先日発表された「2024年上半期・急上昇TV番組出演ランキング」(エム・データ)の男性部門の顔ぶれを見て驚かされた。1位の山下智久(141回)に続く2位~7位を新人グループ・SHOW-WAのメンバーが独占。2位・山下佳志(122回)、3位・青山隼と井筒雄太(121回)、5位・向山毅と塩田将己(120回)、7位・寺田真二郎(117回)の順でランクインした。

これは昨年下半期から今年上半期にかけて「急激に売れたタレント」の指標だが、SHOW-WAの出演番組は、ほぼ昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ)が占めている。

彼らはこの半年間、ほぼ毎日エンディング曲のように生歌唱を続けたことでランクインしたのだが、ここに来てその活動内容が急加速。『2024 FNS歌謡祭 夏』(フジ)や『TOKYO IDOL FESTIVAL 2024』などの出演に加えて、兄弟グループのMATSURIも合わせた12人でのプロジェクトもスタートするなど、明らかにムードが変わっている。

夏に入ってから急展開を見せる背景には何があるのか。コロナ禍にNiziUやBE:FIRSTなどを生んだオーディション番組が一時の勢いを失う中、『ぽかぽか』と新人アイドルの新たな育成・プロモーション戦略を、テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

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ここに来てMATSURIの出演が急増

『ぽかぽか』におけるSHOW-WAの生歌唱企画は、不安だらけのスタートだった。SHOW-WAとMATSURIは昨年開催された「夢をあきらめるな! オーディション」を勝ち抜いた12人で結成されたグループで、まだ無名の存在。一方の『ぽかぽか』も何度となく打ち切り説が流れるなど視聴率低迷に悩まされていた。

そんな両者がタッグを組む形で今年1月8日からSHOW-WAの生歌唱がスタートしたのだが、毎日生放送でパフォーマンスを見せながらジワジワとファンを増やし、3月30日のイベントではノルマの1,000人をはるかに超える2,156人を集客。さらに『ぽかぽか』は、6月にメジャーデビューを懸けたMATSURIとの投票対決を仕掛け、連日10万票近くが投じられたほか、同15日のリアルイベントでもラゾーナ川崎に4,300人超を集客した。

投票対決に勝ったSHOW-WAのメジャーデビューが9月4日に決定し、現在プロモーションに励んでいるのだが、ここに来て『ぽかぽか』でMATSURIをフィーチャーする機会が急増している。表向きの理由は『ぽかぽか』に連日出演して人気を得ていたSHOW-WAの当て馬にされるような形で投票対決に担ぎ出され、案の定敗れた“MATSURIへの救済”だが、もはやそれだけではないだろう。

投票対決で敗れて涙を流したMATSURIに対するファンの応援は熱を帯び、ほぼ毎週行われている新宿・東急歌舞伎町タワーでのライブの熱気は今やすさまじいものがある。番組としては「SHOW-WAとMATSURIの影響力をこのまま生かさないのはありえない」「彼ら目当ての視聴者を逃さないように出演企画を続けたほうがいい」というレベルに到達しているのではないか。

『ぽかぽか』は現在、MATSURIに「約2か月間で2万218人の署名を集める」というメジャーデビューに向けたミッションを課して毎週木曜の放送で経過を追っているほか、エンディングでの生歌唱もSHOW-WAとMATSURIが分け合う形に変更されている。

この半年間を振り返ると、『ぽかぽか』は彼らを応援しているムードがある反面、どこか無責任さを感じさせるところもあった。集客がわずか17人に終わる日もあった「SHOW-WAがこれほどの人気グループになるかは半信半疑だった」という感がある。

「不公平な投票対決」からの修正

SHOW-WAへの「3月イベントでの1000人集客」に続くミッションは「6月某日までに観客動員数累計5万人」だった。しかし、それが困難になると「夜に行うライブ配信再生数も加える」というグダグダなルール変更で達成。さらに「兄弟グループのMATSURIを突然“ライバル”として登場させ、しかしエンディング歌唱はほぼSHOW-WAのみ」という不公平感のある状態で投票対決を行った。

そもそもSHOW-WAとMATSURIの12人は同じオーディションで選ばれた同世代である上に、全国のイオンモールなどを共にめぐるなど、仲のいい同志のような存在。メジャーデビューをめぐる競争はエンタメとしてアリだとしても、古坂大魔王が「負け戦」と評した不公平感のあるバトルを行ったことで、「勝ったSHOW-WAが喜べない」という微妙な空気が生まれていた。

しかし、ここに来て『ぽかぽか』がその不公平感をフォローするようにMATSURIをフィーチャーし始めたことで空気が一変。SHOW-WAと同等以上の出演機会が与えられているほか、開催中のイベント『お台場冒険王』の平日最終日23日には、両グループによるファイナルライブが行われるという。

しかもこの日、「秋元康プロデューサーが書き下ろした12人合同で歌う新曲を初披露する」という。その様子は『ぽかぽか』でも生放送されるのだが、両グループの運営サイドも含め「12人で」というプロデュース方針にSHOW-WAとMATSURIの人気急上昇という背景がうかがえる。

2010年代中盤あたりから現在まで、嵐や乃木坂46を筆頭に男女を問わずグループアイドルは「バチバチのライバル関係よりも仲の良さが支持を集める」という傾向が続いていた。それだけに『ぽかぽか』の企画・演出は時代に逆行した「すぐにバトルをあおるテレビマンの悪いクセ」という感もあったが、このところ両グループが支え合うようなシーンを放送するなど、ようやく人々が好む形に正常化されたように見える。

では、なぜわずか半年間でこれほど両グループの人気が急上昇したのか。