そのアップデートされたポイントは前述したミステリーであり、「ドッキリミステリーという新しいジャンルを確立した」と言っていいのかもしれない。視聴者は津田の人間くさい姿を見て笑うだけでなく、愛すべき素人探偵と一緒に推理を楽しめることも魅力の1つだ。
津田はまるで『金田一少年の事件簿』を彷彿させる連続殺人事件の解決に挑むのだが、回を追うごとに事件の展開、トリック、伏線などが作り込まれたものへ進化。津田が子どもじみた推理で失笑を誘う一方、「視聴者はネット上で考察合戦をして楽しむ」という参加型のコンテンツはいかにも令和の人気企画らしい。
第3話では家族旅行として現場に来ていた、みなみかわを助手として加えたことで、笑いの密度がさらにアップ。津田がメロメロになるヒロイン・森山未唯のほか、津田の母親も登場するなど、キャスティングの仕掛けも幅が広がっている。第4話では放送前からこれらの人物を待つような書き込みも多く、このように主役以外のキャラクターが愛されはじめた企画はロングヒットが期待できるだろう。
そしてもう1つ「名探偵津田」の強みをあげる上で忘れてはいけないのが『水ダウ』そのものへの厚い信頼。「名探偵津田」は『水ダウ』が週替わりの企画で視聴者を楽しませてきた中で生まれたものであり、必然にも突然変異にも見える。
いずれにしても、批判とギリギリのラインを攻め続けてきた制作サイドにとってはボーナス的なコンテンツであり、視聴者との信頼関係をもとに自信を持って仕掛けていけるのではないか。
事実、第4話の発表は「人気企画『電気イスゲーム』を振りにして、それ以上の人気企画の『名探偵津田』をかぶせる」というエンタメファーストのサプライズを仕掛けた。さらに「12月の放送を『名探偵津田』で固める」という姿勢も視聴者の期待に堂々と応えるものであり、ますます『水ダウ』への支持が高まっていくムードが漂っている。
『笑ってはいけない』なき大みそかで高まる待望論
そんな「名探偵津田」に今後期待されるのは、国民的なコンテンツにするべく共有しやすいものにしていくこと。飽きさせずにエピソードを重ねていくことはもちろんだが、視聴者が「多少クオリティの上下があっても楽しめる」ような風物詩にしていくことが求められている。
昨年・今年の12月放送で「師走の風物詩」「年に一度の大型企画」というイメージが浸透しつつあるが、すでに多くの待望論があがっているのは、もう一歩先に進んだ大みそか夜の放送。平日の水曜夜に2週連続で放送するのもいいのだが、より多くの人々が休みの大みそか夜に「みんなで『名探偵津田』を見て笑いながら年越ししたい」と考えるのは当然かもしれない。実現したらリアルタイムでの考察合戦が空前の盛り上がりを見せるのではないか。
大みそかの夜から『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の「笑ってはいけないシリーズ」(日本テレビ系)が消えて今年で5年になるが、その間「民放の大みそかがつまらなくなった」という声が上がり続けていた。06年から20年まで15年連続で大みそか夜に放送された定番だけに今なお待望論は多いが、松本人志の現状を含め再開のハードルは高い。だからこそ放送局こそ異なるものの、同じダウンタウンの冠番組から生まれた企画に期待したくなるのだろう。
現実的に見ると、今年の第4話は前・後編で計180分(3時間)の長尺コンテンツであり、「前年の未公開SP」60分も合わせれば計240分(4時間)にすることも可能。藤井健太郎率いる『水ダウ』のスタッフならさらなる拡張も期待できるなど、大みそか夜にふさわしい長時間特番にできるはずだ。
また、今年の「12月の放送を網羅」「2週連続90分SP」「クリスマスイブ放送」というステップアップによって「大みそか夜への機が熟した」と言っていいのではないか。昨年と同等レベルの視聴率、配信再生数、反響さえあれば、TBSとしては「期待に応えないわけにはいかない」という経営判断も考えられる。
少し気は早いが、もし来年TBSと藤井健太郎が大みそか夜の放送に踏み切れば、毎年12月30日に放送されている『クイズ☆正解は一年後』(TBS系)も合わせて、「一年の締めくくりは2夜連続で藤井健太郎」というお笑い好きにとってたまらない年越しになりそうだ。