四方を海に囲まれている日本では、日々、国内の港から港へ、船によってさまざまなものが運ばれています。運搬されているものは、石油製品、石灰石、鉄鋼やセメント、食料品や日用品など、日本人の暮らしと産業発展に欠かせないものばかり。この輸送方法「内航海運」が日本を支えています。

「内航海運」は、海上輸送の際のエネルギー効率に優れた輸送機関で、CO2排出量の面でも地球環境に優しいと注目されています。今後さらに発展していくこと間違いなしの「内航海運」について探るべく、今回は3人の学生さんとともに、日本内航海運組合総連合会の広報委員会の皆さんに疑問をぶつけてきました!

〇日本内航海運組合総連合会の皆さん

 広報委員長 岡本 信也氏
岡本海運(株) 代表取締役社長

 尾本 直俊氏
(株)商船三井さんふらわあ 取締役会長

 井村 章吾氏
大寿海運(株) 専務取締役

 春山 茂一氏
旭タンカー(株) 代表取締役社長

 後藤 大祐氏
日鉄物流(株) 取締役執行役員

 川橋 利明氏
甲子汽船(有) 代表取締役社長

〇疑問をぶつけた大学生たち

 Nさん
大学1年生

 Aさん
大学2年生

 Hさん
大学3年生

産業と暮らしを支える
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2024年から物流に変化が。「内航海運」はますます発展!

まずは、内航海運業界はどういう業界なのかについて教えて下さい。

日本国内の港から港へ、船で貨物を輸送するサービスを内航海運といい、日用品や食料など生活に必要なものや原料、製品など経済活動に必要なものを運んでいます。2024年からは働き方改革関連法の施行によって、陸上のドライバーさんの労働時間が減るため、物流業界でさまざまな変化が起こるだろうという「2024年問題」が話題になっています。また、輸送方法を、環境負荷の小さい鉄道や船舶に移行する「モーダルシフト」も注目されているので、内航海運が今後ますます発展していくことは間違いありません。そのためにはなんといっても船員を増やさないと! ということで、今、船員募集に力を入れています。

船乗りの人数は、昔は5万人を超えた時代もあったのですが、現在は2万数千人ほどです。そのうちの半分以上は50歳を超えていて、高齢化も課題となっています。日本という島国で今後内航海運の輸送手段はなくなるわけがありませんし、もし消滅してしまったら経済活動は成り立たなくなりますので、船員を確保して持続的に繁栄させていきたいと思っています。

3カ月乗船後は1カ月の長期休暇!

内航海運で働いている人は、どのような仕事をしているのですか?

私の会社で取り扱っている船は、内航海運で最も一般的な499型という大きさで、長さは75メートル、幅は約10メートルです。このサイズの船に、船長と、船を操縦する一等航海士、二等航海士、そして、エンジンのメンテナンスをする機関長と一等機関士。それから、船によっては、司厨部員と呼ばれるコックさんも乗っていて、3食のおいしい料理を作ってくれます。
船員たちは、4時間おきに交代制で仕事をしていて、12時~16時まで当直をすると、そのあと8時間休憩。そして、休憩後はまた4時間働くというサイクルで暮らしています。

きちんと交代制なんですね!

そうです。船は24時間航海していますが、船員は働き通しではないので安心してください (笑)。休憩時間は、食事や洗濯をしたり、睡眠を取ったりなど。部屋は各自個室が割り振られているので、それぞれ部屋でテレビ視聴、ネットサーフィン・読書などをしてくつろいでいます。Wi-Fiを設置している船もありますよ。 また、港に船を数日間着けて荷役作業や休憩をすることもあって、その際は街に出かけて観光を楽しむこともできます。

内航海運には、船に乗るだけではなく、陸で行うオフィスの仕事もあります。荷主様からオーダーをいただき、船のスケジュールを調整する営業部門や、一般企業と同じく経理や総務の部署も。そして、船の修理や検査を行うための管理部門、また、船員の安全管理を行う担当者もいます。 弊社の場合、船員は3カ月乗船すると、その後の1カ月は休みを取る制度なので、日程通りに仕事をするよう管理しているのです。船によっては、2カ月乗船後に20日間休みという会社もあります。

私の会社はフェリーを運航しています。フェリーにお客様や車を乗せるだけでなく、「ドアtoドア」と呼んでいる輸送サービスも行っており、荷主様の倉庫で荷物をトラックに積み、そのトラックをフェリーに乗せるのです。そして船から降りたあとは、お客様の指定する倉庫までトラックで運び、そこで荷物を下ろすという一貫的なサービスです。

 船の仕事にも、いろいろなものがあるのですね。

さまざまな仕事をみんなで協力し合って行っています。船員の年齢は10代から70代までと幅広く、まるで何世代も同居している家族のように、和気あいあいとした雰囲気の船もありますよ。女性も乗っています。

女性の船員はまだまだ少ないですけどね。船員に占める女性船員の割合は現在でもわずか3%ほどにとどまっています。女性は増やしたいですし、募集はしているのですが、専門の学校や短期大学校に通っている生徒さんは男性が多いので、就職してくれるのはどうしても男性が多くなりますね。

収入は、陸の仕事の約2倍!?

船の仕事の働きがいを教えてください。

荷主様からお預かりした荷物を、たとえば北海道から九州まで運ぶという、大きな責任を全うできるのも働きがいのひとつです。

内航海運では、日本の国内輸送のうち約4割の貨物、年間で3億2,465万トンという相当な量を運んでいます。「自分たちが日本の産業を支えている」ということに、やりがいを感じている船員はたくさんいます。

お金を稼ぎたいという人も、達成感を得られますよ。船員は高収入なので、30歳までに家を建てられます。これは冗談ではないですよ。

収入は、陸上の仕事の約2倍はあるといわれています。頑張り次第では30歳ぐらいで船長になって、収入をさらにアップさせている人もいるので、上をどんどん目指せる世界です。

そうなのですね! 驚きです。

仕事で苦労することはありますか?

海の波が荒いときは船が傾いて、その状態がしばらく続くこともあるので、慣れるまでは少し苦労すると思います。

船の仕事での苦労といえば、何よりも非常事態に見舞われることです。事故が起きてしまうと、警察の事情聴取や保険関係のことなど、さまざまな対応に追われます。もちろん、そのような事態を招かないよう、全員が常に安全を第一に考えて仕事をしています。

苦労は、やはり家に帰れないことでしょうか。2カ月や~3カ月ほどは乗船したままなので、その間家族に会えずに寂しい思いをするかもしれません。ただ、休みは20日~1カ月ほどまとめて取れるので、とても有意義に使えます。たとえば、長期でヨーロッパ旅行に行く人もいますよ。

船員の皆さんの、船上での生活の様子も気になります。それぞれ個室があるということですが、住環境について具体的に教えてもらっていいですか?

船の一部がマンションやアパートのような作りになっていて、そこが居住エリアです。空調設備が整っているので冷暖房もしっかり効いていますよ。

個室には簡易型のシャワーが付いていたり、女性専用のお風呂があったりする船もあります。そのような船では、陸で生活しているのと同じように、お風呂に浸かってゆっくりくつろげますよ。

内航海運業界ではどのような人を求めていますか?

船はひとりで動かすわけではないので、乗組員と協力し合える、協調性のある人がいいですね。

一方で、遠慮なく発言できる力ももっていてほしいです。たとえば、船を操縦している際に目の前に霧がかかっているとします。このときに自分だけの技量では不安であれば、メンバーを叩き起こせる勇気がないと。船の仕事は安全第一なので、事故を起こさないためにも考えをはっきり伝えることは大切です。

ひとつの判断ミスが大事故につながり兼ねないですからね。そう考えると、ルールや決まりを守れない人には船に乗ってほしくないです。船員の勝手な行動ひとつが、大惨事を招く恐れもありますから。

経済活動を担う仕事。達成感もあるバラ色の人生!

船員の仕事に興味をもっている学生の皆さんへメッセージを伺いました。

内航海運は、日本の経済活動の一端を担う、充実感を得られる仕事です。一緒に、海から日本の物流を支えましょう!

2024年問題やモーダルシフトが話題となっている今、物流の仕事は注目を浴びています。そのなかで、日本の地形に目を向ければ、内航海運の重要性がわかるはずです。日本の物流の課題を解決するべく、この仕事に入ってきてくれる人がいたらうれしいです。

車や電車、飛行機には乗ったことがあっても、船には馴染みがないという人は多いはず。ですので、まずは港に行って船の大きさを実際に見て、船で働いている人たちのイメージをつかんでいただくといいのではと思います。

内航海運といっても、船に乗る人もいれば、陸でオフィスの仕事をする人もいます。船員になれば、乗船中の2カ月もしくは3カ月の家賃・光熱費・食費は不要です。自宅から乗船する土地までの交通費も、すべて会社が出してくれます。また、下船後も同様で、たとえば北海道で下船して東京に帰るのであれば、その際の交通費を自分で出す必要はありません。ですので、「お金を稼ぎたい!」という考えで船員になる人もいます。自分はどういう思いでこの世界に入るのかということをイメージするといいかもしれません。女性のかたも、ぜひお待ちしています。

ものを作る人、そして売る人がいるから産業は生まれます。しかし、それだけでは成り立ちません。ものを運ぶ人がいないと、必要とする方々のもとには届かないですから。物流はそれほど大切な仕事です。 これからの内航海運には、無人自動運転の導入や二酸化炭素の排出量削減など、より良い運送を行うための課題があります。それらの実現に向けて一緒に考えてくれる人にも、この世界に入ってきてほしいです。

大海の生き物や満天の星空など、大自然を身近に感じられる船の仕事は最高ですよ。船員のなかには、4年制大学を卒業後、海上技術短期大学校に2年半通って資格を取り、船乗りになった人たちもいます。資格を取れば、その後の収入の心配は一切必要ありません。バラ色の人生が待っていますよ!

大学生の皆さんにも今日のお話を聞いた感想を聞いてみました。

船長さん、船を操縦する航海士さん、エンジンをメンテナンスする機関士さんが、全員で協力し合って船で貨物を運んでいる話など、お仕事内容をとても詳しく教えていただきました。興味深かったです!

今まで船に乗った経験はあまりないのですが、皆さんのお話を聞いて、乗船する機会を作りたいなと思いました。そして、船のことをもっと知りたい気持ちになりました。

お話を聞くまでは、内航海運というのは、昔の海軍みたいにちょっと怖い雰囲気の業界かなと思っていたんです(笑)。でも、皆さんで和気あいあいと仕事をなさってると知って、安心しました。全然縁のない世界だったので、聞いていておもしろかったです!

今回は内航海運の業界について、広報委員会の皆さんにお話を伺いました。国内の港から港へ貨物を運び、日本経済の一端を担っている、とてもやりがいのある内航海運のお仕事。高収入で長期休暇が保証されているという点も魅力です。将来のビジョンのひとつに加えてみると、夢がぐんと広がりそうですね。

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