsのM&Aリストには、半導体企業、およびその一部の事業部門、開発チームと製品ライン、知的財産(IP)、プロセステクノロジー、およびウェハファブなどのM&Aは含むが、半導体製造装置、材料、チップパッケージングおよびテスト会社(OSAT)、設計自動化ソフトウェア(EDA)企業といった関連産業のM&Aは含んでいない。

  • IC Insights

    半導体産業におけるM&A案件にかかる総額の年次変遷。2010~2014年の年平均額は126億ドルだったが、2015~2019年の平均額は588億ドルに急増している (出所:IC Insights)