「夢をあきらめるな!」というオーディション名の通り、12人は“ほぼ30代”で、これまでさまざまな道を歩んできた経歴がある。実際にSHOW-WAの井筒雄太はカメラアシスタントや音声、塩田将己は営業マン、MATSURIの鈴木渉は看護師、橋爪健二は清掃作業員だっただけに、最後のチャンスとして懸命に挑む姿が「応援したい」という空気を生んできた。
その「応援したい」という空気を決定づけたのは、生放送ならではの臨場感。『ぽかぽか』での生歌唱はオーディション番組にはない臨場感たっぷりのドキュメントとして視聴者に訴求してきた。歌と踊りの未経験者が多い彼らがなりふり構わずに頑張る姿、講師に叱られながらも不器用に一歩ずつ成長していく姿、ガチンコの勝負に勝って泣き負けて泣く姿などが彼らを応援せざるを得ないムードにつながっている。
かつてこれほど生放送バラエティに短期集中出演した新人グループは記憶になく、しかも未経験者にとっては「未熟さがモロに出てしまう」というリスクがあった。オーディション番組の多くは制作サイドによる編集でのフォローや配慮が当然のように行われているが、生放送ではそれが不可能。事実、SHOW-WAのメンバーが講師に叱りつけられて打ちひしがれる姿やMATSURIが投票対決で敗れて大粒の涙を流す姿……そんな残酷とも言える姿を生放送で目の当たりにして、彼らを応援する人々が日に日に増えていった。
しかし、SHOW-WAもMATSURIもただ『ぽかぽか』に頼っていたわけではない。全国のイオンモールを筆頭にさまざまな場所で地道なライブ活動を重ね、各地の人々にパフォーマンスを見てもらい、握手やハイタッチを行ってきた。もちろん恵まれている部分もあるが、この半年あまりSHOW-WAとMATSURIほど全国をかけめぐって無料イベントで歌を披露し、ファンとふれ合ってきたアイドルはいないのではないか。
『ぽかぽか』での臨場感あふれるドキュメントと、その裏で行われていた地道な営業活動の両立。これこそがわずか半年間での爆発的な人気上昇の理由といっていいだろう。
リアルなものを見たい視聴者ニーズ
さらに細部を挙げると、彼らの人生経験から来る人柄の良さが生放送で親しみとして伝わっていること、平日昼の『ぽかぽか』を視聴できる層とSHOW-WAとMATSURIの「昭和歌謡・昭和ポップスを現代に」というコンセプトの相性が良かったことなども、ポジティブな要素として受け入れられている。
今月4日に東京ソラマチで行われたSHOW-WAとMATSURIのステージを間近で見たが、真夏の屋外イベントながら、整理番号のカウントや2階・3階からの見物客を踏まえると1,000人近い観客が集まったのではないか。いずれにしてもファンが右肩上がりで増えているのは間違いない。
前述したように、23日に12人で歌う曲が披露されることが意味するのは、「SHOW-WAかMATSURIのどちらかが成功できればいい」ではなく、「SHOW-WAもMATSURIも両方成功させる」という意思の表れだろう。
『ぽかぽか』の企画は「どちらかのグループが『NHK紅白歌合戦』出場し、それにMCの神田愛花が便乗したい」という趣旨だが、12人での楽曲によって両グループでの出場も狙っていける。12人の友情は厚く、「両グループとも推している」というファンも多いだけに、それが最も幸せな展開なのかもしれない。
最後に話を『ぽかぽか』と両グループとの関係性に戻すと、良く言えば「自由かつ斬新」、悪く言えば「無計画かつ無責任」という感があった。やっていることは新しく目を引くが、「世間の反応に合わせて次の手を考えていく」という民放にありがちな節操のなさを感じさせられる。
それでもSHOW-WAやMATSURIのような無名グループにとってテレビ、しかも帯番組への出演は大きなチャンスだけに『ぽかぽか』への恩義は感じているだろう。一方の『ぽかぽか』にとっては先行投資した形のSHOW-WAとMATSURIが思った以上の成功を収めつつあり、ここからはベットする量をさらに増やしていくのではないか。
『ぽかぽか』と両グループのケースは他局がマネをしようとしても難しそうだが、“生放送番組と新人グループの育成・プロモーション”という点では参考になるのかもしれない。その意味で両グループの躍進は、「作為的に編集されたものではなくリアルなものが見たい」という視聴者の意思表示にも見える。