家事・育児を夫婦で”一緒にする”ことが、浸透しつつある昨今。2人だからこそ、スムーズにこなせることも多いですが、お互いの認識の「ズレ」にもどかしさを覚える方もきっといるはず。

例えば、食器洗いひとつとってみても、片方が「食器を洗えばOK」と思っているのに対し、もう片方は、食器を洗って、シンクを掃除して、フキンを変える……までが全ての行程と認識している場合もありますよね。

本連載では、そんなタスク前後工程での夫婦のすれ違いを『ズレ家事』『ズレ育児』と称し、「なぜ起こるのか」「どうすれば解消するのか」を様々な分野の専門家をゲストとしてお招きし、共に考えていきます。

今回は、ライフオーガナイザーの橋本智子さんに、心と空間の片付けサポートを通して気づいたズレ家事、ズレ育児の解消法をお伺いしました。

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Talk to ... 橋本智子
ライフオーガナイザー、メンタルオーガナイザー

ワーキングマザーとして片付けに試行錯誤した経験をもとに、2016年よりオーガナイズサービスを開始。個人宅の整理収納サポートや、オンラインでの片づけマンツーマンレッスン、心を整えるメンタルオーガナイズサービスを提供。「捨てるから始めない」整理収納やワークシートを用いた心のケアで、「家」と「心」の両面から暮らしを快適にする仕組みづくりのサポートを行っている。


自分ごとにできず、関わりたくてもできない現状とは?

――橋本さんがライフオーガナイザーになったのは、ご自身が片付けで悩んでいたからだそうですね。

はい。出産後、仕事に復帰したところ仕事と家庭の両立が難しく、片付けができない、家事が滞る、と悩んでいました。当時は、「全部私がいけないんだ」という思いがあり、夫に頼れませんでした。まさに「ズレ家事」「ズレ育児」が生じていたと思います。

――それが、どのようにして改善されたのでしょうか?

空間を片付けるところから始め、モノと向き合っていくうち、夫の片付けやすさが私とは違っていたり、収納の本で紹介されていたことが我が家には合っていなかったり、と気づいていったんです。

家が片付いていくとともにモノの置き場所が分かりやすくなり、夫も家事に参加しやすくなりました。それにつれて、夫婦関係もよくなっていったんです。

――橋本さんが、まさに「ズレ家事」「ズレ育児」を経験されて、改善していった実践者なんですね! コンサルティングやサポートを通じて、どんな悩みを抱えている方が多いと感じていますか?

「片付けられないのは私が悪い」と自分を責めてしまう方が多いかもしれません。どちらか一方に任せきりで、自分ごと化できていない状況を感じます。お宅にお伺いすると、おひと方しかいらっしゃらない、という場合は多いです。

ただ、よくお話を伺うと、配偶者の方も「もっと関わりたいと思っているのに、どこに何があるかわからず何となく任せてしまっている」というお声が聞けたりします。また、それぞれの片付けや収納の方法が違うので、どちらかが使い勝手がいいように配置すると、旦那様の負担が大きく面倒になって続かない、なんていうことも……。

――それはなかなか気がつきにくいですね。

そうなんです。だから、いきなり片付けや整理収納に入るのではなく、最初によくお話を伺って、ご夫婦の価値観や認識の違いを明確にしていく必要があります。

vol.6「仕事も子育ても、やりたいことを全力で。」
赤ちゃんとおしゃれの自由な関係。

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ズレを解消するには、「見える化」してから実践を

――お互いのことをよく知る必要があるのですね。どのようなステップを踏んでいくといいのでしょうか?

片付けや整理収納に限らず、家事や育児のズレも同じで、お互いから見えていないものを出す必要があるんですね。そのためにはもやもやしていることを話し合うことが必要です。

そのうえで問題を整理するときのポイントは、「変えられるもの」と「変えられないもの」を分けること。例えば、お仕事の関係で在宅時間を変えられない場合でも、家事の仕組みを変えれば関わりやすくできるかもしれませんよね。また、家電に頼ったり、第三者にアウトソースしたりするなど、「しないことを決める」のもよい方法です。

――仕組みを考えていくのですね。そのあとのステップは……?

仕組みを考えたら、次は実践です。「洗濯しておいてね」とお願いするだけでは動きにくいようなら、具体的に説明しながら、実際にすべての工程を体験してもらいましょう。どのスイッチを押すのか、どの洗剤をどれくらい使うのか、などを全部体験してもらいます。休日なら、洗って干して、畳んでしまうところまで。「使い勝手が悪いところは言ってね」と告げたうえですべて担当してもらうとよいです。

そのときに、ねぎらいや感謝の言葉を伝えたり、ほめたりしてください。上手にできないかもしれませんが、「こんなやり方はダメ」ではなくて「こんな発想なかった」などとユーモアに振るのもお勧めです(笑)。

――それは楽しそうですね。仕組みを変えて成功した例を教えていただけますか?

「ズレ育児」に「お風呂で呼んでいます問題」というのがあります。例えば、ママがパパに「子どもをお風呂に入れてね」と頼んだら、その間にママは洗い物などを済ませたいとします。ところが、手が泡だらけの時に、「お風呂で呼んでいます」のアナウンスがある。パパとしては「迎えに来て」と思っているわけですが、ママは体を拭いて着替えるところまで任せたいわけです。

それぞれの言い分を聞いてみると、パパは濡れた体で子ども部屋まで着替えを取りに行くのが手間だったのです。そこで洗面所におむつや着替えを収納することにしたら、パパにすべて任せられるようになりました。

うまくいかない時には、人を責めず「仕組みが合っていなかっただけ」と思うのがポイント。もしダメなら別の方法を考えればいいのです。

Vol.2 沐浴の役割
夫婦のじかんが夫婦の時間を考察!「ズレ家事」「ズレ育児」を防ぐ方法とは?

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夫婦で理想の環境や暮らしを話し合って

――さまざまなお宅を訪問されて、どんな夫婦がよい夫婦だと思いますか?

人の価値観はそれぞれなので、ちょうどいい夫婦のあり方を見つけていくのがよいと思います。そんななかでも、「家族でこんな風に暮らしたい」と共有できているご夫婦は、心や空間の片付けもスムーズ。

それは、夫婦でコミュニケーションが取れているということだと思いますね。

――普段からよく話しているということなのでしょうね。ほかにもありますか?

そういうご夫婦は「ありがとう」など、ちょっとした声かけが多い印象です。感謝の気持ちを注ぎ合える関係が良いのでしょうね。「機嫌よく暮らす方法や行動を選び取っていこう」という認識がお互いにあると、ちょっとぶつかった時にも揉め過ぎないと思います。

――コミュニケーションを取り合って、お互いに感謝し合える夫婦は素敵ですね。橋本さん、ありがとうございました。


家事ができない側にも、できないなりの理由があります。それを見えるようにして、そこから仕組みを整えていくとよいのですね。人を責めずに、仕組みを工夫する。もしすぐにうまくいかなかったとしても、そのあとに改善していく姿勢が大切なようです。

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