家事・育児を夫婦で”一緒にする”ことが、浸透しつつある昨今。2人だからこそ、スムーズにこなせることも多いですが、お互いの認識の「ズレ」にもどかしさを覚える方もきっといるはず。

例えば、食器洗いひとつとってみても、片方が「食器を洗えばOK」と思っているのに対し、もう片方は、食器を洗って、シンクを掃除して、フキンを変える……までが全ての行程と認識している場合もありますよね。

本連載では、そんなタスク前後工程での夫婦のすれ違いを『ズレ家事』『ズレ育児』と称し、「なぜ起こるのか」「どうすれば解消するのか」を様々な分野の専門家をゲストとしてお招きし、共に考えていきます。

今回は、育児コミックエッセイ『そのオムツ、俺が換えます』の中で、自らが「見せる育児」を実践する様子をコミカルに描いている漫画家・宮川サトシさんにインタビュー。「見せる育児」のノウハウや、それを活用した「ズレ家事」「ズレ育児」の解消法をお伺いします。

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Talk to ... 宮川サトシ / 漫画家

1978年生まれ。岐阜県出身。大学卒業後、学習塾を経営していたが、漫画家を志し上京。2013年に『東京百鬼夜行』で漫画家デビュー。作品に、『情熱大陸への執拗な情熱』『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』『そのオムツ、俺が換えます』週刊モーニングで連載中の『ワンオペJOKER』など。自らの体験を俯瞰して、ユーモラスに作品へと落とし込むエッセイ漫画家として活動している。


とにかくたくさん話すことが「ズレ」の解消になっている

――宮川さんは「ズレ家事」「ズレ育児」についてどのようにお考えですか?

夫婦間のコミュニケーションの量と質が落ちると、生じるものだと感じています。

例えば、僕と妻は普段からよく話をするので、あまり「ズレ」を感じることはありません。

しかし、二人目が生まれたときは、コミュニケーションを取る時間が取れなくてぎくしゃくしたことがあったんです。二人の面倒を見ていると手が足りなくて、話そうとしても細切れの時間しか取れず、「もういいや」と話すのをあきらめる場面がありました。

――そのときは、どのように解消したのですか?

時間をしっかり取って、できるだけ話すように心がけました。とはいっても、家事や育児で忙しい日中は、時間を十分に確保できないですよね。

なので、子どもが寝たらテレビやスマホを置いて、二人でお茶を飲みながら「もう寝ようか」とどちらかが言うまでひたすら話す……など、家事や育児に追われにくい余白の時間を活用するようにしています。

――宮川さんの実践されている「見せる育児」についても教えていただけないでしょうか。

  • (c)宮川サトシ/講談社 『そのオムツ、俺が換えます』第1話から抜粋。妻の視線を気にしながらオムツ換えをする宮川さん

「見せる育児」とは、一言で言うと妻の視線や評価を意識しながら行う育児のことです。たとえばオムツ換えは男性が避けがちだから、あえてそれを積極的にやることで妻からの評価を上げる。さらに、おしりふきの枚数もできるだけ削減して加点を狙うなど、細かいところも意識しています。感覚的には「見せる」というよりは「魅せる」に近いですね。

――「見せる育児」の家庭におけるメリットは何でしょうか?

夫婦間のコミュニケーションの精度が上がり、家事育児が妻の求めるレベルに近づいていくことですね。「見せる育児」は「見せる育児をしていることを伝え、知ってもらう」ところまでがセットです。 たとえば「こんなにおしりふきの枚数減らしたよ! 見て!」と言ったら「ありがとう! じゃあ、これもできると嬉しいな」と返してもらって……を繰り返すことで、夫婦間のズレが起きる前にすり合わせることができるんです。

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「加点」「減点」のポイントを押さえておく

――「見せる育児」を成功させるポイントは何だと思いますか?

僕は「人間は立体的にできている」と思っていて、皆それぞれ几帳面な面もあれば、いい加減な面もある。その点を細かくチェックするようにしています。たとえば洗濯物を干すとき、妻は袖が中に入ったまま干しちゃったりしますが、僕は風通しがいいように長さまで考えてピチっと干します。一方で、僕はごみ袋をソファの上にちょっと置いても大丈夫だけど、彼女は嫌だと感じるようです。

妻が嫌なポイントを減点ポイントとして押さえておいて、できるだけ避けられるように家事や育児をしています。ゲームのように「今日はノーミス!」という感じですね。その情報を少しずつ蓄積しつつ、うまくいったときは妻に報告するようにしています。

――一方で、「これやっといたよ」という夫の言葉がイラっとする女性もいると聞いたことがありますが……。

夫婦間で家事・育児のレベルが違うと、時間が経つにつれてどんどん差が開いてしまい、ママのイライラが募ってしまうというのはよく聞きますよね。だからあえて家事をやったことを伝えて見てもらい、都度すりあわせができる「見せる育児」は有効かもしれません。

また、家庭内の「キャラ付け」もおすすめです! 僕は家庭内では「洗濯王子」ということになっているのですが、こうして立ててもらうことで自然と「洗濯=自分の仕事」と思えますし、モチベーションが上がっていくんです。

パパとしての当事者意識の芽生え

――「ズレ育児」は産前から始まっているように思います。解消するためのアイデアはお持ちですか?

そうですね……僕はナヨナヨしていてなかなか覚悟ができなかったんですよね。それを『そのオムツ、俺が換えます』の中で描いているので、正直言うと、それを読んでいただきたいです(笑)。

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――「そもそも、ズレてる」とわかっていたほうがいいのですね?

それがわかっていると、ずいぶん違うと思うんですよね。僕のように、子育てを始めて少しずつ親になっていくケースってあると思うので。

――ちなみに、宮川さんの意識はいつごろから、どんなふうに変わっていったんですか?

テレビドラマとかで、生まれた瞬間奥さんに「でかした!」なんて感動しているパパを見て、自分にはそれがないって劣等感がありました。「見せる育児」も、最初は劣等感を払拭するために、妻に喜んでほしくて始めたんですよね。 出張先でお土産を選ぶときも以前は「妻に買っていこう」だった。でも今は「娘に買っていったら二人とも喜ぶだろうなあ」って思えるんですね。最初は「ほめられたい」というよこしまな動機でもいいから、育児に積極的に関わることで、どんどん自分ごとになっていくのかな、なんて思っています。

――宮川さん、ありがとうございました。


夫婦間でゲームのように家事・育児をこなし、お互いの違いも「ゲームのルール」として楽しんでいる宮川さん。エッセイ漫画家らしいノウハウが満載でした。また、たくさん話をしてお互いを知っていくことも、ふたりの関係性に大きく寄与しているようです。コミュニケーションの取り方や家事育児の楽しみ方、ぜひ宮川さんを参考にしてみてください。

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