元櫻坂46メンバーで今春フジテレビに入社した原田葵アナウンサーが、同局の公式ホームページ、インスタグラム、YouTubeに登場し、ネットメディアが記事化するなど、さっそく話題を集めている。

研修中の身であるにもかかわらず、4月28日の定例会見で港浩一社長が「とても声が通って、大変期待している」などと名指しで言及。今年の同局女性アナウンサー唯一の採用であることも含め、期待の大きさがうかがえる。

坂道グループとしては、元乃木坂46の日本テレビ・市來玲奈アナ、テレビ朝日・斎藤ちはるアナに次ぐ3人目の在京キー局アナウンサー。市來アナは2018年入社の27歳、斎藤アナは2019年入社の26歳であり、ここ数年で超難関のキー局アナウンサーに、いかに坂道グループのアイドルが選ばれているかが分かるだろう。

なぜ坂道グループのメンバーは、他の女性アイドルやタレントを差し置いて選ばれているのか。さまざまな現場で見聞きしてきたことをベースに、テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • 左から フジテレビ原田葵アナ(※欅坂46時代)、日本テレビ市來玲奈アナ、テレビ朝日斎藤ちはるアナ

    左から フジテレビ原田葵アナ(※欅坂46時代)、日本テレビ市來玲奈アナ、テレビ朝日斎藤ちはるアナ

■個人が消費されない活動と運営

まず、坂道グループのアイドルを採用することのメリットをあげていこう。

研修に入ったばかりの段階からこれだけ報じられているように、やはり注目度は抜群。各局で制作費削減される中、出演料を抑えられるアナウンサーの存在価値は高まっている。つまり、タレントの知名度を持つ人を自局アナウンサーとして起用できればそれだけ制作費を抑えられることになり、アイドルシーンのトップを走る坂道グループの起用メリットは大きい。

さらに、坂道グループならではのメリットは、パブリックイメージの良さ。彼女たちのアイドルらしい明るさや愛きょうはアナウンサーに欠かせないものだが、それは他のアイドルグループにもあり、さほどアドバンテージにはならない。

しかし、仲が良くチームワークを大切にする姿や、「全員センター」「お笑い担当を作らない」などの個人を尊重した活動スタンスの好イメージはズバ抜けている。AKB48グループのような「選抜選挙=競争」のイメージとは真逆であり、日頃の活動で“個人が消費されていないこと”は、民放のアナウンサーになる上で武器と言っていいだろう。

また、それが東日本大震災以降の国民感情にフィットしたこと。「単推しより箱推し」のファンが多く、実際にグループ写真集がヒットしたことなども含め、アイドルのアナウンサー起用によるアレルギー反応がこれだけ少ないのは、坂道グループだけではないか。

これらのメリットは、まだ一般的な知名度が高いとは言えない乃木坂46の一ノ瀬美空、日向坂46の松田好花、櫻坂46の松田里奈が、朝の情報番組『THE TIME,』(TBS系)の曜日レギュラーを務めていることなど、事実が証明している。

■「カメラテスト」の評判がいい

次にスキルという点で、AKB48グループのように専用劇場を持たない坂道グループは、「冠番組を中心にした活動で“カメラに映ること”や“カメラの前でしゃべること”が磨かれていく」という成長の過程が以前から評価されていた。

単にバラエティの対応力なら他の女性タレントもいるが、坂道グループのメンバーは「グループとしての好イメージを守ったまま、タイミングを見計らって自分の個性を出す」ことに慣れている。その出演スタンスは「局のイメージを下げないように振る舞いつつ、タイミングを見計らって自分の個性を出す」ことを求められる女性アナウンサーと似ているのだ。

そしてもう1つ、業界でウワサされているのが、「カメラテストの評判がいい」こと。カメラテストでは、初見の原稿を読む、食リポをする、絵解き(映像に即興で実況)などが求められるが、話し方、表情、内容のセンスなどに坂道グループの活動での経験が生きるのかもしれない。

また、報道で求められる“真顔”の美しさと品の良さも彼女たちの強みだろう。ファッション誌で専属モデルを務めるメンバーも多い彼女たちは、業界の人々に「他のグループと比べて美への意識が高い」と見られている。さらに、「品の悪いコメントは言わないだろう」という信頼感のようなものもあるようだ。

かつては日本テレビの岩本乃蒼や元フジテレビの久慈暁子など、モデル出身の女性アナウンサーが目立つ時期もあった。坂道グループのメンバーは、彼女たちに負けないカメラ映りの良さがあり、加えて映像コンテンツの対応力があるという評価なのだろう。