2021年が早くも終わろうとしている。今年の世界情勢を振り返れば、バイデン政権が1月に発足し、これまでの米中対立は英国やオーストラリアなど他の欧米諸国を巻き込む形で拡大し、欧米と中国との対立に変貌した。

また、新型コロナウイルスの感染は各国で依然として拡大し、昨今のオミクロン株のように来年も世界情勢を大きく左右する事象になるだろう。

そのようななか、今年の世界情勢は企業の経済活動に具体的にどんな影響を与えたのか。今年最後の論考はこの点に絞ってみていきたい。

  • 2022年も中国が国際情勢の焦点に?

バイデン政権と中国の人権問題

まず、バイデン政権の発足により、米国は人権問題で中国に強く迫るようになった。

これはトランプ前政権から大きく違うところで、それにより、欧米企業を中心に、企業が取引先での強制労働や社内の人種、性別における差別など人権状況の改善に努めるとする「人権デューデリジェンス」の意識が強まった。

人権デューデリジェンスの高まりにより、世界では中国・新疆ウイグル自治区で続けられる強制労働によって栽培、製造された品々を使用しないとする動きが加速化し、日本企業の中にも新疆ウイグル産の綿花やトマトを使用停止、調達先の変更などを余儀なくされる企業も相次いだ。

例えば、カゴメはトマトの使用停止を、ミズノやワールドは綿花の使用停止を発表した。一方、ウイグル産綿花を使用するユニクロを展開するファーストリテイリングは、Tシャツの米国への輸入が差し止められ、フランスでは人道に対する罪の隠匿の疑いで現地人権NGOから刑事告発された。

ミャンマーのクーデターと東南アジアのコロナ禍問題

また、ミャンマークーデターと東南アジアでの新型コロナ猛威は、現地に駐在する日本人の安全・保護という視点から大きな問題となった。

近年、ミャンマーは経済フロンティアとして外国企業の注目を集め、ミャンマーへ進出する日本企業も増加の一途を辿っていた。日本とミャンマーを結び直行便も運航が開始。

しかし、今年2月に突然国軍によるクーデターが発生し、国軍が権力を握る中で市民との衝突が各地で相次ぎ、多くの犠牲者が出るだけでなく、インフラの麻痺や物価高騰なども生じ、現地から多くの日本人が退避した。

しかし、短期間のうちに社会が混乱したことで、退避が遅れた、退避できない状態に追いやられた日本人も多くみられ、現地に進出する日本企業の間では緊張が走る事態が続いた。

一方、東南アジアでは夏に新型コロナウイルスが猛威を振るい、インドネシアやタイ、ベトナムなどに駐在する日本人の間でも感染者が増加した。

そして、感染が猛威を振るうことで外出規制などロックダウンが厳重に敷かれ、日本へ退避することが事実上不可能となり、その長期化で犠牲となる日本人が相次いだ。

特に、インドネシアでは感染した日本人21人※1が、タイでは6人※2の死亡したことが確認された。

※1 2021年8月4日『時事ドットコムニュース』参照
※2 2021年7月18日『読売新聞オンライン』参照

2022年も中国が焦点

以上は一部のことであり、欧米におけるアジア系へのヘイトクライムなどを合わせると、企業や駐在員への影響はもっと多いことだろう。

人権デューデリジェンスやクーデター、新型コロナウイルスの他にも、今日であれば台湾有事や日中貿易摩擦など企業を取り巻く海外リスクは多様化している。来年は2月に北京五輪が開催されるが、米国など欧米諸国は人権問題を理由に外交的ボイコットを行う姿勢を示している。

要は、来年、中国を取り巻く世界情勢はいっそう厳しくなる見込みが既に濃厚であり、海外に進出する日本企業はよりいっそうその影響を受ける可能性があることを熟知するべきだろう。