――ちなみにこの50年間で、ささきさんにとって一番思い出深い曲はなんですか?

「それは、何と言っても『ヤマト』ですよ。歌い方についての注文が多くて、レコーディングでもすごく苦労しましたし、頑張ったわりに最初は当たらなかったし(笑)。『何でこんなに良い作品が当たらないんだ』っていう気持ちがありましたね。でも、それが2年ぐらい経って大爆発したときには、本当にやって良かったなって。苦労し甲斐もあったし、いい音楽に巡り会えたなっていう思いがありました」

――やはり『ヤマト』はささきさんの代表曲ですよね

「先日、TVのディレクターの方からメールをいただいたのですが、その中でヤマトについて、『あの歌は音楽もいいんだけど、ささきさんが作り上げた声や雰囲気、そういったものが一体になって初めて出来上がるのであって、ほかの人が歌っても全然ダメなんだっていうことがわかりました』って書かれていたんですね。僕自身も、そういうことなんだろうなって思っています」

――さて、今回ささきさんのデビュー50周年記念曲で、TVアニメ『最強武将伝・三国演義』の主題歌「風の会話」がリリースされました。まずは、この曲を歌うことが決まったときの感想をお願いします

「まず、阿久(悠)先生の詞が手元に来たのですが、最初は『これは歌になるのかな?』って思いました。僕にはメロディが全然浮かばなかったんですよ。なので、これを歌にするのは難しいだろうって思っていたんですけど、それを鈴木キサブロー先生がすごく考えて、そんなに難しくないメロディをお作りになられたので、本当にすごいなって感心しました」

7月7日に発売された「風の会話」のジャケットイメージ

――「風の会話」は、"歌詞"というよりも"詩"といった感じですからね

「そして、どちらかというと"言葉"なんですよ。ディレクターからも、『歌い上げるよりは、聞かせるように歌ってくれ』と言われましたので、レコーディングでは素直に歌おうと思いました。曲も詞も出来上がっているのだから、あまり小細工をせずに、サラっとフワっと歌えばいいんじゃないかと。ただ、スケール感だけは意識しました。これだけは『三国演義』に合わせなければならないですし、アレンジも壮大なものになっていましたからね。ただ、壮大さというのは、『ヤマト』で慣れていたので、ちょっと頑張ってみようかと(笑)」

――素直に歌うというのは、意外と難しいのではないですか?

「そうなんですよ。この歌では、吹き抜ける風の爽やかさを表現できたらと思っていたのですが、年を取ると爽やかな歌というのは歌いにくいんですよね。自分で何らかのクセをつけたくなる。でも今回はそれを一切なくしています。ほかの人が聞いたら、クセがあるって言われるかもしれませんが(笑)、僕自身の中ではすごく素直に歌っています」

――本当に風が吹き抜けるかのようなスケール感は聴きどころだと思います

「ステージで歌うときも、中国の大草原を何十万頭の馬が走り回っていて、そこを吹き抜けていく風……、そういったものを感じてもらえればいいなって思っています。今回の曲はアレンジが壮大なので、そういった風が吹き抜ける感覚については、聴いているだけで自然と感じてもらえているのではないかと思います」

(次ページへ続く)