みなさんは、「内航海運」って聞いたことがありますか? 「内航海運」とは、国内の港から港へ、鉄鋼やセメント、石油などの資材、そして食料品や日用品などの貨物を運ぶ、私たちの暮らしと産業の発展に欠かせない海上運送のことです。運搬する際のエネルギー効率がよく、地球環境に優しい輸送機関としても注目されています。

そんな「内航海運」に携わる職業に就いている人たちは、いったいどういうお仕事に取り組んでいて、船上ではどんな生活を送っているのでしょうか? そこで今回はガソリンや灯油などを専門で運んでいる、大東汽船株式会社の「新幸丸」に潜入! 船乗りのみなさんに、船の仕事ならではの魅力を聞いてきました。

船乗りになろうと思ったきっかけは?

――本日はよろしくお願いします! まずは、簡単に自己紹介をしていただけますでしょうか。

船長です。船乗りになって10年目です。元社会人企業野球部出身です。

機関長です。入社して11年で、機関部でエンジンや機械、装置の管理をしています。

船の運航や整備を行っている、航海士です。高校を卒業後に大東汽船に入社して、今年で6年目になります。

航海士の指示で仕事をする、甲板員です。5ヶ月前にこの仕事を始めたばかりです。

船に乗るメンバーは、船長、機関長、機関士、機関員、航海士、甲板員、そして司厨部員と呼ばれているコックさんです。船1隻につき、いつも9~10人が乗船しています。

――船にはコックさんも常駐しているのですね! では次に、みなさんが今のお仕事を始めようと思ったきっかけを教えてください。

石油タンカーに乗る仕事をしている父に、この世界を勧められました。最初はもちろん未経験者で、経験を積みながら資格を取って航海士になることができました。

自分は、高校卒業後は自動車工場に5年ほど勤務していたのですが、何かほかのことにもチャレンジしたいと思い、高校時代の同級生の機関長(Uさん)に相談したんです。海と釣りがもともと好きということもあって、船の仕事に誘ってもらいました。

大東汽船は、自分の父が経営していて、兄が取締役です。自分はずっと続けていた野球の道に進むつもりでしたが、大学卒業後は就職することになりました。そのとき、家族からは何をしてもいいと言われていたのですが、家業を手伝おうかなと。

機関長に転職の相談をしたときは、「内航海運」という仕事があることは全然知りませんでした。「実家は、船で荷物を運んでいる会社」とは聞いていましたが、いったい何の荷物を運ぶ仕事かもわかっていない、まったくの素人でした(笑)。

僕は、ついこの間までは老人ホームで介護の仕事をしていました。ただ、違う職種にも興味をもつようになって、別の船に乗っている友人に話をしたんです。それで船乗りの仕事を知って、運輸局の求人に登録したところ、大東汽船に声をかけていただきました。

――甲板員のかたは、どういう仕事をするのですか?

船が港に着くと、航海士の指示でロープを出したり、まく作業を行ったり。それから荷役作業も行います。つまり、油の積み込みですね。

――油は何か入れ物に入っていて、自分たちの手で運ぶのですか?

いえいえ、手では運べません(笑)。ガソリンや灯油などは、アームと呼ばれるパイプを陸上と船側でつないで陸揚げしたり、船に積み込んだりします。その際の作業が安全に進むよう、甲板員は航海士の指示で動きます。

日本内航海運組合総連合会
詳しくはこちら
船の仕事ならではの楽しみは、長期の休暇!

――チームワークが必要とされる作業なのでしょうね。船の上の仕事ならではの、やりがいもありそうです。

陸上での生活に欠かせないものを運ぶという、重要な仕事を任されているので、やりがいはとてもあります。

ガソリンや灯油などを港から港へ運び終わったあとは、責任を果たした気持ちで達成感を得られます。この仕事に就いて6年目ですが、まだまだ知らないことばかりです。どこまでも追求していける、充実感のある仕事ですね。

自分の仕事はエンジンの管理を行い、船を運行させることなので、みんなで協力して作業を無事に終えられると、そのたびに満足感があります。メンバー全員が業務に安全に取り組んでくれている様子を見るとうれしいですね。

船長の主な仕事は、船を港に着けたり離したりする作業です。これは技術が求められるので、簡単なことではありません。それを何度も経験しうまくできるようになると、手応えを感じますね。それから、石油という高価なものをしっかり送り届けることは、もちろん使命ですし、責任を感じています。

――船の職業ならではの、楽しみを教えてください。

船に乗っている間も休みがないわけではなく、全国各地に遊びに行けるので、そのときは楽しいです。

――全国各地に遊びに、とは? どういうことでしょうか?

まず、「内航海運」の仕事をしている船乗りは、たとえば3ヶ月乗船して業務を行ったあとは1ヶ月休むというようなサイクルで生活をしているんです。うちの会社の場合は、2ヶ月乗って20日休むスケジュールなのですが、この2ヶ月の間に休みがないわけではありません。運航途中に、月に5回ほどは、いろいろな土地の港に船を着けて休憩を取ります。そのときに、各地の観光名所を巡るなど、リフレッシュの時間を取ることができるんです。

初めて行く場所に遊びに行けるのは、うれしいですね。

めったに訪れられない場所に行けたりもするし。それに、港に船を着ける以外にも、沖でアンカー(いかり)を落として1~2日停泊することもあるんです。このときは船のメンテナンス作業を行ったりもしますが、それぞれ好きな時間を過ごしたりもします。周りに何もない沖で、星空や朝日を見るのは、本当に綺麗ですよ。船の上にいるとイルカもしょっちゅう見ます。感動することが多いですね。

自分は、沖で釣りをするのが好きですね。それから、20日間の休みのときは、妻と子どもたちと旅行に行くこともあります。まとまった時間を取れる職業ならではの楽しみですね。

――20日間続けて休めるというのは、いいですね! ところで、船上では、どういうタイムスケジュールで仕事をしているのですか?

だいたい4時間おきのサイクルで、12:00~16:00まで当直をしたら、そのあとは8時間休憩します。そして、休憩が終わったらまた4時間働くというスケジュールで動いています。

――8時間はしっかり休憩できるのですね。安心です。とはいえ、陸上と船上だと、何かと勝手が違うと思います。みなさんは、船の上ならではの悩みなどはないのでしょうか。

海上にはコンビニがないので(笑)、日用品やお菓子などが足りなくなったときに困ることはあるかもしれません。あ、でも、食事面で心配することはないですよ。コックさんが作るごはんはおいしいですから。

日本内航海運組合総連合会
詳しくはこちら
収入面も魅力。頑張り次第で上にいける!

――では最後に、船乗りに興味がある方々へメッセージをお願いします!

陸上ではなく海上の仕事をするのは、最初は抵抗があるかもしれません。人によっては相性が合わない場合もあると思いますが、勇気を出して足を踏み入れてほしいです。僕は右も左もわからない状態でこの世界に入りましたが、少しずつ役職が上がってきています。自分の頑張り次第で上にいける、充実感を得られる仕事ですよ。

未経験でも入社できるというのは、うれしいことです。それに、起きたらそこはもう職場なので、通勤時間という概念がないのも助かります(笑)。

船乗りの一番の魅力は、2ヶ月もしくは3ヶ月間船に乗って、そのあとまとまった休みをもらえることだと思います。仕事を一所懸命やって、そして趣味も思いきり楽しみたいという人には合っていますよ。一緒に頑張りましょう!

船乗りの仕事は、収入面も魅力があります。陸上の仕事より優遇されている部分が多いので、頑張って稼ぎたい人にぴったりではないでしょうか。船の上なので重労働だと思われそうですが、実際はそんなことはないです。さまざまな人が集っていて、たとえば40歳で転職して、現在甲板員をやっている人もいます。年齢に関係なく、頑張れば頑張るほどステップアップしていける職業です。ぜひ、自分の力を試してみてください。

船乗りに興味あるかたへ

今回は、知られざる船乗りの世界を覗かせていただいたわけですが……。お話を聞いてみて、みなさんがとても楽しそうに仕事をしていることが一番印象的でした。そして、仕事に誇りをもちながら、20日間というまとまった休日にはプライベートの時間も満喫していらっしゃる。陸上では決して味わえない、稀有な日々を経験できる職業なのだなと、一層興味が湧きました。みなさんも、キャリアプランのひとつとして、考えてみてはいかがでしょうか。

今回取材・撮影に協力をいただいたのは……

大東汽船株式会社

在籍している船員の平均年齢は30代後半。
未経験・異業種からの採用を積極的に取り組んでいます。
本社所在地:愛媛県今治市伯方町伊方甲1418番地1
HP:https://www.daitokisen.jp/

日本内航海運組合総連合会
詳しくはこちら

[PR]提供:日本内航海運組合総連合会