元ボクサーである筆者にとって、今年は年末に一番の楽しみが待っている。それは、井上尚弥とポール・バトラーの世界バンタム級王座統一をかけた一戦である。
しかし、なぜ筆者がここまでこの一戦に注目しているのか? それは井上尚弥の“モンスター級の強さ”に由来する。そこで本記事では、伝説をいくつも残す“井上尚弥”について語っていきたいと思う。

木村 悠
商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKで3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後は、解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、企業の顧問、コメンテーターなど多方面で自身の経験をいかし活動中。ちなみに、階級は井上選手と同じライトフライ級だった。
世界最強モンスターと呼ばれる “井上尚弥”のこれまでの経歴とは
井上尚弥はこれまで、23戦全勝(20KO)と圧倒的な戦績を残し、世界3階級*を制覇している。アマチュア時代には、史上初の高校7冠の偉業を達成し、 2012年にプロデビュー。
*複数の異なる体重の階級で王座を獲得することを複数階級制覇といい、井上選手は3階級を制覇している。
わずか4戦目で日本タイトルを獲得し、6戦目(1年6カ月)には世界王者になった。その後、8戦目で2階級上のスーパーフライ級に 転向し、2階級制覇を達成。その試合では11回の王座防衛記録を持つWBO 世界スーパーフライ級王者のオマール・ナルバエスを相手に戦った。
強敵との対戦、しかも2階級上げてから初めての試合に下馬評では“井上不利”の予想が多かった。しかし、結果は井上がオマールから4度のダウンを奪い、2R(2ラウンド)KO勝利。井上のあまりのパンチ力に、相手陣営から「鉛を仕込んでいるのではないか」とチェックを要求されたほどだ。
その後、王座に留まり7回の防衛を果たした。16戦目でさらに階級を1つ上げ、WBA世界バンタム級レギュラー王者のジェイミー・マクドネルに挑戦した。しかし、6回の王座防衛を成し遂げた王者も井上の敵ではなかった。わずか1Rでダウンを奪うとラッシュを仕掛け、圧倒のTKO*勝利。王座獲得により、3階級制覇を達成した。
*TKO(テクニカルノックアウト)……技量の差が圧倒的と判断した場合、一方が負傷し試合続行が不可能な場合、またはセコンドが棄権を申し出た場合などに、レフェリーがその場で勝敗を決めること。
その後も破竹の勢いで勝ち進み、階級での最強を決めるトーナメントWBSS (ワールドボクシング・スーパーシリーズ)に出場した。トーナメントでは、初戦で元WBA世界バンタム級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノと対戦し、1Rで下した。続く準決勝でも、IBF王者で当時無敗だったエマヌエル・ロドリゲス と対戦し、2Rに3度のダウンを奪いTKO勝利を収めた。
決勝は、5階級王者でレジェンドボクサーのノニト・ドネアと対戦。試合中、目の上をカットするハプニングもあったが、ドネアからダウンを奪い、判定勝利を収めた。その後現在に至るまで、4試合全てTKO、KO勝利できている。ドネアとの再戦もわずか2Rで下すなど、我々の想像を超えたパフォーマンスを発揮し続けてきた。
世界でNo.1の評価の理由
井上の圧倒的な強さは「ボクシング史上最高の偉人」というに相応しい。海外での評価も高まっており、ボクシング界のレジェンドで元ヘビー級統一王者のマイク・タイソンは、「彼はとんでもない奴だ。マニー・パッキャオ以上だ」と絶賛している。
現在ボクシング界は主要4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)に分かれ、1つの階級に4人の世界王者が いる。スーパー王座、暫定王座を含めるとそれ以上だ。さらにミニマム級からヘビー級まで17の階級に分かれており、全階級で68人以上の王者がいることになる。
井上はそのなかでもトップクラスの評価を受けており、全階級で最も強い選手を決めるPFP(パウンド・フォー・パウンド)ランキングでは、1位に選出されたこともある。世界的に見るとライト級以上の階級がボクシングの主流となっており、アジアのボクサーでバンタム級*の井上が、1位にランクされたのはまさに快挙といえる。
・ミニマム級(47.62kg以下)
・ライトフライ級(48.97kg以下)、フライ級(50.80kg以下)、スーパーフライ級(52.16kg以下)
・バンタム級(53.52kg以下)★井上選手の階級、スーパーバンタム級(55.34kg以下)
・フェザー級(57.15kg以下)、スーパーフェザー級(58.97kg以下)
・ライト級(61.23kg以下)★ボクシングの主流、スーパーライト級(63.50kg以下)
・ウエルター級(66.68kg以下)、スーパーウエルター級(69.85kg以下)
・ミドル級(72.57kg以下)、スーパーミドル級(76.20kg以下)
・ライトヘビー級(79.38kg以下)、クルーザー級(90.72kg以下)、ヘビー級(90.72kg超)
今回井上が目指す4団体統一は、ボクシング史上8名しか達成していない偉業だ。加えて、KO勝利でベルトを獲得すれば、王者全てをKOで破り4団体 統一に成功した史上初のボクサーとなる。
井上尚弥さんのボクシングスタイルと彼と戦った選手たちの証言
軽量級離れしたパワーで、相手を一撃でKOする井上。これまで20 回のKO勝利を重ねているが、そのうちの15試合は試合の中盤(6R以内)で 終わらせている。これまでのKOから、井上は強打の印象が強いが、それ以上の強さがあるのだと語った人物がいた。それは、アマチュア時代から井上のパンチを受け続け、150回以上ものスパーリングパートナーをつとめた黒田雅之氏だ。
井上にダウンを奪われた選手がよく「パンチが見えなかった」と話していたが、速いのはもちろん、予備動作がないのもその要因だろう。ボクシングでは強いパンチより、見えないパンチが効く。見えていれば耐えられるが、想定外のパンチは反応できず倒されてしまう。
私も経験があるが、ダウンに繋がるパンチを受けた時に、なぜ倒されたのか、どんなパンチだったのか、分からないものだ。井上の場合は、カウンターはもちろんノーモーションのパンチで倒すことが多い。ノーモーションについては黒田氏も絶賛していた。無駄な動きをなくさなければ打てないため、より高い精度が求められる。天性の才能に加え、幼い頃から基礎トレーニングを積み重ねてきた成果だろう。
また、井上はどんな試合でも完璧なコンディションで臨んでいる。複数階級で戦ってきたため、減量にはかなり苦労しただろう。実際、世界王者クラスの選手たちであっても減量失敗はよくある話だ。げっそりとした表情でリング に上がるボクサーを何人も見てきた。しかし、そのような状態の井上を見たことは一度もない。毎試合、自信に溢れる表情と完璧に仕上げてきた体で、最高のファイトを見せてくれる。そのような高いプロ意識も井上の強さのひとつだろう。
今回の試合と井上尚弥の今後の動向にも目が離せない
今回の対戦相手ポール・バトラーは、元IBF世界バンタム級、現WBO世界バ ンタム級王者だ。前王者のジョンリル・カシメロが、王座を剥奪されたため、急遽設けられたWBO世界バンタム級暫定王者決定戦で勝利して王者となっ た。総合力を見ると井上有利なのは間違いない。
しかし、バトラーにとってはまさに一世一代の大舞台。井上に勝利すれば、バンタム級史上初の統一王者の座はもちろん、世界で高い評価も獲得でき、歴史に名を残す存在となる。自身のボクシング人生を懸け、死に物狂いで戦うだろう。私も世界戦が決まった時、統一戦ではなく挑戦者の立場だったが、バトラー 同様、不利な予想が多かった。だからこそ、気負いも油断も一切なく、ただ目 の前の相手を倒すことだけに集中していた。 世界王者クラスの選手がぶつかるとなれば、一瞬の隙が命取りになる。バトラーはそれを見逃すほど甘い相手ではない。井上に隙などないだろうが、油断は禁物だ。
とはいえ、井上が本来の実力を発揮できればこの試合での勝利は堅い。試合後には、階級を上げてスーパーバンタム級に進出すると公言している。この階級では減量もキツく、限界がきているようだ。この試合が決まる前、大橋ボクシングジム(所属ジム)で井上を見かけたが、体はすでにバンタム級を超えていた。この試合での勝敗にかかわらず、階級は上げるべきだろう。
スーパーバンタム級の王座には、現在WBA &IBFにムロジョン・アフマダリエフ、WBC &WBOにスティーブン・フルトンが君臨している。井上が4団体を統一すれば、必然的に両者とのマッチアップも期待される。
井上は日本ボクシングの最高傑作と呼ばれ、歴史を塗り替えてきた。今回の試合に勝利し4団体統一に成功すれば、世界バンタム級史上初の快挙、そして間違いなく日本のボクシング史に刻まれる偉業となる。歴史が変わる瞬間を見逃すな!
Information
モンスター井上尚弥の今までの軌跡を振り返りながら、レジェンドやボクシング通の芸能人がその強さの秘密を語り合う番組、『世界バンタム級4団体王座統一戦直前番組 MONSTER井上尚弥を語り尽くす』が本日12月9日(金)より配信開始。4団体統一とはどれほどの偉業なのか? ポール・バトラー戦はどんな展開が予想されるのか? 12.13の決戦を最大限楽しむためのトーク番組になっています。
■出演者
MC:千原ジュニア
ゲスト:薬師寺保栄、永井大、田辺莉咲子、えなこ
視聴はコチラから
※2022年12月9日(金)正午~2023年1月31日(火)まで配信予定
さらに、決戦前日の12月12日(月)には、井上尚弥選手とポール・バトラー選手2名の公開計量をdTVで独占生配信いたします。
『世界バンタム級4団体王座統一戦 井上尚弥 vs ポール・バトラー 前日公開計量』
視聴はコチラから
※2022年12月12日(月)12時30分~配信予定
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