この半導体ニュースのまとめ

・住友ベークライトがガラス転移温度230℃を実現したSiCパワーモジュール封止材の量産を開始
・高耐熱化と低応力化を両立し、剥離やクラックの抑制に寄与
・xEVやデータセンター向けSiCモジュールの小型化と高出力化を支援

住友ベークライトは6月1日、次世代SiCパワーモジュール向けの固形エポキシ樹脂封止材料「EME-G785シリーズ」を開発し、量産を開始したと発表した。エポキシ樹脂封止材料としてガラス転移温度(Tg)230℃を実現したことが特徴で、同社では世界最高クラスの耐熱性を備えるとしている。

  • 「EME-G785シリーズ」

    住友ベークライトの「EME-G785シリーズ」 (出所:住友ベークライト)

封止材が課題になっていたSiCの高温動作

xEVやデータセンター、再生可能エネルギー分野では、電力損失を抑えられるSiCパワー半導体の採用が進んでいる。SiCパワー半導体は200℃を超える高温領域でも動作可能とされる一方、それを保護する封止材料には従来の材料では実現が難しい耐熱性と信頼性が求められてきた。

一般にエポキシ樹脂はTgを200℃以上へ高めようとすると架橋密度の上昇に伴って弾性率(硬さ)が高まり、ヒートサイクル時に応力に起因する剥離やクラックが発生しやすくなるという課題があった。高Tg化と低応力化の両立が難しいため、Tgの値は達成できたとしても、実用化という面では困難とされてきたという。

Tg230℃と低応力化を両立

今回、同社が開発したG785シリーズは、樹脂の主鎖骨格を剛直化し、架橋密度を最適化することで、Tg230℃を達成しつつ、独自の低応力化技術により弾性率の上昇を抑制し、高耐熱化に伴う応力増加というトレードオフを解消したとしている。

これにより、パワーモジュール内部のひずみを最小限に抑えることができるようになり、チップや基板との界面剥離、樹脂自体のクラック発生の抑制ができるようになったとする。高温域でも物理特性を維持しながら、長期的な絶縁信頼性を確保できる点が特徴となる。

モジュールの小型化と高出力化に寄与

同材料は、高い耐熱性を活かしてシンタリング材やはんだを用いた冷却器との接合にも対応可能としている。これにより放熱性の向上が期待でき、結果としてパワーモジュールの小型化と高出力密度化につながることが期待できるという。

SiCチップそのものが持つ高温・高効率特性をモジュールレベルで引き出すためには、チップだけでなく封止材や接合材を含めた周辺材料の進化が不可欠であり、今回の材料はそうした構造革新を支える位置付けとなる。

2030年度に売上高100億円を目指す

パワーモジュールはこれまで、チップ性能や接合技術の高度化に注目が集まっていたが、SiCの高温動作を活かすためには封止材料の性能向上がその前提条件となっていた。G785シリーズの発売は、封止材の競争軸が単なる絶縁や保護から、高温対応と低応力による実装信頼性確保へ移っていることを示すものといえる。

実際、同社では、G785シリーズを次世代パワーエレクトロニクス向けの戦略製品と位置付けており、2030年度に売上高100億円を目指すとしている。今後も材料開発を通じてパワーモジュールの構造革新を支えていくとしており、さまざまな分野での省エネルギー化につなげていきたいとしている。