来日し、記者会見を行った俳優のハビエル・バルデム

『ノーカントリー』で第80回米アカデミー賞助演男優賞を受賞したハビエル・バルデムが初来日し11日、都内のホテルで会見した。

受賞作『ノーカントリー』は、ジョエル・コーエンとイーサン・コーエン監督による最新作。アメリカ西部・テキサスを舞台に、狩りの途中で偶然に大量のヘロインと200万ドルを発見した男・モス(ジョシュ・ブローリン)が、その金を奪ったことで殺し屋から命を狙われる羽目になり、保安官・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)や警察も巻き込みながら逃亡するというサスペンスだ。

冒頭でバルデムは、メモを見ながら「コンニチハ、ハビエル・バルデムデス。『ノーカントリー』、ミテネ」と日本語で挨拶し、「まだ10時間しか経っていないから、まだ何とも言えないけど、日本の方はみんな礼儀正しいね。こうやって、素晴らしい映画を応援するために日本に来れて光栄だよ」と感想を。同作で初のオスカー受賞となったバルデムは「(授賞式では)ドキドキしたね。受賞したら、スピーチしなきゃいけないから、何を話そうか、そればかり考えていたよ。スペイン語で母親にメッセージを送ることができたから、よかった」と振り返りながら喜びを語った。

メモを読み上げながら挨拶するバルデム

同作でバルデムは、殺し屋アントン・シガーを演じている。おかっぱ頭が不気味で、強烈な役柄だ。「ある日トミーが、30年くらい前に撮られた、アメリカとメキシコの国境の写真を持ってきたんだ。そこに写っているおかっぱ頭の男を見て監督が『いいね! これでいこう』と言い出したんだよ。僕は面白いとは思わなかったんだけどね(笑)」と苦笑い。それでも「この人物が持つ一種の神話的なものに導かれた暴力というものに興味がわいてね。僕自身は、暴力は好きじゃないんだけど、シガーの暴力に哲学的な広がりがあったから演じようと思ったんだ」と、同作への出演を決めた理由を交えながら、シガーのキャラクター誕生秘話を披露した。

コインの裏表で殺しを決めるシガーは、モスを執拗に追う。その結末の行方は……
(C)2007 Paramount Vantage. All Rights Reserved.

コーエン兄弟の監督作品のファンというバルデム。「『ブラッド・シンプル』(1985年)を見て衝撃を受けたね。いつか、一緒に仕事をしたいと思ってはいたけど、英語を喋れなかったし無理だろうって。だから、ほんと『選んでくれてありがとう』という思いでいっぱいだよ」と監督へ感謝の言葉をかける。また、撮影エピソードについて聞かれると「撮影自体に苦労は一つもなかった。監督の方針について誰も疑問を持たなかったし、リラックスして演じられる現場だったよ。あえて苦労したところと言えばあの髪型で日々暮らすことぐらいかな(笑)」と絶賛。加えて、「彼ら(監督)は、ケンカもはしないし、いつの間にか二人の間で合意に達している。これは恐ろしいよ。それに、とても静かな男たちで、普段からあまり喋らない。でも、質問することはできたので(笑)、現場ではしつこく質問した。嫌がらずにすべて応えてくれたよ」とコーエン兄弟のキャラクターも披露し、会場を笑わせた。

カメラマンのリクエストにも気さくに応える

これまでも、カストロ政権下のキューバで、ホモセクシャルであるために迫害された作家レイナルド・アレナスの自伝映画『夜になるまえに』(2001年)では主演し、主演男優賞にノミネート。今回、満を持しての受賞となったが、バルデムは「『オスカー』を獲ったから最高というわけではないよ。受賞から距離を置いて見つめることも必要なんじゃないかな」と、クールな一面も見せる。

『ノーカントリー』は3月15日より全国ロードショー

最後にバルデムは「『ノーカントリー』は、人の手が入っていないというか、"弄られていない"映画。これはコーエン監督だけが作れるものだよ。一つ一つ綿密に計算されていて、それを現場で映像化できた彼らは素晴らしいし、出来上がった作品もクリーン。みんなにも是非見てほしいね」と締めくくった。