「この人と夫婦としてやっていくのは、もう無理!」

そう思ったときに、まずファーストステップとして"家庭内別居"を始める人は少なくありません。

家庭内別居は本格的な別居と比べるとハードルが低いと言えますが、デメリットや注意点もたくさんあります。以下で詳しく見ていきましょう。

家庭内別居とは

家庭内別居とは、ひとつ屋根の下で配偶者となるべく顔を合わせないようにしながら、別々に生活を送ること。

たとえば、

  • コミュニケーションは主にスマホのメッセージや置き手紙で行う
  • 生活リズムをずらす
  • 寝室は別々
  • 休日は別々に行動する
  • 配偶者が在宅のときは自室に引きこもるか家の外で過ごす

といった態様であることが多いです。

本当は今すぐにでも家を出ていきたいけれど、子育てや経済力などの事情により、すぐには別居できない人もいます。 そのため、少しでも精神的苦痛を軽減させるために、家の中で配偶者を避けながら生活するのです。

家庭内別居のメリット

経済力がなくてもすぐに始めることが可能

家庭内別居の一番のメリットは、経済的に自立できるほどの収入がない人でも、今すぐ始めることができるという点でしょう。

新しい家を探して引っ越しの手続きをするとなると、時間もお金も労力もかかってしまいます。とくに幼い子どもを育てている専業主婦など身動きが取れづらい人にとっては、かなりハードルが高いと言えます。

その点、家庭内別居には費用も時間もかかりません。 思い立ったら今日からでもスタートすることが可能です。

子どもの生活環境を大幅に変える必要がない

幼い子どもにとって、慣れ親しんだ生活環境を急に変えると非常に大きなストレスになることがあります。

別居によって、住んでいる家だけでなく、近所の友達や習い事の教室、学校・保育園、通学路などがガラリと変わると、精神的・肉体的負担を与えてしまうことは避けられません。

もちろん子どもの幸せなどを熟慮した末に離婚に至ったのであれば、こういった変化もやむを得ないと言えます。

しかし、まだ離婚を本気で決意していないのであれば、子どもの生活の変化を最小限に留められる家庭内別居は得策です。 配偶者のDV・モラハラ行為により子どもに危険が及んでいない状況にあるのなら、まずは家庭内別居から徐々に着手していきましょう。

距離を置くことでお互いに冷静になり、夫婦仲を修復できる可能性

家を出て別居を始めると、家庭裁判所からも"夫婦関係が破たんしており修復不可能"と判断されやすくなります。

相手が離婚を拒否している場合に離婚裁判で強制的に離婚するためには、民法第770条1項に掲げられている法定離婚事由が必要です。別居は、法定離婚事由5つ目の"婚姻を継続し難い重大な事由"の一つとされています。

完全に別居をすると、お互いに「離婚に向けての本格的な準備段階に入った」という意識が強くなり、後戻りしにくい精神状態になってしまうかもしれません。

相手の不倫が疑われるなら別居は悪手

さらに完全に別々の家で暮らし始めた場合には、別居後に配偶者が自分以外の人と肉体関係を持ったとしても不貞行為とは認められにくくなります。

なぜなら、不貞行為によって"平穏な家庭生活を送る権利"という法律上の利益が侵害された場合に支払われるのが不貞行為の慰謝料であり、別居中で夫婦関係が破たんしている夫婦については、守るべき法律上の利益が既にないと考えられているからです。 その結果、慰謝料を請求できなくなるリスクも生じます。

「距離は置きたいけど修復の余地は残しておきたい」「不貞行為はして欲しくない」「離婚は慎重に決めたい」という場合には、家庭内別居の方がメリットは大きいと言えるかもしれません。

家庭内別居中の慰謝料請求について >>

家庭内別居のデメリット

 "夫婦関係の破たん"とは認められにくい

家庭内別居を数年間続けていても、家庭裁判所は"夫婦関係が破たん"していると認めてくれない可能性が高いでしょう。家庭内のことは、第三者からはわかりにくいからです。

また家庭内別居状態で配偶者以外と肉体関係を持ってしまうと、いくら「夫婦仲は冷めている」と主張したとしても、不貞行為の責任を問われるリスクが生じてしまいます。

離婚すると決めたなら完全な別居に移行を

離婚を真剣に考え始めたら、家庭内別居から完全な別居にシフトする方が以後の展開はスムーズになります。

婚姻期間にもよりますが、別居を数年間継続すると"夫婦関係が破たんしており婚姻の継続が難しい"と判断され、離婚裁判で離婚が認められやすくなります。

離婚後の人生に備えて新しい出会いを求めたい人や、配偶者から離婚を拒否されないか心配な人も、本格的な別居に移行することを検討してみてはいかがでしょうか。

家事を放棄すると離婚の際、不利になるおそれがある

家庭内別居状態になると、配偶者のために家事をするのも嫌になってしまうかもしれません。しかし民法752条では「夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない」として、夫婦間の法律上の義務を定めています。

法律上夫婦である間は、愛情の有無に関係なく、お互いの義務を果たして生活を支え合わなければならないということです。

たとえば専業主婦であれば、家事・育児をできる限り行うことが求められます。 もちろん体調不良のときに家事の全てに手が回らなくなるのは仕方がないことですが、心身の健康に何も問題がないにもかかわらず義務を怠っていることが客観的に明らかであれば、家事放棄が離婚の際に不利な材料になるおそれがあります。

離婚前の別居での注意事項 >>

子どもへのストレス

同じ家に住んでいるにもかかわらず、会話をしないどころか顔も合わせない両親を見て、心を傷めない子どもはいません。

親にとっては心を守るためにやむを得ない家庭内別居も、子どもにとってはストレスになっていることを忘れないようにしましょう。

家庭内別居による子どもへの影響

子どものいる家庭の場合、家庭内別居による子どもへの影響は、大きな懸念事項となるでしょう。 家庭内別居が子どもにどんな影響を及ぼすか、具体的に確認していきましょう。

コミュニケーションの仕方に悪影響を及ぼすおそれ

家庭内で両親の不仲を目の当たりにすると、多くの子どもは気を遣うようになります。夫婦仲を取り持とうとして無理に明るく振る舞ったり、逆に「両親が離婚できないのは自分がいるからではないか」と自分を責めるようになったりする傾向があります。

家庭内別居の影響で、子どもは次第に人の顔色を伺うようになり、親以外の人とのコミュニケーションにおいても素の自分を表現できなくなることも少なくありません。

本当はもっと両親に悩み事を聞いてほしい、頼りたいと思っていても、夫婦仲が険悪で辛そうにしている両親に負担をかけたくないと考える子どももいます。

その結果、子ども自身の悩み事を誰にも言えずひとりで抱え込んでしまうことにもなりかねません。

家庭内に安らげる場所がないことで、体調不良に繋がる可能性

両親が家庭内別居をしていると、子どもは自宅にいても安心感を得にくくなります。 心身が発達段階にある子どもにとって、親に守ってもらえるという安心感は非常に重要です。

とくに学校や習い事など外で何か嫌なことがあった場合、家庭が安全基地のような役割を果たさなければ、ただでさえ社会的に弱い立場にある子どもは非常に強い孤独感と恐怖を覚えるでしょう。

「心細いときに守ってほしいのに守ってもらえない」 「両親から十分に気にかけてもらえない」

そうした状況が続くと、子どもの自尊心が傷つけられます。

家庭内別居をした結果、精神的ストレスにより心身の健康を害するケースも少なくありません。

夫婦喧嘩で子どもがPTSDになるケースも >>

家庭内別居をはじめる前の留意事項

子どもがいる夫婦は、家庭内別居をはじめる際に子どもの心のケアをとくに優先させるべきです。

配偶者と他人のように距離を置くことで大人同士は清々するかもしれませんが、二人の間に生まれた子どもは深く傷ついていることを理解しましょう。

子どもにとって、両親や家庭は"安全基地"

家庭内別居を始めたら、今まで以上に子どもの意見に耳を傾けるよう心掛けて、「パパもママもあなたのことを常に大切に思っている」「パパとママが口を聞かないのはあなたのせいではない」とハッキリ伝えましょう。

精神的にも肉体的にも未熟で、知識も経験も少ない子どもにとって、両親や家庭は"安全基地"であるということを忘れないようにしましょう。

まとめ

家庭内別居は、経済力や時間的余裕に関係なく今すぐスタートできるという点ではメリットがあります。完全な別居と比較すると、実行に移すまでのハードルが低く、夫婦仲も修復しやすいと言えます。

しかし裁判所からは"夫婦関係が破たんしている"と認められにくいので、家庭内別居状態が何年間か継続したとしても裁判で離婚が認められない可能性があります。また自分が不貞行為をした際にも「夫婦関係は破たんしていた」という主張が認められず、慰謝料の支払い義務が生じるリスクはあります。

家庭内別居にも様々なメリット・デメリットがありますので、気になる方は弁護士に相談してみることをお勧めします。

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