LIXILでは、住宅取得における選択肢のひとつとして、中古住宅の断熱リフォームを提案している。同社の製品・サービスなら「新築のローコスト住宅より安く、それでいて新築の高性能住宅並みに断熱性の高い住宅を実現できる」という。都内のLIXILの体験型ショールーム「住まいStudio」にて、担当者が詳細を説明した。
脱炭素社会の実現にむけて
まずはLIXILが断熱リフォームに取り組む背景について。現在、世界では脱炭素社会の実現に向けて動き始めている。パリ協定では今世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げた。日本国内では、その目標期限を2050年までと定めている。
こうした状況を踏まえたLIXILでは、家庭から排出されるCO2を抑えるべく、いま様々な施策を推進中だ。担当者によれば、家庭で消費されるエネルギーの約4分の1は冷暖房によるもの。そこで住宅の高断熱化を進めれば、家庭の消費エネルギーの低減につながるという。
ここで国内の現状が明かされた。担当者は「しかしながら、既存住宅の約90%が現在の省エネ基準に満たない。新築住宅だけでなく既存住宅の高断熱化に取り組むことが急務」と指摘する。断熱改修を阻む要因は「手間と時間とコストがかかる」「必要性が消費者に伝えきれていない」ことにあった。
新築に代わる手段を――LIXILのSW工法リフォーム
では実際、「断熱」により住まいの性能を高めることには、どんなメリットがあるのだろうか。ここでは断熱性能の低い家で生じることについて考えてみる。
冬のシーズンには暖房をいくら強めても部屋が温まらない、そのため暖房費がかさむ。またリビングと脱衣所で大きな温度差が生じるため、血圧が上下して心臓や血管の疾患が起こるヒートショックも発症の危険性がある。一方で、夏のシーズンには冷房の効き具合が悪い。長く続く酷暑により、室内で熱中症にかかる人も増えてしまう――。こうしたリスクは、すべて家屋の断熱・遮熱対策により軽減できるという。
既存住宅の高性能化に取り組むLIXILでは、家に住みながら断熱改修できる「SW工法リフォーム」を2021年4月より全国展開している。天井断熱にはグラスウールを吹き込み、壁断熱にはカバー工法 外張り断熱を採用、床断熱では吹付け硬化ウレタンフォームをスプレーで吹き付ける。窓や玄関ドアもより断熱性能の高いものを設置する。これらの工法により、住まい全体をまるごと新築と同等レベルの断熱性能に改修する。専門家が住まいの断熱性能の診断を行い、最適な仕様を提案する。(「お住まい断熱診断」)
気になるコストについては、断熱リフォームならローコスト住宅への建て替えよりも費用が抑えられ、新築の高性能住宅に匹敵する性能を実現できるという。
快適な室内環境を目指すLIXILは断熱リフォームもサポート
では断熱リフォームにより、どの程度のCO2を削減できるのだろう。
同社では断熱リフォームをすることで、(住宅一戸あたり)年間約3,365kgのCO2排出を削減できると試算している。これは杉の木 約240本に相当するとのことだ。
CO2削減だけではなく冷暖房費の削減も可能であるという。LIXILの断熱リフォームをすることでリフォーム前の住宅に比べて年間で63,000円の削減が期待できる。20年間ではなんと約1,260,000円も節約ができるため、経済的にもかなりおトクである。
なおLIXILでは断熱リフォームをサポートする 「建て得リフォーム」などのサービスを用意。担当者は「このサービスを組み合わせて、お得にリフォームしてもらえたら」とアピールしていた。
住宅の断熱性能を体感できる
「住まいStudio」を体験
LIXILでは、住まいの断熱性をテーマにした 「住まいStudio」を展開している。そこで実際に、断熱のありがたさを体験できる施設を見学した。記者が案内されたのは、気温0度のスタジオに設置された、昔の家、今の家、これからの家、の3つのモデルルーム。各時代で、家屋の断熱性はどれだけ違うのだろうか。
昔の家(昭和55年基準)
昔の家(昭和55年基準)に入ると、足元がひんやりした。部屋の空調は20度の設定だが、ゆるい暖気が顔に当たるばかりで暖まらない。特に、1枚ガラスのアルミサッシから強い冷気を感じる。そして空調の効いていない廊下(洗面所)に移動すると、寒さはより一段と厳しくなった。祖父の住んでいた一軒家が、ちょうどこんな環境だったのを思い出す。
今の家(平成28年基準)
続いて、今の家(平成28年基準)に入る。空調は同じく20度の設定。足元の冷たさはゆるみ、窓付近に漂っていた冷たい空気も和らいだように感じた。説明員によれば、ペアガラスの窓になっているとのこと。とは言え、24時間換気システム(2003年の改正建築基準法により全ての住宅に設置が義務付けられた)から入ってくる冷風が憎たらしい。そして廊下(洗面所)は、やはり寒かった。
これからの家(HEAT 20 G2)
最後に、これからの家(HEAT 20 G2)に入った。頭も足も、まんべんなくホッとするような暖かさ。空調は同じ20度設定なのに、身体全体に心地良い暖かさが感じられる。サーモグラフィを確認すると、なるほど部屋全体の気密性が高く、暖気を逃さない構造になっているのが分かった。
説明員によれば、この「住まいStudio」を訪れた一般ユーザーは、これまでに約3,500組。来場した方のほとんどが、新築を建てるなら「これからの家」が良いと希望しているという。LIXILではZEH(ゼッチ、ゼロ・エネルギー・ハウス)を日本のスタンダードにすべく、今後も取り組みを加速していきたいとしている。
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