戦国時代をテーマにしたドラマや映画を楽しむ際、歴史を知っておけばより一層“味わい”が増すもの。たとえば、テンポの早い展開とユニークなセリフまわしで好調な大河ドラマ「真田丸」の場合。これは”変化球”すぎる例かもしれませんが、第一話で穴山梅雪という武将が登場しますが、その役を演じたのが榎木孝明さんでした。正直、唖然としました。なぜなら、穴山梅雪は本能寺の変後に早々に歴史から姿を消す人物。その配役を榎木さんという大物俳優が務めるのだから、「NHK、気合い入っているなぁ」と感じました。

現在2号まで発売されています。創刊号は299円(税込)、以降は556円(税別)

さて、このように戦国時代にどっぷり浸かっている筆者ですが、新たな“戦国もの”の情報をキャッチしました。それが、ハーパーコリンズ・ジャパンが発売する週刊「ビジュアル戦国王」(以下、戦国王)という分冊雑誌。

そしてページをめくるとなぜ「ビジュアル戦国王」という誌名なのか合点がいきました。とにかくビジュアルが多い! 写真、イラスト、CG、年表、系図、地図……ありとあらゆるビジュアル手法を駆使して、誌面が構成されているんです。

そしてもう1点、目に付いたのが、表紙のもっとも上部に印刷された「総監修:小和田哲男」の文字。小和田先生といえば日本の歴史学の第一人者で、筆者が読了した歴史小説の2割、いや3割くらいのイメージで小和田先生のあとがきが添えられている感があります。そして、小和田さんは1996年の『秀吉』をはじめ、2006年の『功名が辻』、2009年の『天地人』、2011年の『江~姫たちの戦国~』、2014年の『軍師官兵衛』といった数々のNHK大河ドラマの時代考証を担当した人物なのです。

では、そのビジュアルと小和田先生の監修でどのような内容になっているのでしょうか。掲題にもある「真田丸」でチェックしてみよう。

「真田丸」の位置や規模、重要性が一目瞭然

「真田丸」が大きくとりあげられているのは創刊号の「戦国王の合戦 大阪冬の陣」コーナー。おそらく大河ドラマ「真田丸」が盛り上がっている以上、担当編集としては大坂冬の陣を避けて通れなかったのではないでしょうか。その「真田丸」を解説するために特に目立つのが、大坂城惣構えの様子を描いたイラストです。

惣構えとは本丸、二の丸といった城そのもの以外の部分、たとえば武家屋敷や町人の居住区をも掘や塀で囲った城の構造のこと。この大坂城のほかに小田原城でも有名です。「真田丸」はその惣構えの南東外側に真田信繁が築いた出城で、ここに真田勢の兵士5,000人が籠城。正面に陣取る前田家、井伊家、松平家の陣に対して激しく「矢弾」を打ち掛け、多くの兵士を討ち取ったといわれています。

大坂城惣構えのイラスト(左)と「真田丸」のCG。特にCGは激戦の様子が伝わってくる

そして、このイラストからは、安全な惣構えの中ではなく“最前線の死地”ともいえる激戦が予想される場所に籠もった真田信繁の勇気が伝わってきます。

このイラストとほぼ同じぐらいの誌面を割いて掲載されているのが「真田丸」で繰り広げられた激戦の様子を描いたCG。これは広島藩浅野家に伝わる「諸国古城之図 摂津真田丸」を資料に制作されたもので、冬の陣・鴫野の戦いと並ぶとされる激戦の様子が見てとれます。

そのほか、冬の陣に至るまでの年表や布陣図、大坂城に入城した「牢人衆」の解説に誌面が割かれています。そうそう牢人衆といえば、真田信繁と後藤又兵衛(基次)は、「真田丸」を巡って一悶着あったとよく小説では表現されています。そのあたりの描写も誌面にあれば“なおよし”と思いました。

“5層6階”などといわれてもピンとこない天守閣をCG化

さて、「真田丸」はイラストとCGで再現されたと前述しましたが、このCGというのが「戦国王」のウリといえます。中でも特に魅入ってしまうのが城のCG。たとえば創刊号では大坂城がCGで再現されているのですが、とにかく緻密。文献等ではよく「5層6階の天守閣」などという表現がありますが、実際にどういう構造なのかピンときません。

ところがCGでは、断面図で大坂城天守閣を解剖。「5層6階」の構図が手に取るようにわかります。さらに、小壁に施された装飾や狩野派が手がけたとされる襖絵も再現され、豊臣秀吉が心血を注いだという豪華絢爛な天守閣の様子が伝わってきます。切石を重ね合わせた現在の大阪城の石垣とちがい、豊臣時代の石垣は自然石を積み重ねた“野面積み”でした。その野面積みをもCGで再現されているのを見て「ニヤッ」としてしまいました。

余談ですが、大河ドラマ「真田丸」のオープニングムービーで城が出てきますが、これは真田氏が本拠とした上田城ではなく、岡山県にある備中松山城です。「戦国王」では、“天空の城”として観光客に人気の竹田城をCG化していますが、備中松山城も霧に覆われることが多い城。現存する12の天守閣の中でもっとも標高の高い場所に築城された価値がある城なので、今後のシリーズ展開の中でCG化されることを期待したいところです。

大坂城のCG。断面図で内部がよくわかります

今話題の“天空の城”竹田城もCG化されています

足跡・性格・系図……様々なアプローチで戦国武将の魅力を紐解く

多くの歴史ファンが戦国時代に魅了されるのは、名将・智将・謀将・凡将・愚将など、さまざまな武将が群像劇を織りなしているから。そうした武将一人ひとりにスポットライトを当て、丁寧に解説していることも「戦国王」の特徴といえるのではないでしょうか。

たとえば“越後の龍”上杉謙信の場合、その肖像や旗印、使用した印判、本人の花押など、さまざまな側面から紹介。特に系図の存在が興味を喚起します。戦国時代が含まれる中世は、養子縁組が盛んだったほか、正室側室といった慣習などもあり、人間関係が複雑になりがち。それを系図で表現することで、人間関係をつかみやすくなっています。

肖像や系図で戦国武将を詳しく紹介

ビジュアルでわかる勇将・智将の戦略と戦術

戦国時代の醍醐味は、やはり合戦。大名同士が領地を争ったり、意地を張り合ったりした結果、ぶつかり合い勝敗が分かれ、勢力図が変化していく……このダイナミックな展開が戦国時代の魅力だと考えられます。

さて、さまざまな要因で勝敗が分かれていく合戦。関ヶ原の戦いでは小早川秀秋の裏切りが転機になりましたし、厳島の戦いでは数々の謀略がかみ合った結果、毛利元就が大勝しました。そうした戦略・戦術をビジュアルで確認できるのもポイントといえるでしょう。

たとえば織田信長による乾坤一擲の奇襲、桶狭間の戦いの解説では、どのようなルートで今川義元の本陣を突いたのか、鳥瞰イラストで表現。実際には義元の本陣がどこにあったか判明はしていませんが、それを突き止める推理も掲載されています。誌面では6箇所の“義元本陣候補地”が挙がっており、それぞれ肯定・否定の根拠が掲載されていますが、“確度60%”などとあったら、より面白かったかもしれません。

そして、またまた「真田丸」のオープニングからで恐縮ですが、もっとも最後に“赤備え”の無数の騎馬が疾走するシーンがあります。これは、大坂夏の陣で、真田信繁の軍勢が家康本陣に突撃を敢行した天王寺・岡山合戦を表現していると思われますが、この戦いこそ100年以上続いた戦国時代の終止符ともいえる激突。家康に自決を覚悟させたほどの真田勢の活躍から「真田日ノ本一の兵」と語られるほどの一戦を、ぜひ取り上げていただき詳細にそして豪華に解説していただきたいです。

奇襲ルートを示した鳥瞰図

(マイナビニュース広告企画 : 提供 株式会社ハーパーコリンズ・ジャパン)

[PR]提供: