路地裏にラーメン屋が!?

JR新橋駅烏森口から徒歩で約3分。ひっそりとした路地裏にたたずむのが、知る人ぞ知る名店『新橋 纏』です。つい見逃してしまいそうですが、細い路地の奥には白いのれんと店の明かりが見えます。

店内はL字型のカウンターに、客席が8つ。こぢんまりとしていますが、足元に手荷物をかけられるフックがあるなど、快適に過ごせるよう気配りが行き届いていました。

券売機で買った食券を店員さんに渡し、わくわくしながらラーメンを待ちます。

 

「平子煮干そば」と「烏賊干鶏白湯そば」が絶品!

今回注文したのは、『新橋 纏』の人気メニューである「平子(ひらご)煮干そば」と「烏賊干(いかぼし)鶏白湯そば」。どちらもほかのお店では味わえない、『新橋 纏』ならではのラーメンです。

まず到着したのは「平子煮干そば」。煮干しのやさしい香りが鼻孔をくすぐります。

  • 写真は特製平子煮干そば

スープを飲んでみると、出汁のうまみが口いっぱいに広がりました。煮干し系のラーメンは苦みが強いイメージがありますが、平子煮干そばは思っていたよりもさっぱりとした味わい。それでいて、麺やチャーシューの味にも負けない存在感があります。

口の中でほろほろと崩れていく豚チャーシュー、シャキシャキのメンマなど、トッピングも美味。「特製平子煮干そば」には煮卵も乗っており、しっかりと味のしみた白身や半熟の黄身もスープにマッチしています。

するすると食べ進めることができ、最後はスープを飲み干してしまうほど。煮干し独特のクセも抑えられており、朝食の味噌汁のように毎日味わいたくなる1杯でした。

続いては「烏賊干鶏白湯そば」を実食。こちらも丼が置かれた瞬間から、イカの香りが食欲を刺激します。「平子煮干そば」よりも香りが強めで、インパクトがありました。

  • 写真は特製烏賊干鶏白湯そば

スープの色は濃く、「鶏白湯」らしい白をイメージしていると驚きそう。干したイカのほかに鶏白湯としょうゆを組み合わせているため、とろみのある濃い色のスープになっています。

飲んでみると意外にものどごしがよく、見た目よりもあっさり。ストレート麺にもよく絡み、すするたびにイカの味を堪能できます。

トッピングは鶏チャーシュー、メンマ、三つ葉、そして煮たイカゲソ。「特製烏賊干鶏白湯そば」には、さらに煮卵が加わり、チャーシューとメンマの量も増えます。 イカゲソとラーメンという珍しい組み合わせですが、試してみると相性ばっちり。メンマとはまた違う歯ごたえがあり、最後まで飽きずに食べられます。

鶏チャーシューはとにかくやわらかく、ふわっとした食感。パサパサ感がなく、肉のジューシーなうまみを堪能できます。 さらに途中で三つ葉を食べると、口の中がリセットされて爽やかに。スープを初めて飲んだときの驚きを、また体感できました。

 

「平子煮干そば」と「烏賊干鶏白湯そば」おいしさの秘密に迫る!

今回お話をお伺いしたのは、『新橋 纏』社長の加藤隆昭さん。中華料理店で修行を積んだあと『新橋 纏』の店長となり、「平子煮干そば」や「烏賊干鶏白湯そば」などの開発に携わりました。物腰がやわらかく、笑顔がすてきな加藤さん。こだわりのラーメンについて、楽しそうに語ってくれました。

  • 合同会社STAK 代表社員 加藤 隆昭さん

――加藤さんの経歴を簡単に教えてください。

加藤:もともと中華料理を作っていましたが、本格的にラーメンを作り始めたのは『新橋 纏』の店長としてオファーをいただいてからです。まったく知識がない、というわけではありませんでしたが、挑戦してみると「ラーメンって深いな」と気づき、ハマり始めました。

――とくに深さを感じたポイントはありますか。

加藤:スープです。中華におけるスープは、あくまでも料理の味を出すためのベースでした。一方ラーメンは、スープがメインで濃度もまったく違います。今までの中華で培った自分の知識だけでは足りず、奥深さがまったく違っていておもしろさを感じました。

――『新橋 纏』は路地裏にある隠れ家のような店舗も特徴的です。なぜこの場所に出店しようと思ったのでしょうか。

加藤:「店舗にできそうなおもしろい物件がある」と、この場所を提案していただいたことがきっかけです。ただ、最初は「こんな場所に人が来るのかな?」と不安で。軌道に乗るまでは半年近くかかりました。お客様の口コミに助けられましたね。

新橋には“新しいお店を探索される方”が多いので、『新橋 纏』を見つけてくださったお客様が、「おもしろい店がある」と周囲に伝えてくださったのだと思います。口コミで興味を持ち来店したお客様が、次はまた新しいお客様を連れてきてくれるというサイクルが生まれ、徐々に知名度が上がっていきました。

――新橋はラーメン激戦区でもあるので、10年以上お店を続けるのも大変だったと思います。

加藤:そうですね。新しいお店がどんどんできるので、うちでしか味わえないような看板メニューが必要でした。

 

煮干し特有の苦みやエグみを抑えた看板メニュー「平子煮干そば」

――そんな看板メニューの「平子煮干そば」について、こだわりポイントを教えてください。

加藤:数ある煮干しの中でも、平子煮干しを使っていることがこだわりです。僕は煮干しの苦みやエグみがあまり得意ではなかったのですが、「平子煮干しは苦みなどが少ない」と、取引をしていた煮干し屋さんが教えてくれて。試してみると、たしかにおいしいと思えたんです。手を加えればラーメンのスープにできるかもしれない、と可能性を感じました。

――一般的な煮干しラーメンとは違い、あっさりした風味で驚きました。

加藤:煮干しらしい苦さがあるようなラーメンとは少し違うかもしれません。煮干しが好きではない人でもおいしいと思えるラーメンだと、自信を持っています。

――平子煮干そばの開発で苦労した点はありますか。

加藤:苦みを極力を抑えるために努力しました。火加減、煮干しの量、煮干しを入れるタイミングなどを何度も変えながらスープを作って。平子煮干しの香りを消さずに、うまみだけを後押ししてくれる食材も探しました。羅臼昆布や貝柱、ほかの種類の煮干しも組み合わせています。

――トッピングのこだわりも教えてください。

加藤:平子煮干しそばの豚チャーシューは、煮出したダシを使って仕上げています。温かいラーメンの上に置いたときが一番おいしくなるように作っているんです。口の中でホロホロっと崩れていくような食感を楽しんでほしいですね。

――ほかにも平子煮干そばの味わってほしいポイントはありますか。

加藤:まずスープだけを飲んでほしいです。口に入れた瞬間に、ぶわっと煮干しの香りやうまみが広がりますし、苦みやえぐみもほとんどないので飲みやすいと思います。 麺も三河屋製麺さんに何度もイメージを伝え、スープに合うものを作っていただきました。こだわりが詰まっているので、ぜひ味わってみてください。

 

イカを使った珍しいスープがクセになる「烏賊干鶏白湯そば」

――「烏賊干鶏白湯そば」も、イカを使った珍しいラーメンですよね。

加藤:『新橋 纏』をオープンした2012年頃も、イカのラーメンはほとんどありませんでした。今でもメインでイカを扱っているお店は珍しいかもしれません。うちで初めてイカのラーメンを食べるお客様も多く、「食べてみたらおいしかった」という声をよくいただきます。

――なぜイカを使おうと思ったのでしょうか。

加藤:開店当時の『新橋 纏』の社長さんが、「ラーメンを作ってみたんだけどどう?」と持ってきてくれた食材がイカだったんです。「これならいいかも!」と思ったため、イカをメインにしたラーメン作りに挑戦しました。

――開発で苦労した点はありますか。

加藤:組み合わせるしょうゆ探しに苦労しました。塩だとイカの臭みが出てしまい、しょうゆも種類によってはうまくいかない。さまざまなしょうゆを試してようやく出会えたのが、現在使用している「にほんいち醤油」です。

――鶏白湯を組み合わせたのはなぜでしょうか。

加藤:あっさり系にするとイカの味だけが強調されてしまい、自分の中でしっくり来ませんでした。そこで鶏白湯を加えてみたら、いいバランス感になったんです。

――「烏賊干鶏白湯そば」の味わってほしいポイントを教えてください。

加藤:食べ始める前に、イカの香りをぜひ楽しんでいただきたいです。丼が目の前に置かれた瞬間「ああ、イカだ!」と感想を言ってくださるお客様がたくさんいるほど、香りのインパクトには自信があります。イカの風味やうまみが口いっぱいに広がるスープを、味わってみてください。

――トッピングへのこだわりをお聞かせください。

加藤:烏賊干鶏白湯そばには鶏胸肉のチャーシューを使っています。胸肉は硬くなりがちなので、低温調理でしっとり感を出しました。噛まなくても食べられるのではないかと思えるほど、やわらかいです。イカのスープには鶏肉がよく合いますし、脂分も豚肉より少なくヘルシーだと思います。

 

自分がおいしいと思える最高のラーメンを追求したい

――今後開発してみたいラーメンはありますか。

加藤:サンマの煮干しを使ったラーメンに挑戦したいと思っています。今も使っていますが、さらにサンマ煮干しの比率を上げたラーメンを作ってみるのもいいな、と。サンマ煮干しは、うまみがほかの煮干しに比べて圧倒的に強いです。その分臭みも強いので、工夫してクセを抑えようと思っています。

ほかにも煮干しだけにこだわらず、自分がおいしいと思えるラーメンをどんどん作っていきたいです。自分がおいしいと思えないものをお客様に出すわけにはいかないので、妥協せずに最高のラーメンを追求していきます。

――最後に読者へのメッセージをお願いします。

加藤:狭い店内ですが換気もしっかり行っているので、安心して来ていただけると嬉しいです。新橋は仕事の休憩時間に来店される方も多いので、少しでも多くのお客様に味わっていただけるように、来店から退店までスムーズな提供や接客も心がけています。ぜひ一度来ていただいて、おいしいと感じたらリピートしていただけると嬉しいです。

煮干しやイカのイメージを変えた路地裏の名店!

入り口の目印は「平子煮干しそば」と書かれた白い看板。営業中はたびたび行列ができますが、回転が早いためそれほどストレスには感じないはずです。

クセがなくさっぱりとした味わいの「平子煮干そば」と、インパクト抜群でしっかりしたコクが味わえる「烏賊干鶏白湯そば」。どちらも絶品なので、その日の気分によって選んでみてはいかがでしょうか。

【店舗情報】
新橋 纏
 住所:東京都港区新橋3-13-2 新共ビル1F
 
営業時間
 平日/11:00〜15:00 17:30〜22:00
土曜日/11:00〜15:00 17:30〜21:00
日祭日/11:00〜15:00 17:30〜20:00
 ※閉店10分前ラストオーダー(混雑状況により前後します)

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