かねてから地球環境に配慮した取り組みを続けてきた久光製薬だが、ここ数年のサステナブルシフトは目を見張るものがある。中でも特に注目したい事業が、栃木県宇都宮市で行っている「清原工業団地スマエネ事業」だ。

今回はこの清原工業団地スマエネ事業の取り組みについて、久光製薬のEHS管理委員会、エネルギー管理委員会を代表して、尾﨑太郎氏(執行役員 生産環境本部長)、高取正広氏(鳥栖工場長)、大坪暢人氏(鳥栖工場製造部環境管理課)の3名に話をうかがった。

  • 清原スマートエネルギーセンター

工場間一体省エネルギー事業=「清原工業団地スマエネ事業」とは何か

「清原工業団地スマエネ事業」は久光製薬での稼働が2019年9月から始まった一大事業だ。

久光製薬、カルビー、キヤノンの3社が、TGES(東京ガスエンジニアリングソリューションズ)の新設した清原スマートエネルギーセンターの高効率大型ガスコージェネレーションシステム、太陽光発電、ボイラによって効率的に作り出されたエネルギーを、ネットワーク化された電力自営線や熱導管を通して利用することで、各企業の単独事業所だけでは不可能なほど大幅な省エネやCO2排出量の削減を成功させた。

  • 久光製薬 執行役員 生産環境本部長の尾﨑太郎氏

同事業は国内初の「工場間一体省エネルギー事業」として高い関心を集め、2020年には一般財団法人 コージェネレーション・エネルギー高度利用センターが主催する、コージェネ大賞の最高位「理事長賞」を受賞している。

久光製薬の執行役員であり、生産環境本部長も務める尾崎氏は次のように説明する。

「久光製薬は鳥栖と宇都宮に工場がありますが、環境への負荷軽減は大きいテーマのひとつです。これまでも工場に太陽光発電を導入するなど、さまざまな行動をしてきましたが、なかなか単独ではドラスティックには変えられない難しさというのも感じていました。そこで、新たに宇都宮市の清原工業団地内でスタートする清原工業団地スマエネ事業に参画しました」

CO2は21%削減、エネルギー使用量も24.2%削減

「この事業は、清原工業団地の3社が発電した電気と熱をリサイクルして使用する方法を取っています。これによって省エネやCO2の排出が削減できるだけでなく、リサイクルによる経済性などの点でも非常に貢献度が高いです。また、何か有事があっても、清原スマートエネルギーセンターからの電力や熱の調達が可能です。これは、当社の商品を安定供給するリスクマネジメントのひとつです」

清原工業団地スマエネ事業に参画したことで、実際にどれほどの成果が得られたのだろうか。

「昨年から本格稼働が始まったばかりですが、2019年10月~2020年9月の実績は、前年比でCO2は21%削減、エネルギー使用量も24.2%削減と非常に大きな成果が出ました」

長年、CO2排出量の削減や省エネに取り組んできた久光製薬だが、清原工業団地スマエネ事業に参加したことで、わずか1年という短期間のあいだにこれほど大きな成果を生み出すことに成功したのだ。その効果は決して小さなものではない。

モーダルシフトも推進

清原工業団地スマエネ事業への参画以外にも、久光製薬は低炭素化へ向けた取り組みを幅広く実施している。

「もちろん、個別には、生産の収率・稼働率をカイゼンする活動を始め、営業活動におけるアイドリングストップや社内のペーパーレスの推進などを行っていますが、物流面でも『モーダルシフト』といって、トラック運送ではなく環境負荷の小さい船の輸送に切り替えるなど、設備面だけでなくサプライチェーンのなかでの取り組みも行っております」

久光製薬がサステナブルシフトを進める背景には当然、社会的な責任感もある。

「私たちは製薬会社なので、安全かつ安心で、最高品質な商品を安定供給するのが最大の使命です。しかし、その使命に取り組むには、まず生活者のみなさまが安心して過ごせる社会がなければ成立しません。持続性のある社会を作っていくのは、我々にとって非常に重要な責務のひとつです」

尾﨑氏によると、現在は紙やプラスチックなどの資源の無駄をなくしていこうという取り組みにも力を入れている。この取り組みは商品にも取り入れている。2020年9月には商品パッケージを小さくするエコ&コンパクト活動を開始し、2021年8月には「のびのびサロンシップフィット」でも新パッケージである「ポケシップ」を発売した。これによって包材使用量が約24%もカットされたという。久光製薬が定めるエコ基準をクリアした商品は、パッケージに「HELLO! eco!」マークを表示している。

最後に尾崎氏は「やれることはまだ多くあります。エコな商品づくりは今後も取り組んでいきたいと考えています」と締めくくった。

■前編はこちら「サステナブルシフトを加速させる久光製薬 - 環境問題への取組みとその成果とは」

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