19日20時からゴールデン特番『音が出たら負け』(日本テレビ)が放送された。

同番組は2019年11月23日に土曜午後の30分番組としてパイロット版を放送したあと、2020年3月11日に2時間特番としてゴールデンに進出。その後、同年8月14日、2021年2月10日にもゴールデンの2時間特番として放送されていた。

「50デシベルを超える音を出したら即アウト」というルールのゲームバラエティだが、なぜ3年半が過ぎた今夏に突然復活したのか。『逃走中』(フジテレビ)などのゲームバラエティをめぐる現状を含め、テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • 『音が出たら負け』MCのバナナマン

    『音が出たら負け』MCのバナナマン

海外の評価とオリジナリティ

基本的にバラエティはドラマのように最終回が決まっているわけではなく、一定の視聴率や配信再生数が獲れてある程度評判が良ければ、放送は続いていく。つまり3年半も放送されなかったのは、それらが十分ではなかったからだろう。だからこそ「民放の中でもコア層(主に13~49歳)の個人視聴率獲得に最もシビア」と言われる日テレがこの番組を復活させたことは驚きだった。

当然ながら、復活させるからにはいくつかの理由が推察される。

まず同番組はシンガポールで開催された見本市の賞イベント「ContentAsia Awards 2020」のテレビフォーマット(バラエティ)部門最優秀賞を受賞していた。番組を手がけた日テレ アックスオンの野中翔太が今月8日に開催されたATP(全日本テレビ番組製作社連盟)の「若手クリエイターズフォーラム」で、「狙ってないのに海外で売れた」などと語っていたことも含め、対外的な評価が復活の一因となったのは間違いないだろう。

海外タイトル『Mute it!』に対する日本の『音が出たら負け』は、オリジナルとして海外の人々に見てもらえるかもしれない。さらに「その評価がブランドとなって日本人の関心も高まる」というポジティブな流れが期待できそうだ。

また、日テレには「フジテレビにおける『逃走中』のような局を代表するゲームバラエティを確立したい」という思惑も透けて見える。日テレは長年、日曜午後の企画開発枠『サンバリュ』などでさまざまなゲームバラエティを試してきたが、これといったヒットはなかった。ならば他局のゲームバラエティにはないオリジナリティがあり、海外での評価が高い『音が出たら負け』の復活は自然な策に見える。

そもそも同番組は「ゲーム中はほとんどしゃべらないため、飛沫の不安がない」というコロナ禍に対応した企画だった。それをコロナ禍が落ち着いた今、復活させたのは、やはり「これだけ無音の状態が続く番組はない」というオリジナリティが大きかったのではないか。