この半導体ニュースのまとめ
・GlobalFoundriesがSynopsysのARCプロセッサIP事業の買収を完了
・MIPSと統合し、RISC-Vベースの半導体設計基盤を強化
・自動車や産業用途向けフィジカルAIソリューションを拡充
GlobalFoundries(GF)は6月3日(米国時間)、SynopsysのARCプロセッサIPソリューション事業の買収を完了したと発表した。今回の統合により、同社はMIPSとARCのプロセッサIPを組み合わせた形で、RISC-Vベースの包括的な設計基盤を構築することとなる。
ソフトウェアからシリコンまでの一体化
今回の買収は単なる半導体IPのポートフォリオ拡張という意味合いにとどまらず、プロセッサIP、ソフトウェア、カスタムシリコン、そして半導体製造までを一体化した形のソリューションとして提供できる体制が構築されることを意味するものとなる。
RISC-Vを軸にしたIP統合を推進
取り引きの完了に伴い、ARCプロセッサIP事業は、すでにGF傘下となっているMIPSの一部として、GFのフィジカルAI製品群に統合されることとなる。GFでは、この統合により、ハイパフォーマンス、ミッドレンジ、ウルトラローパワーのコンピューティングおよびAIコアを網羅する幅広いRISC-VプロセッサIPスイートが形成されることになると説明している。
また、買収した製品群の中にはアプリケーション固有命令セット「ASIP(Application Specific Instruction-set Processor)」プロセッサ開発ツールである「ASIP Designer」と「ASIP Programmer」も含まれており、ユーザーはそれぞれのワークロードに最適化された命令セットを持つカスタムプロセッサを設計・プログラミングすることができるようになるともする。
フィジカルAI向け半導体の基盤として整備
GFは今回の買収について、フィジカルAI(Physical AI)分野向けの顧客支援強化につながるものとの考えを示している。自動車、産業用ロボット、組み込みシステム、スマートファクトリー、IoT機器など、実世界でリアルタイムにセンシング、判断、制御、通信を行うシステムにおいて、差別化されたアプリケーション固有のソリューションを構築するために必要な、ソフトウェア、IP、カスタムシリコンの機能を提供することで、総合的なテクノロジーパートナーとして設計サイクル全体を通じて関与できるようになり、顧客との関係性をより深めることができるようになるとする。
単なる受託製造から顧客の価値向上まで支援するファウンドリへ
従来、ファウンドリは半導体の受託製造を中心とした役割を担ってきたが、GFの近年のIP拡充という動きは、単なる高性能デバイスを歩留まり高く製造するという流れから、設計段階からいかに半導体の価値を高めるかという方向にシフトしていることを示す取り組みと見ることができる。
特にAI時代においては、設計(IP)、製造、ソフトウェアの統合により、顧客ごとのニーズに最適化された半導体を提供することが求められる可能性が高い。
GF1社で、アーキテクチャからシリコンまでをワンストップで提供でき、しかもそれによって早期の市場参入、製品の差別化、市場投入までの期間短縮が可能になるということになれば、どうしても先端プロセスを活用しないといけないというニーズがない限りは同社が製造委託先の選択肢に入ってくるように仕向ける仕組みづくりの一環と言えるだろう(GFは14/12nmプロセスで先端プロセス開発を止めており、10nmプロセス以降の微細プロセスを有していない)。
特に、RISC-Vはオープンソースであるため、実際のビジネスで活用しようと思えば、サポートしてくれる存在が居てくれる方がメーカーサイドにとっては安心材料となる。しかも、それが製造能力を持っているということになれば、設計と製造のすり合わせが容易になることも期待できるようになる。GFは、そうしたメリットを今後、車載用途や産業用途を中心としたフィジカルAI分野に向けて打ち出していくことで、競争力の強化を図っていくものと思われる。