「はったり大作戦」、やりましたねぇ。どうしても決まりたかった「消費者金融のイメージキャラクター」。オーディションには、たくさんの売れっ子モデルさんも来ているわけです。そこで私はスポンサー側とオーディションでお話するときに、「私は近い将来、歌手デビューをする予定で売れちゃうかもなので、今のうちに目をつけておいたほうがいいですよ」みたいなことを自分で言っちゃったんです(笑)。

20歳のときに消費者金融イメージキャラクターをさせていただいたときに、そのギャラで買った思い出深い時計。60年代アンティークROLEXです

確かに歌手オーディションも受け、10代からとある有名レコード会社が手を上げてくれて、レッスンなども受けさせてもらっていました。けれど、デビューする予定などまったくなし。それどころか、その有名レコード会社預かりで2年以上もレッスンを受けてもなしのつぶてで、「ほかのレコード会社や、オーディションも受けてくれ」なんて言われていました。

そんな状況の中、スポンサーさんたちに「歌手になるので」なんて決まってもいないのに言ってたなぁ、私。ところが、それまでのレコード会社の縛りがなくなった分、ほかのオーディションにも行くようになり、そのひとつが当時人気だった番組『ASAYAN』でした。

その放送第1回目の優勝者でもあったので、それを知ってか知らずか、企業のスポンサーさんたちは「この子はなんかイケるかも?」と勘違い(?)をしてくれたんでしょうか。とある消費者金融のイメージキャラクターに抜擢されました。これで、私の顔写真入りティッシュができることになったわけです(笑)。

イメージキャラクターに抜擢されて、タレントでもない私がティッシュやテレカになったり、1年間、毎日7社の新聞広告に掲載されたりして、「なんだかお仕事しているな」って感じで嬉しかった。

『ASAYAN』第1回目の放送出演も、一応、プロデューサーの前で歌うオーディションをして、合格したら番組のオーディションへ出られるってものでしたが、事務所からはいつものオーディションと同じように歌のオーディションがあるよ、ってことで受けさせていただきました。

番組では、当時お仕事をしていた『Fine』というティーンズファッション雑誌で何度か一緒にお仕事をしたことがあるHITOMIちゃんと同期ということもあり、
「なんでHITOMIちゃんがデビューできて、私がデビューできないんですか?」
と言ううたい文句で番組に出させてもらったのを今でもよく覚えています。

たった1回のお仕事として、事務所に言われるままオーディション番組のお仕事をしたのですが、その放送の評判がよかったのか(?)っていうより、なぜか優勝しちゃったので、また番組に出ることになったわけです。うちの事務所からも何人もオーディションは受けていたみたいなのですが、私のはっちゃけた感じがテレビに向いていたのかなぁ? 本人はいたって真剣でしたが(笑)。

『ASAYAN』の次のオーディションは「ダンス」でありました。私、ダンスって、すごぉ~く苦手。なんで歌うのに、ダンスを踊らなくっちゃいけないのよぉ!……そう思っていました。ちなみに、当時の小室ファミリー人気はテレビ音楽業界では頂点を極めていたので、もしかしたらうちからも小室ファミリーになるスターが生まれるかも!? と、事務所側もいい意味で期待してくださいました。けれど、そのおかげで次の収録までの1週間だったか3日だったか、スパルタダンス教育が始まってしまいました。

私のこれまでの人生で、このときの悔し涙が一番泣きやまなかった涙だったと思っています。どんなスパルタかというと、踊り慣れてる人にはただのダンスレッスンなんですが、踊れない人にとっての簡単なステップは「ミラクルステップ」に変わり、1曲歌って踊ることは「超ミラクルダンス」に変わるわけです。いや、当時は全然笑えていませんでしたよ。事務所の大人たちが真剣に応援してくれているのだから、「私もがんばろう!」。そう心では思ってもダンスはぎこちなく、ダサい。

それでもなんとかダンスを覚えなくてはと、1日中練習してから帰宅後も、その日踊ったビデオを見てまた練習。ほとんど寝る時間もない中、最後は足がつって思うように動かなくなる。そんなある日、事務所の常務が同行してくれたボーカルレッスン中に事件は起こりました。ボーカルの先生が、ダンスのビデオを練習用にと流してくれたのです。先生は、有名なアーティストのコーラスワークなどもたくさんされていて、ダンスも上手い! 私に教えてくれようと、一度見たビデオでこんな感じかな? とステップを踏んでくれました。

私といえば、何日もかけて、夜も寝ないで練習をしても簡単な振り付けさえ上手に踊れない。先生のダンスセンスのよさと、常務がわざわざ来てくれたのに、そんな簡単なこともできない私自身が恥ずかしくなってしまい、「由美もやってみたら?」という誘いにおどけてテレ笑いをしたんです。そのとき、常務の雷が落ちました!!

「お前ふざけるなぁ~、こんなチャンスのときに笑ってるとは何事だ! スターになれるかもしれないってときに。やる気がないなら、芸能界なんか辞めろ!!」
とドアを思いっきり開けて出ていってしまったのです。

そのとき一緒にいたマネージャーは私の気持ちをわかってくれるだろうと思ったら、「そうだよ、由美!」とかばうどころか同意見(え~)。その瞬間、プライドも高く、絶対弱いところなんか見せたくない私が「わーん」と泣いてしまったのです(それもわりと大声で)。毎日朝からレッスン、夜中もビデオを見ながらほとんど眠らずに練習しても簡単なこともできない。足はすでにむくんでパンパン。それでもなんとか、って思っていた矢先にその言葉。

踊れない自分と、テレ笑いをふざけてると勘違いされたことと、いろんなものが溢れ出して悔し涙。あまりにも泣くものだから、歌のレッスンにもならない(泣いてると歌えないものですね)。レッスン後も泣きやまない私を見かねたマネージャーが、一緒に帰ろうとタクシーに乗せてくれたのですが、タクシーに乗っても悔し涙は止まらない。

結局、帰宅してからもしばらくはずーっと泣いていました。よっぽど悔しかったみたいです、私。そして、そのぎこちないダンスがテレビで放送されちゃうわけですが……またこのあとも大変なことに! テレビって……。ではまたこのお話は次週に。
See you soon love xx.