「テレワークうつ」という言葉をご存じでしょうか。

コロナ禍で新しい働き方が定着してきましたが、テレワークは万全ではなく、仕事とプライベートの時間をバランスよく取らないとメンタルの不調を起こすことがあります。

今回は、「テレワークうつ」よりも自分や周囲が気付きにくい「サイレントうつ」について、原因と予防策についてお伝えします。また、大手日系企業で産業医を経験後、嘱託産業医として中小企業を数10社以上担当してきた鈴木医師のアドバイスも含めて紹介いたします。

孤独感や長時間労働が生み出す「サイレントうつ」という病気

アイ・タップによる「2020年4月開催 FB&zoomライブ配信イベント」のアンケートでは、「リモートワーク前と後での健康面の変化はありましたか」という質問に対し、52.17%の方が「悪い」と回答しています。

  • リモートワーク前と後での健康面の変化はありましたか 提供:アイ・タップ

その中でも皆さんに知っておいていただきたいワードは「サイレントうつ」です。これはオフィスとは異なり、自宅という周囲に人が少ない状態で行うテレワークで起こる、周囲の人も自分自身も気付きにくい病気です。

私の周りでも、「在宅で仕事をすることで、長時間勤務になった」「誰ともコミュニケーションをとらず、孤独を感じている」「仕事による極度のストレスが掛かっている人」「新型コロナウィルスを過敏に意識することによるストレス」「突然のニューノーマルへの移行によって心がついてこない」などの心理・環境のストレスの相談が来ており、結果として、「サイレントうつ」を引き起こしてしまう例も見られます。

企業ができる「サイレントうつ」への対策

そうした時、企業としてできる2つのポイント・施策をお伝えします。どの施策にも共通することは「孤独を感じさせない組織づくり」「さまざまな施策の中で、社員が自分に合った方法で、心理的な安全性を確保する」ということです。

当社で行っている3つの例を紹介します。まずは「オンラインコミュニティを創ること」です。

私たちは、業務に関するもの、業務外に関するもの(趣味、雑談など)の28個のコミュニティが存在します。自分の好きなコミュニティで業務以外の人間関係を構築することで、「誰かとコミュニティで会話できるのは楽しい」「趣味の話は息抜きになって良い」などの声を参加している社員から聞いています。

2つ目は「オンラインイベントの定期的な開催」です。当社は世界中に社員がいて、過去に入社式、お花見、忘年会、バーチャル世界一周旅行などをオンラインで行ってきました。社員同士がコミュニケーションを取ることを重視し、イベントを企画しているのです。

最後は定期的な社員の健康状態のチェック。社員のメンタルについてアンケートを行ったり、必要に応じて産業医に相談できたりする環境を整えるなど、「サイレントうつ」に社員が陥ってしまった場合の環境整備も重要です。

  • オンライン花見の様子

自分でできる「サイレントうつ」の予防策

多くの企業で産業医としてのご経験もあられる鈴木健太医師も「会社の施策に頼るだけでなく、自分自身で予防をすることが大切だ」とおっしゃっています。自分でできる「サイレントうつ」の予防策を鈴木医師のアドバイスも踏まえて紹介します。

テレワークでは、相手のスケジュールに合わせると結果的に長時間労働になりかねません。

まずは、仕事とプライベートをきっちりと分けましょう。休憩時間を定期的に取り、終業時間外はパソコンを開かないなど、メリハリをつけた生活にすることで、長時間労働を防ぎます。

また、自分の仕事を可視化し、やることリストをメンバーに公開しておくことも大切です。仕事のキャパシティやスケジュールをメンバーに共有することで、自分だけでなくチーム全体が業務量を把握することができます。

そして、日々の仕事では、休む時間や休日をカレンダー機能に入れておくことで、自分なりの休むペースを作りましょう。

仕事に真摯に取り組むのも大切ですが、「一生懸命、休む」ことも大切です。まずは、心身ともに健康であること、つまり身体が資本です。そのうえで、仕事のやりがいを追求したり、余暇や学習を楽しんでいけたら良いなと考えています。

読んでいただき、ありがとうございました!

記事協力:鈴木健太
大手日系企業で産業医を経験後、嘱託産業医として中小企業を数10社以上を担当。