コロナ禍は、日常を大きく変えてしまいました。デジタル化やオンライン化、社会理念や価値観の変容などが急速に進み、新たな生活様式への適応が急務に。今後、変化のスピードは加速度的に増し、さらに予測困難な時代を迎えるといわれています。

そんな未来を生きる子どもたちが自らの人生を切り開いていくには、どのような力や学びが求められているのでしょうか?本連載は、一人ひとりの可能性を追求し、その能力を最大限に伸ばす「KUMON」の提供でお送りする企画「KUMON FUTURE LAB」。各分野のフロントランナーに密着取材します。

第1回目は、脳研究者の池谷裕二先生にお話をうかがいました。

  • 池谷裕二
    1970年、静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。東京大学大学院 薬学系研究科 教授。専門分野は神経生理学で、脳の健康について研究。老若男女を問わず、これまで脳に関心のなかった一般の人に向けてわかりやすく解説し、脳の最先端の知見を社会に有意義に還元することにも尽力している。

100年の人生を「柔軟に楽しむ力」が求められる

━━本日はよろしくお願いいたします!池谷先生は脳研究者としてご活躍ですが、どのような力が役立っていると感じますか?

ひとつ挙げるとしたら「関心を広く持つ力」でしょうか。私は脳研究の中でも記憶を司る「海馬」が専門ですが、脳の他の部分の研究や領域がまったく異なる分野にもアンテナを張り、そこで得た知見を自分の仕事に活かしています。

現在は「学際的研究」といって、1つの目的と関心のもとに、隣接するさまざまな学問領域でコミュニケーションを取りながら研究していくのが、世界の流れですから。


━━研究の世界も変わってきているんですね。これからの社会はますます予測不能になるといわれていますが、未来を生きる子どもたちに必要な力はどのようなものでしょうか?

柔軟に楽しむ力」ですね。というのも、今の時代は産業革命の真っ最中。AIやIoTといった情報科学の技術革新によって社会が大きく変わろうとしています。

将来どうなるかは誰にもわかりません。そのため、夢を持つことはリスクもはらんでいると考えています。


━━子どもにとって夢を持つのは大切なことのように思いますが、それはどうしてでしょう?

たとえば、「今の小学生は、65%がまだ見ぬ新しい仕事に就いている」という試算もあります。ですから「〇〇の仕事に就きたい」という夢を持つのは、残り35%の既存の仕事に固執し、自分のポテンシャルを狭い分野に封じ込めてしまう可能性があるのです。

だからこそ、どんな世の中になっても順応できるよう、柔軟性を磨き、何事も楽しむ力が求められます。

しかも、今の小学生は100歳まで生きるだろうといわれていますので、それだけの長い時間を楽しめないのはもったいない。


━━「人生100年時代」は到来するんですね。

女性の平均寿命は87歳ですが、中央値で見ると現時点でも90歳を超えています。今から90年前といえば医療は未熟でしたし、戦争という不幸な歴史もありました。

一方で現在は医療が発達し、衛生環境は抜群。今の小学生の寿命が100歳を超えるのは間違いないと言って良いでしょう。それに、今の100歳より未来の100歳のほうが心身ともにずっと若いはず。70歳まで生きたとしても、あと30年は元気に生きられるかもしれない。

そう考えると、社会の変化に上手に順応しながら100年間楽しみ続けられる力を身に付けてほしいと思います。


勉強は「入力」より「出力」を
繰り返しには「スモールステップ法」が有効

━━池谷先生は子どもの頃からさまざまなことに興味を持っていたそうですが、勉強も楽しんでいたのでしょうか?

小学生の頃から多趣味で昆虫や自動車、天体や釣りに夢中でしたが、中学生になると数学が加わり、こだわって突き詰めるようになりました。「新しいことを知ることができる」っていうところに勉強のおもしろさを感じていましたね。

古典や社会も、数学に比べると苦手な科目でしたが、昔の人の考え方や今の法律ができた歴史的背景を知ったりするのは楽しかったですね。


━━当時はどういった勉強がお好きでしたか?

科目では数学が得意でしたが、参考書を読むよりは問題集を解くのが好きでした。その頃は「問題集を解いたほうが、学習効率が良い」なんて知りませんでしたが、今では「テスト効果」として研究結果が発表されています。

情報を叩きこむのではなく、情報を使う。「入力」より「出力」に重きを置く勉強法は、子どもたちにもおすすめです。


※テスト効果…情報を単に聞く、書くよりも、情報を思い出す行為によって記憶の定着が促進される効果。

━━「入力」より「出力」が重要というのは、「教えてもらうだけではなく、実際に自分で解くことで力がつく」というKUMONの学習方針にも通じる気がします。

記憶の定着にしても、何度も繰り返し「出力」することがポイントです。いくら繰り返し「入力」したって効果は期待できません。

よく挙げる例なのですが、自宅から一番近いAEDや消火器の場所ってどこかわかりますか?


━━思い出せません……。

そう、答えられない人が少なくありません。でも、AEDや消火器の設置場所って本来は覚えていないといけない情報ですし、目立つ色なので、日常的に目にしているはずなのです。


つまり、情報を繰り返し「入力」するだけでは脳は覚えようとしないということ。これは勉強でも同じです。

試験に限っていえば、その場で思い出せるかどうかがすべて。にもかかわらず、必死に叩き込んで覚えようとする傾向にあります。専門用語で「リトリーバルトレーニング」と言いますが、普段の勉強では「思い出す訓練」に取り組んでほしいですね。


━━そうなると、「一夜漬け」って意味がないんですね……。

記憶は睡眠中に定着します。「一夜漬けはすぐ忘れる」というのは、一晩しか寝ていないからです。「勉強して睡眠をとる」を繰り返すのが、記憶の定着には欠かせません


━━繰り返し勉強していくには、KUMONのような「スモールステップ法」は有効でしょうか?

※スモールステップ法…らくに解ける問題からスタートし、自分の力で100点をとることで達成感を得て、自分で学習する意欲を高められる学習方法。

少しずつ階段を上っていくのが理想です。一日に成長できる量は、どうしても限られていますから。ただ、大きな目標を立てるのは決して悪いことではなく、むしろモチベーションの維持に寄与します。

マラソンランナーは「次の電信柱まで」と小さな目標を見据えて、それを積み重ねて42.195kmを完走しているそうですが、勉強にも当てはまるでしょう。大きな目標に向かって、毎日の小さな目標をクリアする。その両方があると良いのではないでしょうか。


大切なのは「自立して努力すること」と「習慣化」
天敵のKUMONを始めた娘の変化

━━池谷先生は二児のお父さんでもありますが、お子さんに勉強を教えることもあるのでしょうか?

すぐに答えを教えることはしませんね。理由は、自分で考える癖を身に着けてほしいから。そのため、上の娘は小学3年生なのですが、わからない問題があったときには、1年生の知識までさかのぼってヒントを与えるようにしています。

「ヒントさえあれば自分はわかる!」と自信につながっているみたいで、どうすれば答えに辿り着けるのか、そのメソッドを娘は学習しているように感じますね。


━━「正解すること」が必ずしも正しいわけではないんですね。

何事も継続しないと、能力は上がりません。飽きずに努力できるようになるには、子ども自身が自分の成長を実感することが不可欠です。そのためには、正しい現状把握が鍵を握ります。

昨日できなかったことが今日できているのが、成長。そもそもの自己評価が間違っていたら成り立ちません。私も、娘が「わかったつもり」になっていないか、気を付けて見守っています。


━━自分の現状を把握しながら、小さな目標達成を重ねる。「スモールステップ法」は自立して努力するための助けになるようにも感じました。ところで、池谷先生のお子さんは公文式教室に通っておられるそうですね。きっかけは何だったのでしょうか?

実は、KUMONは私の天敵で……(笑)


━━天敵ですか!?

小学生のとき、成績優秀者はみんな公文式教室に通っていまして。私は入会していなかったので、「KUMONのせいで、勉強のできない自分はみじめな思いをさせられているんだ」と逆恨みをしていたのです(笑)

ただ、大学で勤務するようになって周りの東大生に聞いてみると「KUMONのおかげ」と話す学生が多く、自分の子どもは公文式教室に通わせることにしました(笑)


━━KUMONを始めた娘さんに何か変化は見られますか?

勉強が習慣化していますよね。私は勉強においても「楽しむこと」を重視していますが、それよりも大切なのは「習慣化すること」です。

習慣化してしまえば認知負荷が減り、「イヤだ」とか「めんどくさい」などのネガティブな感情が入る余地が無くなります。歯磨きや着替えのように勉強が日常の一環になれば、無理にやる気を引き起こさなくてもいい。習慣化は、継続にとって心強い味方となります。

娘は物心つく前からKUMONを始めているので、もはやKUMONをやらない日はありません。寝る時間から逆算して1日のスケジュールを考えられるようになったのも、KUMONの成果ですね。


誰もが生まれながらに持つ「柔軟に楽しむ力」は宝物

━━池谷先生が子育てで実践されていることがあれば教えてください。

友だちとして接するようにしています。子どもと同じ視点で話すのもけっこう頭を使うので、いつもヘトヘトですが(笑)娘たちとの会話で「オープンクエスチョン」を意識しているのも、選択肢を与えると上下関係になってしまうためです。

「どうしよう?」「どう思う?」と一緒に考えると同士の関係を築けます。友だちの関係であれば、指示や命令を待つのではなく、アイデアを出してくれるようになるはずです。


━━つい叱ってしまうので、耳が痛いです……。

私も普通の親ですので、叱ったり怒ったりすることもありますよ。あくまでモットーとして掲げています。


━━最後に、これからの時代を担う子どもたちを育てる親世代に向けてメッセージをいただきたいのですが、冒頭の「柔軟に楽しむ力」を養うには、どうすればよろしいでしょうか?

「柔軟に楽しむ力」は、生まれながらにして誰にも備わっているものです。しかし、親の都合で疎まれたり、友だちに茶化されたりして、楽しむことに対して罪悪感が芽生えて次第に封印するようになっていきます。

隠さなくてもいいんだよ。宝物だから、そのまま大事にして大人になってね」と伝えてほしいですね。

あと、互いに切磋琢磨できる友だちと巡り合える環境に導いてあげてください。親や先生ももちろんですが、友だちが子どもの成長に与える影響はかなり大きいです。どんな友だちと過ごすかは本人次第ではあるのですが(笑)


━━KUMONのような、意欲の高い子どもたちが集まる環境を検討するのも良さそうですね。池谷先生、本日は貴重なお話、ありがとうございました!

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予測不可能な未来だからこそ、どんな時代でも自ら考えて「生き抜く力」と、それを育むための「学習」を。「KUMON」は、教室でも自宅でも、一人ひとりの可能性を追求し、その能力を最大限に伸ばし、未来の可能性を広げられる機会を提供します。

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公文式学習とは?

学年に関係なく、一人ひとりの力に合った教材を指導者が選定し、生徒が自習で教材を解いていくスタイルの学習。指導者は生徒に「答えを教える」のではなく、生徒が「自分で解けた」という状態へと導く。また、結果だけではなく、行動や努力といった過程についても「具体的にほめてあげる」ことを大切にしている。自分で解ける状態になるまで反復練習するため、次のステップに進んでも自力で挑戦できる。その結果、「自習力」「学習習慣」「ものごとを粘り強くやり抜く力」「集中力」「自分で考える力」「自己管理する力」などの「力」が身につき、学年を越えた未習の内容も自習で解けるようになるといった特長がある。

[PR]提供:公文教育研究会