TwitterやInstagramが普及した2010年代に人々の意識は大きく変わった。「私は○○した」などと自らが主語となって発信する機会が増え、グルメ、音楽、スポーツ、カルチャーなど、さまざまなジャンルの参加・体感型イベントが人気を集めている。
特に学生、社会人ともに長期休みのある夏は、その参加・体感の意識が高まる季節であり、コロナ禍の深刻な時期を越えた今年はなおのこと。花火大会などの夏イベントにコロナ禍以前より多くの人々が集まり始めている。そんな人々の行動傾向を見る限り、「今夏にテレビ局が大規模イベントを開催することは世間のニーズに寄り添っている」と言っていいのではないか。
さらに、日本全国に番組を放送するテレビ局のイベントだからこそ、「会場に来ない。来られない」という人々への対策も忘れない。『お台場冒険王』はメタバースで『バーチャル冒険王2023』を同時開催し、1,000人参加可能な鬼ごっこや音楽ライブのバーチャル配信などを行っている。
『サマステ』も『光と星のメタバース六本木』を開催し、音楽ライブなども配信。インドア派や地方の人々も切り捨てず、あらゆる人々をビジネスチャンスにつなげていこうというスタンスはテレビ局らしいものに見える。
リアルの体験型アトラクション、音楽ライブ、オリジナルメニューなどからバーチャルまで、若年層やファミリー層を中心にさまざまな角度から集客が行われていることが分かるのではないか。どちらも入場料金は、一般2,800円・子ども1,800円(別途、入場料金が必要な箇所あり)だが、過去の実績を見ても「財布のヒモが緩みやすい」と言われる夏イベントならではの収益が期待できる。
また、スポンサー企業との関係性強化という意味でも、夏のイベントは重要性が高い。それぞれ特別協賛に『お台場冒険王』は、コカ・コーラ、セブンイレブン、日清オイリオ、味の素、ロッテなど。『サマステ』は、アサヒ飲料、UNDER ARMOUR、いなば、KIRIN、SUNTORY、PIZZA-LAなど多くの企業が名を連ねている。
飲食系企業はコラボメニューが開発されるほか、その他でもタイアップやパブリシティなどが行われ、互いの業績アップやファン獲得はもちろん、関係性の強化が期待できるのだろう。
■局内の一体感と家族らへのサービス
もう1つ、リアルイベントを開催する意義として忘れてはいけないのが、局内での連携や一体感のアップ。
どちらも大規模であるほか、8月27日までの37日間にわたる長期イベントだけに、局内のさまざまな人々が関わり、得意分野で力を発揮できるとともに、部署間の交流は活発になる。日ごろの放送とは異なる年に一度のお祭り感もあってシンパシーを感じ、一体感が生まれやすく、局内外の交流やノウハウの継承・共有などが進むのだろう。
さらに、細部の効果としては、局員たちが仕事への理解や協力が得られやすくなること。以前から「局員の中には夏イベントに家族や友人を招く人が多い」と言われている。「家族サービスや友人のもてなしをする」という点でも、夏の大型イベントは局員にとって大切なものなのかもしれない。
最後に挙げておきたいのは、22日・23日に放送された『FNS27時間テレビ』の好影響。放送前は「何で今さら」「時代錯誤」などの否定的な声が多かったが、始まってみたらライブ感あふれるコンテンツを連ねて、視聴率・評判ともに上々の結果を残して、同日スタートした『お台場冒険王』の追い風となった感がある。
猛暑という懸念点こそあるものの、順調に結果を残したら、今夏は大型イベントを開催しなかった日本テレビとTBSも来年は考えを改めるのではないか。